薬制薬事の雑記(18) 医薬品製造販売業者/製造業者/卸売販売業者それぞれの販売先の考え方とは?

定期的にアウトプットしたいのですが、バタバタすると書けなくなってしまいますね。

さて、医薬品製造業者が医薬品を製造し、製造販売業者が上市/出荷をし、卸売販売業を経由して、薬局や医療機関が購入し、患者に処方・調剤される、というのが一般的な医薬品の流通として認識されているものと思います。

原則あるところに例外あり。これ以外の流通経路として、どういったものが可能なのでしょうか?

薬機法における業態許可制等を利用した流通規制では、買う側が規制されているのではなく、売る側が規制されています。

すなわち、先程の問いは「どの業態が、誰に売ることが出来るのか?」と言い換えられます。

1)医薬品製造販売業の場合

2002年改正(旧)薬事法において「製造販売」という概念が導入されました。

「製造販売」とは、2002年改正(旧)薬事法以前の「製造行為(=自ら保有する製造所において製造するとともに卸売販売業者等に販売する行為)」から、後半の「製品を出荷・上市する行為=卸売販売業等に販売する行為」を分離して当てはめたものです。

この「製造と製造販売の分離」によって、製造業は単に「製造所で製造をする業態」になりました。

薬機法に置かれている定義は何のことを言っているのか、よく分からないものになっています。

その製造(他に委託して製造をする場合を含み、他から委託を受けて製造をする場合を除く。以下「製造等」という。)をし、又は輸入をした医薬品(原薬たる医薬品を除く。)、医薬部外品、化粧品、医療機器若しくは再生医療等製品を、それぞれ販売し、貸与し、若しくは授与し、又は医療機器プログラム(医療機器のうちプログラムであるものをいう。以下同じ。)を電気通信回線を通じて提供すること。

薬機法2条13項より

英語で製造販売にあたるものは "Marketing Authorization" です。こちらの方が分かりやすいですね。

「製造と製造販売の分離」により、2002年改正(旧)薬事法以前の「製造承認」は「製造販売承認」になり、「製造販売」を行う業態として許可制の「製造販売業」が新設されました。

この改正は国際的な規制に調和させるためのものでしたが、「製造販売業」という業態は国際的に一般的なものではありません。

「製造販売業」の役割ですが、「製造販売業」に商流が経由しないと、販売業のような最終消費者に売ることのできる業態に製品を流すことができません。

この製造販売業が行う販売行為については、薬機法24条1項但書きに具体的に根拠があります。

ただし、医薬品の製造販売業者がその製造等をし、又は輸入した医薬品を薬局開設者又は医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者に、(中略)販売し、授与し、又はその販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列するときは、この限りでない。

薬機法24条1項但書きより

また、施行時の通知にはこのようにあります。

https://www.pmda.go.jp/files/000158111.pdf

製造販売業者が製造に係る出荷判定を完了し、かつ製造販売前の製品を卸売一般販売業者等に販売するために、製造販売業の許可を得た事務所の所在地において自ら保管することについては、製造業又は販売業の許可は要しない

薬食発第0709004号「薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律等の施行について」平成16年7月9日より

以上より、製造販売業者は、限定された品目(自らが製造販売した医薬品)につき、薬局開設者/製造販売業者/製造業者/販売業者に販売することができるということが分かります。

2)製造業者の場合

製造業者の行うことができる販売行為についても、薬機法24条1項但書きと前述の通知に記載されています。

ただし、(中略)医薬品の製造業者がその製造した医薬品を医薬品の製造販売業者又は製造業者に、それぞれ販売し、授与し、又はその販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列するときは、この限りでない。

薬機法24条1項但書きより

さらに、原薬については政令に例外の経過措置がおかれています。

原薬たる医薬品の製造業者に対する薬事法の一部を改正する法律(平成十八年法律第六十九号)第一条の規定による改正後の薬事法第二十四条第一項の規定の適用については、当分の間、同項ただし書中「医薬品の製造業者がその製造した医薬品を医薬品の製造販売業者又は製造業者」とあるのは、「医薬品の製造業者がその製造した原薬たる医薬品を医薬品の製造販売業者、製造業者又は販売業者(第三十四条第三項に規定する卸売販売業者であつて、原薬たる医薬品については、専ら医薬品の製造販売業者若しくは製造業者又は試験研究機関その他の厚生労働省令で定める者に対してのみ、業として、販売し、又は授与するものに限る。)」とする。

