【雑感】2024年J1リーグ 第13節 対鹿島アントラーズ~あの時は違うたくましさ~

東京ヴェルディ 3-3 鹿島アントラーズ


スタメン

 前節・磐田に3-2で勝利し今季ホーム初勝利で2連勝、9戦負け無しのヴェルディ。鹿島から期限付き移籍の林と染野が契約上出場不可。3連戦を見据えてかメンバーも半分入れ替えて宮原、山田裕翔、綱島悠斗、山田楓喜、山見と5名を前節から変えた。
 一方の鹿島は前節・柏に2-1で勝ちこちらは3連勝中でスタメンは前節と同じ11名だ。はじめての古巣対戦となった安西幸輝は左SBで出場。

前半

 初代王者を争ったクラブ同士のJ1での16年ぶりの対戦にNHK総合でも生中継と盛り上げムードあるなかで行なわれた一戦。5名入れ替えのヴェルディの配置に注目した立ち上がり。ドリブラー山見を2トップの一角に置き、右からのスローインの流れから挨拶代わりに左足でシュートも早川にセーブされる。

 鹿島は裕翔と袴田のサイドを突く攻撃を執拗にしていく。ロングボールを師岡が競りCK獲得。右サイドからのCK。名古がアウトスイングのボール入れるとヴェルディがクリアしたかと見えたが木村の肘に当たってクリアしており、VAR判定により鹿島にPKを与える。これを鈴木がマテウスの動きをよく見て落ち着いて逆を取り沈め早々に鹿島が先制する。

 鹿島は1442から両SHも高く張り1424でコンパクトな陣形からプレス、プレスバックを連動することでヴェルディにゆっくりとボールを持たす時間を作らせない。直後にも右サイドからの攻撃を見せる。右SB濃野からの縦パスに裕翔がクリアできず、名古に入れ替わられてマテウスとの1対1を決めて鹿島が電光石火の2点目を挙げる。

 思いもよらぬ2点差がついた立ち上がり。鹿島が相手をいなすように攻守において主導権を握る。トップの鈴木は左に流れて真ん中を空けるとそのスペースに仲間、名古、師岡が飛び出す。2失点をして浮足立つヴェルディは誰が着くかはっきりせず明らかに動揺している様子が伝わる。ビルドアップ時はDH佐野が下りて、濃野を押し上げて師岡と2人で袴田と裕翔を押し込む。ヴェルディはボールホルダーへの寄せ、パスコースを消す守り方が試合を重ねるにつれて精度落ちてる印象がある。

 6分、左CB関川からのロングフィードに右サイド師岡が抜け出しPA内に侵入し並走する鈴木へ横パスも千田が防ぐ。あやうく3失点目をしかけた危ない場面だった。

 染野不在でターゲットが木村1枚しか居ないヴェルディは鹿島にとっては守り易く後方からのフィードの精度もよくなく前線でボールが収まらず染野不在の穴を痛感する。

 劣勢に立つヴェルディはU23日本代表で大活躍した山田楓喜のキックから得点を狙う。右サイドで獲得したFK。インスイングで素晴らしいボール入れるも千田がタイミング合わず枠外へ逸れる。ヴェルディは左SH見木とトップの山見を入れ替える。山見のトップは東京ダービー同様にあまり機能しなかった。

 27分、鹿島のスローインに楓喜の守備からボール奪取し、カウンターをすると木村が倒されてFK獲得。楓喜がゴール正面からの狙うも枠を捉えられず1点が遠い。

 鹿島は4-2のプレスが連動していて、ヴェルディの最終ラインにビルドアップを許さず。4バックは連動せずにラインコントロールすることで背後を取らせないようにする。SB前で起点を作るも佐野と知念がカバーリングを徹底してクロスさえ上げられない苦しい状況になる。

 40分すぎにDH悠斗とトップ見木の前後を入れ替えて前線にツインタワー形成してパワープレーを挑むも見せ場は回ってこないまま今季最悪の出来とも言える前半を終える。

後半

 2点ビハインドになったヴェルディは山田裕翔に代えて第8節・FC東京戦で負傷交代した谷口栄斗を投入。裕翔は高い授業料を払うことになってしまったがこれも経験だろう。鹿島は左SH仲間に代えてチャヴリッチがそのままの位置に入る。

 J1になってから観衆も多く、声が聞こえないのか選手たちがお見合いする場面が増えてる。袴田と栄斗が相手選手とゴールライン際まで守りゴールキックにしたかと思いきやCK判定。2人で挟み込んだならもっとはっきりとしたプレーをしてくれても良いはずだ。

 50分、右サイドからの鹿島CK。名古がアウトスイングのボール入れるとフリーになった植田がヘディングシュートを叩き込み鹿島に3点目。なぜフリーだったのか守備陣形には疑問が残った。

