課長への手紙 #10

(#9から続く)

課長とお別れして半年が過ぎました。

自分自身に訊ねます。月日は何をどう変えたか。傷は癒えたか。苦しみは和らいだか。悲しみや痛み、不安から解放され新たな希望を見出すことは出来ただろうか。

時が過ぎ、今や課長がどこでどうしているかさえ想像出来ません。

分かりすぎるほど分かっていたことです。課長は過去にしか存在しない。100%思い出の人です。そして、あと半年もすればその思い出も二周目に突入します。

ですから今は、今だけは、今だからこそ、一周目の思い出を愛でることにします。

去年の今頃は——私たちの距離はまださほど縮まってはいませんでした。ふたりの間には、よそよそしさの風がそよそよと吹いていました。

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