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異形を迎える話

彫刻家・浅野暢晴さんのトリックスターという3本足の異形の作品が我が家には7体いる。


異形が異形を呼んでいるとしか思えない。まるで小さな共同体だ。それぞれに文様やフォルムが異なり、独特の佇まいがある。
SNSでの人気が高まり、ギャラリーに新作が入荷した当日に完売することもあった。
今までは主に黒土を用いた黒い異形だったのが、ネットショップ開設を機に赤土の作品も出来て気になっていたところにギャラリーでの新作入荷の情報が入ってきた。

残っているなんて珍しい、どうしたんだと思ったらネットショップで散財されて財布のライフがゼロになった方が続出したのだというのがフォロワーさん情報であった。

赤土の相棒ックスター、見たい。いや見に行くというのはお迎えと同義である。つまりお迎えを前提に見たい。
月曜日、鞄に消毒ジェルを入れてマスクをし、寄り道はせず高崎パスタも焼きまんじゅうも諦めてビエントアーツギャラリーを目指した。

ギャラリーのスタッフさんが開店10分前にドアを開けたと同時に滑りこむと昼の光を受けたキャメルカラーの相棒ックスターが出迎えてくれた。
家にいる異形は座っているものが多いので、丸っこくて立ち姿の右側の異形が目当てだったのだが無事に残っていた。
手にとってみたり、棚の上に乗せてみてまじまじと見る。
思っていたサイズの1.5倍くらいあって、一瞬その存在感にたじろぐ。が、やはり赤土の色合いでボロノイの文様がハッキリ見えるところが良い。お迎えに異論なし。

高崎から戻ってきて買い出しを済ませ、コーヒーフロートを飲みながら外でのトリックスターを楽しむ。

異形というより森の精霊のようだ。緑に馴染む。
これはまさに相棒としてあちこちに連れて行きたくなってしまう。立ち姿なので撮影もしやすい。

帰宅して枕元のライトスタンドに置いてみる。改めてこれはアート作品だと実感する。
もともと絵が好きで立体作品に興味があまり無かった私だが、浅野さんの作品に触れたり中之条ビエンナーレに行って、立体作品が風景や空気感を変えることを知った。

ボロノイの文様ひとつひとつの違い、手捻りで作られた丸み。何の変哲もないライトスタンドは小さなギャラリーに変わる。

今日迎えた相棒ックスターも、既にいる7つの異形たちもこれから完成していくと思うと楽しみだ。

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