【雑感】2023年J1昇格プレーオフ 準決勝 対ジェフ千葉~歓喜まであとひとつ~

東京ヴェルディ 2-1 ジェフ千葉

 2万人を超えるサポーターが詰めかけ緊張感がある痺れる一戦を見事に制し昇格PO決勝進出。千葉に押されながらも相手の弱点を上手く突いたプレーで勝利した試合を振り返りたい。

スタメン

 リーグ戦3位で終えたヴェルディは昇格プレーオフをホーム開催を手に入れた。システムは1442を採用し、最終戦出場停止だった深澤大輝が左SBに復帰。2トップの一角には山田が久しぶりのスタメン起用。ベンチには負傷明けの長谷川、強化指定の新井らが入る。
 リーグ戦6位の千葉。システムはいつもの14231で臨む。リーグ最終戦からは1名入れ替えて風間が入る。

前半

 0-2からの劇的な逆転勝ちからわずかひと月で迎えた再戦。お互いに感触を憶えたまま手の内は知り尽くしているなと思わせる一戦となった。

 前日に行われた清水対山形同様に勝つしかない千葉がアグレッシブに入る。ロングボールで陣地を押し進めて圧をかける千葉に対してヴェルディは警戒していたセットプレーを与えてしまう。左サイドからのFK、キッカー田口がインスイングのボールを入れるとそのままゴールイン。しかし、風間がオフサイドの位置に居たことでノーゴールの判定。試合を通じて、セットプレーを多く与えすぎたことはよくなかった。

 ボール保持時の千葉は左SB日高が高い位置を取る左肩上がりの3バックや2SBを上げて見木が下りるパターンを見せてレフティの佐々木から精度高いロングボールを供給する。前線の呉屋に当ててそこからの素早い攻撃を見せる。または中央で田口を経由してサイドに散らす。右の田中、左のドゥドゥと日高は脅威であり尻上がりで順位を上げたチームの原動力であった。

 ヴェルディのボール非保持時は1442で構え、染野と山田が最終ラインへプレス、森田晃樹と稲見が田口と見木をみてミラーゲームの構図になっていた。前線も4対4になり、風間が1.5列目に位置することで谷口栄斗を引っ張り出して横幅を3対3として前と横にスペースを生み出し、田中や呉屋、ドゥドゥのスピードある攻撃を活かす。解説のおれたちの森勇介も指摘したようにヴェルディはいつも以上にDF4枚が横に広げられてひとりひとりが守る範囲が広くなってしまった。

 17分、左SB深澤大輝の裏に出た田中からのクロスに呉屋がドフリーで合わせるもマテウスが顔面で防ぎピンチを凌ぐ。千葉にとっては超決定機をモノにできず前日の山形と同じ匂いがしてきた。どうってことないさとリーグ最少失点を誇る守護神はこの日もビッグセーブで流れを引き寄せる。

 対するヴェルディの攻撃。こちらも前回対戦同様に2DH田口と見木の周りを上手く使っていく。ロングボールを染野と山田に当てて前線で起点を作る。二人は上背はそこまでないがジャンプするタイミングと跳躍力で空中戦を制し、CBDH間で上手くボールを収め期待に応える。

 ヴェルディはロングボールとサイド攻撃を組み合わせ、外外から攻め込むことや片方に選手を寄せて対角でフリーの選手を作り大きく展開して一気に仕掛ける。

 また鈴木と佐々木(前回はメンデス)の2CBは相手に喰いつき気味でスペースを空ける守り方をするので、ヴェルディのファーストシュートとなった場面に見られるように山田が鈴木の背後を取るように斜めの動き出しから抜け出してPA内でシュートを放つ。これでスタジアムの雰囲気、試合のテンポが変わったように感じ取った。

 28分、千葉がゴール正面でFKを獲得。キッカーは田口。5年前の磐田との参入PO決定戦を重ね合わせてしまった場面であったがここも凌ぐ。

 試合を動かしたのは押され気味だったヴェルディだった。中央で山田がポストになると右へ展開。中原がゴール方向へ仕掛けるも中を固められ、そのまま左へ。細かなパス交換に齋藤、晃樹、染野が関与すると流れの中で左に居た中原にボールが。シーズン終盤から絶好調の男の左足から先制点が生まれ大きな大きな得点が生まれる。身体のキレ、思いっきりの良さと調子の良さがよくわかるパフォーマンスはPO決勝のキーマンになることも間違いない。

