【雑感】第103回天皇杯3回戦 対FC東京
東京ヴェルディ 1-1(PK8-9)FC東京
映像の見返しが出来ていないけど、12年ぶりの東京ダービーを終えての現地観戦での雑感を備忘録として残しておきたい。
スタメン
ヴェルディは中2日、中2日の間に迎える。GKマテウス以外10名を入れ替えるターンオーバーで2回戦の群馬戦のように天皇杯用のメンバーで臨む。
一方のFC東京。こちらは中3日、中3日の間で迎えたこともあり大方の予想通りリーグ戦メンバー中心のいわばガチメンで臨む。
試合雑感
平日開催の天皇杯3回戦とは思えない異様な雰囲気が会場を包む。12年ぶりのダービーを一番心待ちにしていたであろう両サポーターの声援、煽り、ブーイングが開場直後からはじまっていた。会場周辺での張り紙や看板への生卵の投げつけと法律違反の行為もあり、それは残念でありJリーグ全体の評価を下げるもので、しっかりと裁いてもらいたい。
お互いのサポーターの声援で試合開始直後から選手たちのエネルギーも凄まじいものであった。主軸選手たちが出場したFC東京に対して、控え組中心のヴェルディと差は歴然としており一方的なものになるかと思いきや、日頃から口を揃えて「強度の高いトレーニング」というだけあってヴェルディの選手たちの組織的なプレーは引けを取らないものであった。
まずは様子見をするようなFC東京に対して、ヴェルディはSB小泉と長友のところに阪野や杉本竜士を張らせてサイドで起点を作り陣地を稼ぐ狙いがあった。崩しからフィニッシュへという理想はありながらも個の部分では負けてしまい、どうしても弱者のサッカーになってしまい、セットプレーやロングスローからのチャンスとなる。昨季の天皇杯4回戦での劇的な決勝点を挙げた奈良輪が今回も期待をもたらすように挨拶代わりに豪快なボレーシュートをかます。
15分の攻撃では右サイドで獲得したスローイン。左SBアルハンがロングスローをPA内へ入れると相手GKがジャンプしたところも飛び越える驚異的な飛距離で投げ込まれ、最後は綱島悠斗がヘディングで合わす。しかし、ポスト直撃と超決定的チャンスを逃す。アルハンはロングスローが武器と自負するだけ素晴らしいものであり、大きくアピールすることになった。一方で決定機を外した悠斗。リーグ戦でもヘディングシュートを仕留めきれないことが散見され、苦手なのかもしれない。良い形で入ってくるだけありこういうところで得点を奪えるようになると選手として1つ上の選手になっていくだろう。
絶好の得点機会を逃したヴェルディに対して、これがJ1なんだよと思わせるようにFC東京がその直後に先制点を挙げる。中盤での競り合いから左サイドで収め、すばやく前線へ。ライン間で受けると、駆け上がってきた塚川にパスが渡り、うまい具合にGKマテウスの前でバウンドしたミドルシュートが突き刺さり、FC東京が先制点を奪う。
リードしたFC東京はDFラインを高く維持して敵陣でヴェルディのビルドアップに人数をかけたプレスで襲い掛かる。確かな技術で落ち着きのあるベテラン加藤弘堅が上手くボールを捌き、散らしていくが、これが同点の場面であれば我慢する意味でも良かったがビハインドの状況では攻撃の状態としては行き詰まり感があった。弘堅は早々にイエローカードを1枚受けてしまっていたためカウンターを受ける時はリスクあるプレーが出来なくなり、前半で交代を余儀なくされる。
ビハインドになってからなかなか攻撃の形を作れないヴェルディは後半開始時に平と加藤弘堅に代えて、千田と山越の2CBを入れる。綱島悠斗がCBからDHへ1列上がることになる。負傷明けの平は45分限定出場だったのだろうか?
監督のクラモフスキー、どこかで聞いた名前と思ったら山形を率いていた指揮官だ。つまり山形と対戦した時と同じようなサッカーをFC東京も繰り広げ、5レーンを意識した選手配置と斜めのボールと人の動きをする。山形よりも選手の質が上がっていることもありサッカーの自体の質も良くなっているように感じた。ヴェルディのSBを1対2で上手く外と中を使って崩し、後半の立ち上がり15分20分はかなり押し込む展開になる。ヴェルディはマテウスを中心になんとか耐え凌ぎ1点差のまま試合は終盤へ差し掛かる。
だんだんとFC東京のプレー強度にも適用し始めて綱島悠斗、西谷亮、阪野といったフィジカル優れた選手たちが身体を張りボールを収め盛り返すことが出来始め、ヴェルディは杉本竜士に代えて北島、楠に代えてユース所属の白井と立て続けに交代をする。すると、直後に獲得した右サイドからのCK。北島がファーへ蹴り込むと白井が豪快にヘディングシュートを叩き込み70分、同点に追いつく。噂では聞いていた高校3年生の白井。この大一番でいきなり結果を残すあたり、スター性の要素も兼ね備えている。
暑さもあり次第にさすがにプレー精度が落ちてきた両者。90分すぎにFC東京が決定機を迎えるもマテウスの好守で防ぎ、試合は延長へ。
延長前半15分、FC東京のクリアミスから白井がGKと1対1のビッグチャンスを迎えるも枠を捉え切れず、そのあとも両者ゴール前まで迫るも得点は奪えずPK戦へ突入。
FC東京側のゴールで行なわれたPK戦。ヴェルディの選手たちが蹴る時には大ブーイングが起きるなか、この状況を楽しむかのような強心臓の選手たちは次々と成功。お互いに8人目まですべて成功という素晴らしいPK戦、9人目の千田が失敗し、12年ぶりの東京ダービーはヴェルディが涙を飲んだ。
まとめ
日頃プレー機会の少ない選手たちがJ1選手を相手に同点に持ち込み90分を120分を戦えたことはチーム全体の戦力が高くなってきていることを証明してくれた。ベンチ外となった選手たちも大きな刺激を受けたことは間違いないだろう。ヴェルディを煽り、罵るFC東京サポーターに対して、ヴェルディサポーターは自らにベクトルを向けて鼓舞しつづける。ダービーとはこういうものなんだ、J2では経験できない世界を味わうことでより一層、目指すべきステージへの想いがクラブとして強くなったことは間違いない。
38,000人を超える観衆を集めた町田戦、東京ダービーと中2日でJ1の予行演習のようなかけがえのない経験を積んだ。結果こそ伴わなかったもののクラブとして血となり肉となることを願いたい。