【雑感】2024年J1リーグ第21節 対横浜F・マリノス~原点回帰の大博打~

東京ヴェルディ 2-1 横浜F・マリノス


スタメン

 前節・磐田に0-3で完敗のヴェルディ。中2日のこの試合では谷口栄斗、稲見、山田楓喜、山見、山田剛綺と5名を入れ替えて臨む。
 一方の横浜F・マリノスも前節は福岡に1-2で敗戦。松原、渡邊、喜田、渡辺、天野、ヤンマテウス、宮市と大幅7名を入れ替える。ACLならびにその影響での未消化のリーグ戦を戦い、週2の試合が続く大変な日程である。

前半

 伝統の一戦クラシコ、開幕戦の試合終了間際の2失点の逆転負けの雪辱を晴らすべくヴェルディはWエース染野と木村をベンチスタートにして前線の3名総入れ替えで初の組み合わせで臨む博打に出た。

 キックオフからボールを握ったのは戦前の予想どおりマリノス。これに対してヴェルディの前線からの守り方は1トップ1枚でもシャドーを上げて2トップ化でもなく、1トップの剛綺がアンカー喜田をマークして2シャドー楓喜と山見が上島とエドゥアルドへプレスをかける。2シャドーから2CBまでの距離は遠くなるのでボール持たせるのはOKとしてもアンカーへのパスコースを消す守り方を選択する。中を切られることでCB→SBへの外循環のパスを余儀なくされるマリノス。SB松原と渡邊に対してもヴェルディWB稲見と翁長が縦スライドで1列2列と上がってプレッシングをかける。開幕戦同様に対マリノス仕様として中を封じて外回しのパスをさせる守備をする。この日は縦の連動に加えて横の連動も見られた。ヤンマテウスをマークする翁長が縦スライドして持ち場を離れると、左CB谷口栄斗が横スライドしてヤンマテウスをマークとマークの受け渡しも仕込んできて3バックに布陣変更してから守備連携は一番機能していた試合であった。

 出場機会に飢えていた3トップのアグレッシブなプレスプレスバックに呼応するようにDH齋藤と綱島悠斗、最終ラインも球際激しく寄せてマリノスからボール奪取すると上島とエドゥアルドの背後の広大なスペースへボールを入れたりPA外に飛び出ているGKポープの位置を見てロングシュートを試みる。立ち上がり、前線からの守備とボール奪取後の手数をかけない攻撃でボールこそマリノスが持っていたがリズム自体はヴェルディが作れていた。

 前線からの守備が嵌り右サイドからスローイン、そしてCK獲得。久しぶりのスタメン出場の楓喜がキッカー。インスイングで鋭いボールを入れるとマリノスのクリアはPA外の山見へ。山見は余裕を持ってボールを置き直し狙い澄ましたように右足を振り抜き見事にミドルシュートを叩き込みヴェルディが先制する。自分たちのペースで試合には入れていたなかで良い時間帯に得点を奪えた。

 先制点を挙げたヴェルディがさらにエネルギーを増す。楓喜と山見はプレスプレスバック、楓喜は右サイドから左サイドまで追いかけるなど果敢にスプリントを見せる。1トップの剛綺は小柄ながらも持ち前の体幹の強さを活かし相手CBとの空中戦にも積極的に挑み存在感を出していく。すると再び試合が動く。ピッチ中央での競り合いからバックパスを受けた林が素早く縦パスを入れる。マリノスのCBはPA幅から外へ出ない傾向にあるのでサイドに流れる剛綺は抜け出すと右サイドでフリーになる。余裕をもって中へグラウンダーのクロスを入れると山見が飛び込む。競り合った上島に当たりそのままゴールイン。ヴェルディが開始20分あまりで2点リードをする。