 先制点を挙げたヴェルディ、スタジアムの熱狂もあり主導権を握ると試合を落ち着かせながら時計の針を進めて行く。すると前半終了間際の44分に再び得点が入る。ビルドアップの形から見木が斜めを開きボールを貰おうとすると中原が奪取し、染野へ。染野は左の齋藤へ繋ぐと齋藤は時間を作り、仲間がゴール前へ上がる。高橋との1対1からクロスを上げると最後は走り込んだ森田晃樹が頭で合わせて追加点。大事な試合で1得点1アシストの活躍を魅せた晃樹はボックストゥボックスの選手として試合を重ねるごとに成長を遂げ主将として数字でもチームを牽引した。

 引き分け以上で勝ち抜けとなるヴェルディが2点リードで前半を折り返す。

後半

 ハーフタイム明けヴェルディはメンバー交代無し。勝ち抜くには3点が必要な千葉は呉屋に代えて小森を投入。大量得点が必要な状況だが、FW2枚並べるのではなくてFW同士の交代なんだと言うのが率直な感想だ。2列目の攻撃を活かすこと選択した。

 佐々木からの鋭い縦パス、前半以上に横幅を使ったサイド攻撃、田中のロングスローと手を変え品を変え反撃に出る。51分、左サイドからのCK、ニアでそらしたボールを宮原がゴールライン上ギリギリでクリア。ここ一番で違いを魅せる宮原はとても頼もしい存在だった。

 千葉はドゥドゥ、風間に代えて米倉と福満を投入。米倉が右SHに入り田中は左SHに回る。福満はトップ下にそのまま入った。ヴェルディは山田と齋藤に代えて綱島悠斗と加藤蓮を投入。悠斗は大宮戦に続いて最前線に入った。横幅を使いヴェルディのSBCB間を広げるが、DH稲見と森田晃樹は中盤で身体を張ったボール奪取に加えてCB横に下りて最終ラインのスペースを埋めて献身的な守備を見せてサイド攻撃に対しても中を固めて決定機は作らせなかった。
 攻撃では綱島悠斗が最前線でサイズを活かしたダイナミックなプレーで起点となり、左SHに入った加藤蓮は右の中原に負けじと単騎突破を何度も試みてサイド攻撃で盛り返した。

 千葉がゴール前まで迫るも決定機には至らず、ヴェルディ2点リードのまま時間ばかりが過ぎて行く。このままかと思った78分、ヴェルディのビルドアップから左サイドに展開したところでかっさられて、ショートカウンターから最後は小森が最後は仕留める。マテウスはタイミングずらされてボールに触れるも防げず。1点差になる。

 黄色のサポーターの熱狂がスタジアムを包む。前回対戦と逆の展開に”まさか”と脳裏をよぎる。1点差になり千葉の攻撃圧に押されたヴェルディは逃げ切りに入り、81分平をSBへ投入し高さを加え守備固める。緊張感があるから日高や林が足釣ってる場面があった。林に代えてクローザー奈良輪を左SHへ投入し加藤蓮をWB、平をCB、最前列に居た悠斗も最終ラインに入れて5バックにして1541へシステム変更。前線からも最後までプレッシングを怠らず1点差を守り切ったヴェルディが見事に昇格PO決勝戦へ進出した。

まとめ

 結果がすべての一発勝負でありながらお互いに自分たちのサッカーを貫いた試合だった。相手をよく分析し、組織的に戦った試合は決定機をモノにしたヴェルディの勝利。リトリートした引き分け狙いでは無くて前線からの守備、志向するサッカーで得点を奪いに行って勝ったあたりは今季の成熟度の高さがあった。 
 球際、靴一足分の寄せと勝利への執念を選手たちから感じ、勇敢で逞しく見えた。決勝戦は今季シーズンダブルを喰らった清水。リベンジを果たし、16季ぶりのJ1へ舞台は整った。