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アメリカの金利が上がるということについて考えてみる

こんにちは。アセアン進出支援協会の阿部です。
昨年夏からはじめた協会会員向けのメールマガジン。今回のnoteは、そこで取り上げた「アメリカの金利がアセアン等新興国に及ぼす影響」について書いてみたいと思います。

▽円安・円高についてザックリと

いま、日本は円安局面にあります。私が20代前半の頃(今から25年以上も前になりますが)は円が強い、いわゆる円高局面にあり、1ドルは90円台でした。それが今では115円台を境に推移する円安局面が続いています。

ちなみに、円高の場合は例えば90円で1ドルに変えられる訳で、180円あれば2ドルと交換できます。

これが円安の115円=1ドルになると、2ドルと交換するには230円必要になるので、1ドルと交換するためにはより多くの円が必要になることが分かると思います。

こうしたことから、一般的には輸入において円高は有利に働きます(1ドルのものを90円で買える)が、円安の場合は輸入品の値段が上がる(1ドルのものを買うのに115円必要)ことになるので、物価が上がる傾向になってしまいます。

▽アメリカが金利を引き上げるということへの考察

アメリカが金利を引き上げるということを考える前に、まず金利を低く抑えることの効果を考えてみましょう。

卑近な例でいえば、銀行からお金を借りたいとき、金利が低ければお金は借りやすくなります。これまではこの金利を下げて、企業にお金を借りやすくする環境をつくることでお金を多く世に行き渡らせ、雇用を支えてきました。

仕事があれば給料がもらえるので、もらった給料は消費へと廻り、経済は廻ります。

▽金利があがるとどうなる?

金利が上がるということは、まず上に書いたことと逆のことが起こります。企業はお金を借りるのに少しためらいを持つようになるかもしれません。

一方で、私たちが銀行にお金を預ける局面で考えてみるとどうでしょう。金利が低い銀行よりも、金利が高い銀行へ預けたほうが、同じ1万円を預けるにしても得をすることは明らかです。

このような背景になると、新興国の通貨や日本の円を持っている人が、その通貨を売ってアメリカドルを買うという流れが起きてきます。結果ドルが強くなり、売られた通貨はドルに対して安くなってしまう、という現象が起こることが心配されているのです。

▽モノの値段が上がる?

年末、ガソリンの値段が高くなっているというニュースをよく聞いたと思います。これには原油の産出国が供給を絞ったことの影響もありますが、ガソリンだけでなく、電気代の単価をはじめ、様々なモノの単価が上がり始めています。

先にも書いたように、円安の局面というのは輸入品への支払い負担が増える方向に働きます。さらには昨今の人手不足のこともあって、企業は輸入品に対する支払だけでなく、従業員の給与への負担ということも起きてくる可能性も否定できません。企業努力でモノの値段を抑えるには限界があり、結果として商品価格へ転嫁させざるを得ない。こうして、物価が上がっていくというスパイラルが起きていくことは想定に難くありません。

▽歴史はどうだったか

過去にアメリカが金利を引き上げた際、新興国では自国の通貨が売られドルに流れたために、その国の経済が悪くなるということが起こりました。

こうしたこともあって、世界はアメリカの金利引上げに身構えているという背景があるのだと思います。

▽おわりに

ところでこれ、私たちの給料が上がれば、例え物価が上がったとしてもその値上がり分を吸収できることになるのが分かると思います。

日本も1975年前後のオイルショックの時には、物価の上昇率が20%を超えるという時があったそうです。しかしこのときは高度経済成長の時代でもあったので、物価があがっても頑張れば給料もあがる、という構図があったのかもしれません。

一方で、失われた30年という言葉に揶揄されるように、先進国のなかで日本の賃金は上がらず他国に取り残されているという現状があります。

そんなときにインフレが起きれば、昨今声高にいわれている格差は益々広がってしまうのかもしれません。

ただ、そんな暗いことばかりを考えていても仕方がありません。境遇を悔やんだところで、明日から誰かが手を差し伸べてくれる訳でもありません。悔しいですが歯を食いしばって、でも時には休みやすみでも良いから、一歩ずつ進んでいくことが大切なんだと考えています。

2022.01.13 阿部 勇司

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