【雑感】2024年J1リーグ 第18節 対サンフレッチェ広島~羨望のまなざし~

東京ヴェルディ 1-4 サンフレッチェ広島


スタメン

 前節・札幌に5-3勝利してリーグ2連勝のヴェルディ。代表ウィークと天皇杯の期間に離脱者が続出し3名を入れ替える。林、谷口栄斗が負傷から復帰し、シャドーには山田剛綺が入った。
 前節・磐田に2-0勝利の広島。ルヴァン杯、天皇杯を挟んで迎えた一戦、リーグ戦からのメンバー変更は無しで臨む。かつてのヴェルディのエース・ドウグラスヴィエイラが初めての古巣対戦をベンチから見守る。

前半

 フィジカルを活かして縦に速いサッカーを志向する両者の試合は序盤はボールが空中を行き交うロングボール中心になる。開始直後、自陣で林がファウルを犯してFKを献上。東が入れたボールを栄斗がヘディングクリアするも加藤に渡りPA右のギリギリから思い切りよくシュートを放つと稲見の背中にあたりコースが変わってそのままゴールイン。ホーム広島が電光石火の先制点を挙げる。
 25,000人を超える観衆に四方を囲まれる圧倒的なアウェイでいきなり失点をしたヴェルディは苦しい試合の入りとなった。前節・札幌戦でも荒野のシュートが千田に当たって得点を許すなどシュートから避けるような体勢を取ることでボールが前では無くて後ろに流れることも悪循環である。

 出鼻を挫かれたヴェルディであるが前線の木村、染野、剛綺の1トップ2シャドー目掛けてロングボールを入れて行く。この日は染野が左サイドに入る前節とは異なる配置となる。主将・森田が負傷による欠場もありシャドーの見木がDHに下がってスタメン起用であったがここのところ好調だった見木の勢いは影を潜め、前線で剛綺も起用したことでベンチには山見とリーグ戦出場無しのルーキー古川と交代選手の迫力にも欠け、結果としては失敗の起用であった。

 左サイド中心にボールを運ぶヴェルディあるが攻撃参加するWB稲見へのパスがズレる場面が立ち上がり10分で2回もあり勿体無いミスであった。

 ロングボールでダメならばとボール非保持時1523で構える広島に対して中盤2DHの両脇で齋藤と見木がパスを受けて中盤経由で前線に運ぶ意図のある攻撃を仕掛け立ち上がり早々に失点したが落ち着きを取り戻し相手陣地へ攻め込む時間帯になる。

 5分、やや遠い位置からFK。翁長が入れたボールのこぼれ球を栄斗がシュートも枠を捉え切れず。18分には齋藤の左足のでフィードして飛び出す大迫の前で染野がタイミング完璧なヘディングを放つも枠外へとチャンスは作れていた。このどちらかが決まっていたらという展開ではあった。

 ヴェルディに押し込まれた広島であったが両WB新井と東の攻撃力で挽回をする。20分前後から左サイド東の攻撃参加からのクロスでチャンスクリエイトが続き追加点の機会を伺う。稲見と翁長に比べて新井と東の方が攻撃参加するタイミングの良さ、ダイレクトでクロスを上げるなどワンタッチプレーの正確さが秀でており1343でサイドが1枚ずつのシステムにおいて両翼の差は90分通じて顕著に出てしまった。5バック5トップと豪語していたが攻守において木村の1トップの時間が圧倒的に長く劣勢に立たせれる。ボール非保持時もシャドーの染野と剛綺がSHとなり1541となり3バックでビルドアップする広島にあまりにも自由を与えすぎた。個の力で上回る相手に簡単にボールを持たせると押し込まれることは明白であり再び広島がゴールへ襲い掛かる。

 24分、右サイドからの広島CK。決定機もマテウスが2本立て続けにセーブでなんとか防ぐも相手が先にボールに触れてる。そのあとにも東のクロスに加藤がドフリーでヘディングを許す。1541で守るヴェルディは守備ブロックやスライドが強固という訳でもなく、前から来るボールを単純に跳ね返すのはできるが体勢と目線をずらされる横からのボールには相手に先に触れられることが多い。1442での残り時間に前線の選手を1枚削って最終ラインにCBを投入して跳ね返すような様相になっておりこのシステムが機能しているとは受け入れがたいものであった。