薬機法施行令附則(平成15年12月19日政令第535号)7条より

整備政令附則第七条の厚生労働省令で定める者は、次のとおりとする。
一 薬事法の一部を改正する法律(平成十八年法律第六十九号)第一条の規定による改正後の薬事法(以下「新々薬事法」という。)第二十五条第三号に規定する厚生労働省令で定める者
二 新々薬事法第三十四条第三項に規定する卸売販売業者であって、原薬たる医薬品については、専ら医薬品の製造販売業者若しくは製造業者又は前号に規定する者に対してのみ、業として、販売し、又は授与するもの

薬機法施行規則附則(平成16年7月9日省令第112号)4条より

卸売販売業の許可 医薬品を、薬局開設者、医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者その他厚生労働省令で定める者(第三十四条第五項において「薬局開設者等」という。)に対し、販売し、又は授与する業務

薬機法25条1項3号より

法第二十五条第三号の厚生労働省令で定める者は、次に掲げるものとする。
 国、都道府県知事又は市町村長(特別区の区長を含む。)
 助産所(医療法第二条第一項に規定する助産所をいう。)の開設者であつて助産所で滅菌消毒用医薬品その他の医薬品を使用するもの
 救急用自動車等(救急救命士法(平成三年法律第三十六号)第四十四条第二項に規定する救急用自動車等をいう。以下同じ。)により業務を行う事業者であつて救急用自動車等に医薬品を備え付けるもの
 臓器の移植に関する法律(平成九年法律第百四号)第十二条第一項の許可を受けた者であつて同項に規定する業として行う臓器のあつせんに使用する滅菌消毒用医薬品その他の医薬品を使用するもの
 施術所(あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)第九条の二第一項の届出に係る同項の施術所及び柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)第二条第二項に規定する施術所をいう。以下同じ。)の開設者であつて施術所で滅菌消毒用医薬品その他の医薬品を使用するもの
 歯科技工所(歯科技工士法(昭和三十年法律第百六十八号)第二条第三項に規定する歯科技工所をいう。以下同じ。)の開設者であつて歯科技工所で滅菌消毒用医薬品その他の医薬品を使用するもの
 滅菌消毒(医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第五十号)第九条の九第一項に規定する滅菌消毒をいう。以下同じ。)の業務を行う事業者であつて滅菌消毒の業務に滅菌消毒用医薬品その他の医薬品を使用するもの
 ねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の業務を行う事業者であつて防除の業務に防除用医薬品その他の医薬品を使用するもの
 浄化槽、貯水槽、水泳プールその他これらに類する設備(以下「浄化槽等」という。)の衛生管理を行う事業者であつて浄化槽等で滅菌消毒用医薬品その他の医薬品を使用するもの
 登録試験検査機関その他検査施設の長であつて検査を行うに当たり必要な体外診断用医薬品その他の医薬品を使用するもの
十一 研究施設の長又は教育機関の長であつて研究又は教育を行うに当たり必要な医薬品を使用するもの
十二 医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の製造業者であつて製造を行うに当たり必要な医薬品を使用するもの
十三 航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第二条第十八項に規定する航空運送事業を行う事業者であつて航空法施行規則(昭和二十七年運輸省令第五十六号)第百五十条第二項の規定に基づく医薬品を使用するもの
十四 船員法(昭和二十二年法律第百号)の適用を受ける船舶所有者であつて船員法施行規則(昭和二十二年運輸省令第二十三号)第五十三条第一項の規定に基づく医薬品を使用するもの
十五 前各号に掲げるものに準ずるものであつて販売等の相手方として厚生労働大臣が適当と認めるもの

薬機法施行規則138条より

以上より、製造業は、限定された品目(自ら製造した医薬品)につき、製造販売業/製造業に販売することができ、原薬たる医薬品に限れば、限定的に卸売販売業者にも販売することができるということが分かります。

ですが、「医薬品の製造業者がその製造した医薬品を〜」の箇所に疑問が残ります。「製造した医薬品」の指す範囲はどこまでなのでしょうか?