 濃霧で反対サイドが何も見えなかった16年前とまったく同じ点数経過に悪夢再びとふと頭をよぎるがそんなことは逞しい緑の戦士たちには関係なかった。

 左SH山見にボールが渡りSB濃野とのこの試合はじめてような仕掛けが出来た。鹿島SBを釣り出そうと楓喜と山見の両SHで起点作るも佐野と知念がカバーリングは後半も徹底されていた。

 58分、右サイドから師岡が仕掛けてPA内へ侵入。あわや4点目のチャンスを作る。もともと磐田加入内定していたが補強禁止処分により昨季に鹿島へ加入したアタッカーが2年目を迎えて脅威になってきた。

 60分、ヴェルディは楓喜と悠斗に代えて齋藤とチアゴアウベス投入。山見が右SHに回ってチアゴが左SHに。齋藤は見木、晃樹と中盤形成してシステム変更する。

 前節・磐田戦でも効いてた齋藤の縦横無尽に走る献身的な動き。いきなりPA内でポストプレーして木村のこの日初シュートを演出した。チアゴは左サイドでボール持つと前しか向かないような強い気持ちで仕掛け続け鹿島にインパクトを与えた。

 63分、鹿島は濃野と師岡に代えて須貝と藤井投入。右サイドコンビごとを交代をする。チアゴに押されテコ入れするつもりだっただろうが結果として失敗に終わる。

 負傷明けで後半頭から出場している栄斗は鈴木とのマッチアップでびくともせず。3点差がつき鹿島のプレッシングが緩くなったこともあるがボールを握ると持ち運びや縦パスを入れるなどヴェルディのCBのなかでは能力が頭ひとつ抜けている。ただ、ここから縦パス入るようになり中盤3枚がボール触れてテンポ出てくる。

 すると、68分、ヴェルディが1点返す。左でチアゴが起点作ると晃樹へ。一度ボール失うもすぐに取り返すと中央の齋藤へ。齋藤は反転して左足で対角へ上手く流し込んだ鮮やかなシュート。

 1点を返したヴェルディは72分に袴田に代えて翁長、75分には宮原に代えて松橋優安を投入して両SBも変える。

 鹿島は名古に代えて樋口、そのあとには知念に代えて土居を投入。中盤を3枚に変えたように見えた。ヴェルディの中盤3枚はローテーションしながらアンカー佐野の脇に立ち、ここまでSBを引っ張り出していた時にカバーリングを徹底していた鹿島に対して2対1を作りサイドでの優位性を生む。

 押し込むヴェルディに2点目が入る。81分、齋藤から浮き球に抜け出した翁長。速いグラウンダーのクロスを入れるとボールは流れてファーサイドで木村がプッシュ。1点差に迫る。痛恨のPK献上した木村は3戦連発となった。

 ヴェルディは染野と木村が居ればフィジカル活かした2トップにロングボールを預けてゴリゴリ進む。いなければ中盤3枚のテクニック活かした1433と2つのオプションを使い分けできそうだ。

 1点差に迫りヴェルディが押せ押せムードとなるも90分、攻め残りしていた鈴木に久しぶりにボールが渡る。身体を上手く使いながらキープしてそこから巧みに反転し持ち込みシュートもマテウスがセーブ。ここで1点入っていたら万事休すだった。あるいはボールキープされていたらという場面であった。

 後半ATにゴール正面でヴェルディはFKを獲得。キッカーの翁長が浮き球を入れると栄斗が落とし、フリーの木村が左足で流し込むと最後は見木が詰めてヴェルディがついに3点差を追いついた。

 3点ビハインドも諦めなかった緑が土壇場で追いつき3-3ドロー決着となった。ヴェルディはこれで10戦負け無しとした。

まとめ

 対戦前からわかっていた主軸染野と林が不在のこの一戦。その穴はあまりにも大きかった。先制点2点目をあっという間に取られてゲームプランが瞬く間に崩れた前半は良いところ何もなかった。スタメン、システムもパッとしなかった。しかし、監督の采配が見事にあたり交代選手たちがその実力を遺憾なく発揮してくれてアウェイ・カシマで3点ビハインドから同点に追いつけたことは大きな自信に繋がることだろう。どんなにビハインドでも監督、選手、サポーターの諦めない姿勢がまたも実を結んだ。
 両チームの交代選手の出来がこの同点劇に繋がったのだろう。交代選手たちが出力高めて盛り返すヴェルディに対して鹿島はその圧を真っ向から受けてしまい、交代のタイミングも悪く試合に入れないまま強度を上げられなかった。
 相当エネルギーを使ったであろう一戦から中2日で次節・G大阪を迎える。この日に出番なかった稲見や休養たっぷりの染野に期待したい。