薬制薬事の雑記(8) 原薬の譲渡提供はSDS提供義務を免れるのか?

原薬SDS提供義務の用途除外について確認していきたいと思います。

原薬とは、
医薬品の生産に使用することを目的とする物質又は物質の混合物で、医薬品の製造に使用されたときに医薬品の有効成分となるもの
令和5年3月9日付け事務連絡「医薬品等輸入手続質疑応答集(Q&A)について」Q69より

SDS制度も非常に分かりづらいです。そもそも3つの法令に分かれていることからして分かりづらく、当然のようにこれらの法律は調和していません。

表にまとめてみますが、化管法における細かい根拠が経産省HP以外に見つからないので、不十分な点があるかもしれません。

SDSの提供義務はこの3つのいずれか1つにでも該当すれば適用されることになります。

Table. SDS提供義務に関する整理

表示出来ないかもしれないので、ファイルも貼ります。

今回注目したいのは、「医薬品の適用除外について」です。

まず、毒劇法はそもそも医薬品と医薬部外品を毒物劇物から除外していますので、毒劇法の規定するSDS提供義務の対象にはなりません

続いて、化管法は医薬品等を適用除外として例示していません。「一般消費者用の製品」というのがどの範囲に当てはまるのかが不明瞭ですが、OTC医薬品などは該当すると考えても良いかもしれません。

余談ですが、体外診断用医薬品にはアジ化ナトリウムを1%以上含有するものがあり、後述する安衛法は用途除外に該当するのですが、化管法の適用は免れないということで、SDSが発行されているケースが見受けられます。

最後に安衛法です。安衛法は医薬品を適用除外に例示しており、原薬は薬機法の定義する医薬品に含まれることから除外されるとしか読めません。

となると、例えば2024年4月1日から通知対象物に追加されることが決定されているイブプロフェンのような医薬品の原薬については、SDS提供義務は課されないのでしょうか。
例に挙げたイブプロフェンは、SDS三法の中で該当するのは安衛法のみです。

医薬品等というのはそもそも何の例示かというと、安衛法の条文中にある「主として一般生活者の生活の用に供される製品」について、通知において具体例を挙げたものです。

原薬は医薬品の生産に用いるもので、一般消費者の手に渡ることはありません

そう考えると、SDS提供は行う必要があると考えるべきなのでしょうね。

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