 1トップ木村がボールを収めて馬力溢れる仕掛け相手を引きずりながら前進することに佐々木、中野はカードで止めるしかなく、プレーの粗さが目立った。木村が孤軍奮闘するも周囲のサポートが遅くシュートには至らず0-1で前半を折り返す。

後半

 ハーフタイム明けヴェルディは稲見と剛綺に代えて松橋優安と山見を投入してそのままのポジションに入れる。後半開始早々、左サイドからの広島のCK。ソティリウが打点の高いヘディングシュートを叩き込み追加点を挙げる。前節・札幌戦に続きこの日の前半も合わせてセットプレーからの連続被弾。入りの甘さを露呈している。しっかりと修正しないと試合の入りで今後の対戦相手も出力を高めて狙い撃ちしてくるだろう。

 2点ビハインドで活力が落ちて臆病になるヴェルディ。最終ラインでのパスミス、立ち位置の悪さと判断の鈍さで角度なく横パスを強いられて苦し紛れのクリアと状況は悪くなるばかり。試合展開が楽になった広島は前半以上にボール非保持時のプレスの鋭くなり、1541で構えてヴェルディ最終ラインには1トップ+中盤の選手の縦スライドで3CBに2枚で当たり最終ラインの選手も連動して縦スライドを行ない縦圧縮で1442となる可変を魅せる。同じ1541システムで守るヴェルディでは縦スライドの守り方はほとんど見られず練度の差を感じてしまうばかりの試合となった。

 ヴェルディの縦パスに味方が合わずボールが流れると大迫が思いっきり良く前線へフィード。目測を誤るようにしか見えない林があっさりと通り超されて加藤へ。加藤はすぐさま中のソティリウへ横パスを入れるとあとは流し込むだけ。これで3点目。大迫のフィードの凄さよりも林の軽率なプレーにしか目が行かなかった。失点に直結するミス以外にもミスの目立つ林をいつまで使い続けるのだろうかと後半戦が心配になる。

 懲罰もあるだろう林に代えて食野を投入し1442へシステム変更したヴェルディ。食野はDHに入る。森田不在で最終ラインからのボール貰い前進する役割を担い、J1のプレー強度に慣れてくれば森田同じようなことが出来る3列目の選手になれるのでは淡い期待を抱いてしまうここ最近の出来である。

 3点リードになった広島はそれでも手綱を緩めずドウグラスヴィエイラ、満田、エゼキエウを投入し交代選手の質の高さをみせつける。

 最終ラインの不安定さは続くヴェルディは大きくクリアや繋ぐといった判断も冴えず、相手にボールを渡す場面も続き自陣でパスカットされるとそのながれからドウグラスヴィエイラにダメ押しとなる恩返し弾を喰らい差が4点に広がる。

 なんとか得点を挙げたいヴェルディも攻勢に出る。後半AT右から翁長がクロス。ファーで袴田が折り返し木村が頭で流し込み1点返すが時すでに遅し。これでおしまい。1-4の大敗を喫した。

まとめ

 同じシステムのミラーゲームとなり個の力の差がスコアに出てしまった。離脱している宮原や森田と実力者がいたらどうなるか楽しみでもあるが10回やっても1回も勝てないのではと思うくらい広島の強度は高かった。ぐうの音も出ない完敗であった。新設されたサッカースタジアムの雰囲気、繰り広げられるダイナミックなサッカーには羨ましさを感じた。
 開始早々の失点はあったものの前半は頑張っていたように見えた。後半は2点目を取られたこと集中力が切れてしまった。勝ち負けになった札幌広島2戦は連続して大量失点。システム再考もあるが守備意識がやはり開幕当時に比べて薄れてる気がする。縦と横のスライド連動性が鈍くなり選手たちの距離が開き全体のコンパクトさが失われている。プレスやプレスバックも少なく球際の寄せに激しさが無くなりつつある。
 オプションとしての3バックはまだ発展途上であり結果を出しながら質も追求する戦いが続く。