市場出荷前の医薬品を「保管」することは「製造行為」の範疇ですが、であれば製造業の製造所に物流が通れば、製造業者は最終製剤を卸売販売業者から購入し、さらにそれを販売することもできるのでしょうか?

これは承認書の記載も関係してきそうなところです。

3)卸売販売業者の場合

これはもう登場してしまっていますが、薬機法25条1項3号および薬機法施行規則138条に示されています。

卸売販売業の許可 医薬品を、薬局開設者、医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者その他厚生労働省令で定める者(第三十四条第五項において「薬局開設者等」という。)に対し、販売し、又は授与する業務

薬機法25条1項3号より

法第二十五条第三号の厚生労働省令で定める者は、次に掲げるものとする。
 国、都道府県知事又は市町村長(特別区の区長を含む。)
 助産所(医療法第二条第一項に規定する助産所をいう。)の開設者であつて助産所で滅菌消毒用医薬品その他の医薬品を使用するもの
 救急用自動車等(救急救命士法(平成三年法律第三十六号)第四十四条第二項に規定する救急用自動車等をいう。以下同じ。)により業務を行う事業者であつて救急用自動車等に医薬品を備え付けるもの
 臓器の移植に関する法律(平成九年法律第百四号)第十二条第一項の許可を受けた者であつて同項に規定する業として行う臓器のあつせんに使用する滅菌消毒用医薬品その他の医薬品を使用するもの
 施術所(あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和二十二年法律第二百十七号)第九条の二第一項の届出に係る同項の施術所及び柔道整復師法(昭和四十五年法律第十九号)第二条第二項に規定する施術所をいう。以下同じ。)の開設者であつて施術所で滅菌消毒用医薬品その他の医薬品を使用するもの
 歯科技工所(歯科技工士法(昭和三十年法律第百六十八号)第二条第三項に規定する歯科技工所をいう。以下同じ。)の開設者であつて歯科技工所で滅菌消毒用医薬品その他の医薬品を使用するもの
 滅菌消毒(医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第五十号)第九条の九第一項に規定する滅菌消毒をいう。以下同じ。)の業務を行う事業者であつて滅菌消毒の業務に滅菌消毒用医薬品その他の医薬品を使用するもの
 ねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の業務を行う事業者であつて防除の業務に防除用医薬品その他の医薬品を使用するもの
 浄化槽、貯水槽、水泳プールその他これらに類する設備(以下「浄化槽等」という。)の衛生管理を行う事業者であつて浄化槽等で滅菌消毒用医薬品その他の医薬品を使用するもの
 登録試験検査機関その他検査施設の長であつて検査を行うに当たり必要な体外診断用医薬品その他の医薬品を使用するもの
十一 研究施設の長又は教育機関の長であつて研究又は教育を行うに当たり必要な医薬品を使用するもの
十二 医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の製造業者であつて製造を行うに当たり必要な医薬品を使用するもの
十三 航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第二条第十八項に規定する航空運送事業を行う事業者であつて航空法施行規則(昭和二十七年運輸省令第五十六号)第百五十条第二項の規定に基づく医薬品を使用するもの
十四 船員法(昭和二十二年法律第百号)の適用を受ける船舶所有者であつて船員法施行規則(昭和二十二年運輸省令第二十三号)第五十三条第一項の規定に基づく医薬品を使用するもの
十五 前各号に掲げるものに準ずるものであつて販売等の相手方として厚生労働大臣が適当と認めるもの

薬機法施行規則138条より

この省令で定める者の具体例は、通知(事務連絡「卸売販売業における医薬品の販売等の相手先に関する考え方について」平成23年3月31日)においてさらに具体的に例示されています。

https://www.city.saitama.jp/005/001/013/010/p017752_d/fil/230331jimurenraku.pdf

https://www.city.saitama.jp/005/001/013/010/p017752_d/fil/280329jimurenraku.pdf

以上より、卸売販売業者は、原則として品目の制限なく医薬品を、薬局開設者/製造販売業者/製造業者/小売業者/病院等開設者/その他に販売することができるということが分かります。

卸売販売業の例外的な取扱い(小規模卸/特定品目卸/サンプル卸)については、また別の機会で扱いたいと思います。

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