見出し画像

シンプル か 複雑 か?

「福祉現場で役立つ動機づけ面接入門」No16 OARS-3 聞き返し

 こんにちは。春めいてきましたね!!

 今日は、 動機づけ面接の極意OARSの三つ目、聞き返し(Reflection)についてです。面接での聞き返しときくと、繰り返しや伝え返しの方法を連想する方がいらっしゃるかと思いますが、動機づけ面接での聞き返しには2種類があります。それは、単純な聞き返し複雑な聞き返し。この二つの聞き返しを有効に使っていくことが必要ということです。

単純な聞き返し

 これは、読んで字のごとく、クライエントの話をそのまま、あるいは少しだけ言い換えて伝え返すスキルです。

「そろそろ退院したいと思っている」 「退院したいと思ってる」

 みたいな感じですね。しかし一点ポイントがある。それは、ただなんでも繰り返せば良いというわけではなく、共感ポイントをしっかりと聞き返していく。それが相手と信頼関係を構築するポイント。そして、もちろん、チェンジトーク(変わりたい気持ち)が語られたら、そこには敏感に反応して聞き返す。

 しかし、この単純な聞き返しだけでは話が進まない場合がある。それは、クライエントの維持トーク(変われないという葛藤の現れ)がグルグル始まってしまう場合。上の例だと、

「そろそろ退院したいけど、踏み切れない」 「踏み切れない」 「そう。踏み切れないんです」 「踏み切れないんですね…」

 の様に、堂々巡りになってしまう…。ここで、複雑な聞き返し。

複雑な聞き返し

 複雑な聞き返しは、クライエントの話したいことに支援者が意味を付け加えて伝え返します。なぜなら、クライエントも言葉のすべてで自分の気持ちを表しているわけではないから。本書の例では、

「父の介護が大変なんです」

 と、クライエントが言った時、その言葉には様々な思いが含まれるでしょうが、言葉としては語られていない。この時に、複雑な聞き返しでは、クライエントの気持ちを推測して伝え返します。

「父の介護が大変なんです(推測:もう嫌だ or 助けを借りたい)」

 こんな感じで気持ちを推測して、

「施設の利用も考えたい」

 などと返します。ここで重要なのが、推測は当たっても外れても良い、ということです。そう、これは、探りの質問も兼ねているのですね。もしここで、推測が外れたら、クライエントの真意を問えば良いのです。

「父の介護が大変なんです」 「施設の利用も考えたい」 「そうではありません。父を施設に預けることは考えていません」 「そうなんですね。もう少し詳しく教えてください」

  このような感じです。

聞き返しはシンプルにかつ控えめに

 特に複雑な聞き返しの狙いは、クライエントの変化に対する自己探求を進めてもらう所にあるといいます。大袈裟に聞き返してしまうと、逆効果。維持トークに転じてしまいます。

「もうあの人とは話したくない!!」 「あの人に対して激怒している」 「…そんなに怒っているわけでは。仕方ない部分もあるから…」

 のように。そこで、シンプルに控えめに。

「もうあの人とは話したくない!!」 「イライラした気持ちを感じ始めている」 「特にお酒を飲み始めると、手がつけられないんです。どうにかしたい」

 こういったスキルは、実践の中で磨かれると思います。今日の実践から是非使ってみましょう。

 相手に適切に伝え返す方法として、もちろん動機づけ面接も有効だと思いますが、アドラー心理学もおすすめです。宣伝になってしまいますが、アドラー心理学好きな私が、アドラー心理学専門の臨床心理士に正直なところを聞いてみた(聞き返しの技術ちょっと応用)、というコンセプトの本を書きました。もし宜しければご覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?