 前線からの守備に苦しみ、早くも2点リードとなったマリノスにさらにアクシデントが襲う。左サイドで守備対応していた渡邊がクロスボールをまともに頭に受けて脳震盪の疑いで交代を余儀なくされる。代わりに古巣対戦となる加藤蓮を投入。喜田を消されて外循環のパス回しを強いられるマリノスであるがIH渡辺が横並びになることで2DH+トップ下天野と中盤の配置を変更する。2CBからアンカーへのパスコースは消されていたがDHが2枚になったことでヴェルディの前線からの守備を難しくさせた。中を意識させることでマークが曖昧になり敵陣に侵入したあとも3列目からの飛び出しでポケットを取る動きが増えて5枚横並びのヴェルディ最終ラインに穴を作る。前半ATに渡辺の動き出しからヤンマテウス、天野と繋ぎPA内へ侵入するとこぼれ球を最後は宮市が押し込みマリノスが1点返して前半を終える。ヴェルディは押し込まれ始めた時間帯でなんとか凌ぎたかったが後味悪く45分を折り返した。

後半

 お互いにメンバー交代無しで後半を迎える。1点ビハインドのマリノスが開始早々からボールを握り圧をかけてハーフコート気味に畳み込む。前半途中からシステム変更し2DHとしたマリノスに対してヴェルディのシャドー2枚楓喜と山見が2DH喜田と渡辺へのパスを気にするあまり上島とエドゥアルドへのプレスになかなかいけなくなり2CBからの両サイドへのロングフィードが増える。右はヤンマテウスが張り、左は宮市と加藤の2名となる。サイドから崩して深い位置へ入るというよりもインスイングのクロスボールやカットインからの侵入が主体であり林、千田、栄斗のヴェルディ3バックが身体を張って跳ね返す。

 ヤンマテウス、アンデルソンロペスの個人技からシュートに持ち込むもマテウスの好守で防ぐ。開始10分ほど攻め込まれっぱなしのヴェルディは前線3枚総入れ替えする。見木、染野、木村のレギュラー陣を投入。この時間から彼らが出てくるのは迫力を感じ、スタメンの楓喜、山見、剛綺は前線からの守備に加えて2得点を生み出すと完璧な仕事を見せてバトンを渡す。城福監督の頭を悩ます嬉しい活躍ぶりであっただろう。

 ヴェルディは3枚替えの選手交代をしてもシステムはそのまま。マイボール時には前線の木村と染野をめがけてロングボールを入れるもなかなか収め切れず攻め込まれる展開が続く。

 60分すぎに両者メンバー交代。マリノスは宮市に代えてエウベル。ヴェルディは齋藤に代えて宮原を投入。森田不在のいま、名古屋戦に続き宮原をDH起用するこれは新たなオプションなのだろうか?宮原は出足鋭いボール奪取からのカウンター、ルーズボールへの素早い反応でクリアと360°視野が必要なポジションでもしっかりとこなす。

 マリノスは植中、井上らも投入にしてエウベルをトップ下として開幕戦と同じ配置にしてその後はCBも削り3バックと猛攻に出る。これに対してヴェルディは脚が釣った綱島悠斗に代えて松橋優安を投入して見木をDHへ回す。交代出場の優安は左シャドーで裏抜けからカウンターに一役を担い、押し込まれるチームの陣地回復を助ける。

 試合終盤にCKから植中の決定的なヘディングシュートは枠外。終了間際には千田と入れ替わる形でアンデルソンロペスが左サイドから抜け出して強烈なシュートもマテウスが防ぎ、後半45分間はほぼ耐えることになったチーム一体で逃げ切り開幕戦から成長した姿をライバルに見せつけた。

まとめ

 今季最低の試合だったと振り返った城福監督が前節からどう変えて行くか注目したこの試合。原点回帰のように攻守でハードワーク、アグレッシブなプレー、バトンを受け渡すようにエンジン全開で戦う選手たちの姿があった。負けた次の試合でしっかりと勝利して連敗しなかったことは頼もしい限りだ。上述の通りこの日スタメンの前線3名の頑張りは今後にも期待を持たせるものでありプレー強度に慣れて行くにつれて選手層が厚くなってきている証でもある。
 前線からの守備の頑張りに加えて最終ラインの横スライドも機能してこれまで見なかった形を披露した。マリノス対策だったのかわからないが5バックで守るのであればこれを基盤としてもらいたい。
 次節も前回対戦で敗れたC大阪。ホームでしっかりと借りを返したい。