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映画の感想

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映画とかドラマの感想とか。
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記事一覧

「水深ゼロメールから」(2024)

「天然コケッコー」「リンダリンダリンダ」の山下敦弘監督作品。高校演劇が原作。 主題歌のadieuコラボも嬉しい。 真夏の水の無いプールは"青春"だと思う。ほぼ全編、プールでの女子高生の会話だけという、まあ地味と言えば地味な、でもじぶん好みの青春邦画です。 ラストの、決意を秘めた子の眼差しが良いです。

「ゴジラ-1.0/C」(2023)

配信に来てたのでモノクロ版を。 「浜辺美波は小津映画の女優さんを思わせる」って友人に話して笑われましたが、こないだ佐野史郎が同じことを言ってててちょっと嬉しかった。この映画のモノクロの浜辺美波は現代的な顔立ちなのに不思議に昭和の風情があります。サザエさんヘアーもよく似合う。 「シン・ゴジラ」が「組織vsゴジラの物語」ならこの映画は「個人vsゴジラの物語」と見立てられる気がします。神木隆之介演じる臆病な特攻隊員がゴジラと向き合うことで、自分の「戦争」を終わらせるお話。 「生き

「霊験お初 〜震える岩〜」(2024)

宮部みゆき原作のホラー風味時代劇ミステリ。上白石萌音ちゃん主演。 萌音ちゃん日本髪が似合う。熱演の「怪談牡丹燈籠」は焦がれ死んで幽霊になる武家のお姫様、「中村仲蔵出世の階段」はきっぷの良い三味線のお師匠さんでしたが、今回は聡明な町娘。ちょっと頼りなげな同心見習いとの「バディ物」、ちょっと天然な同心を叱る元気のいい娘は高畑充希と星野源の「引っ越し大名」を思わせるコミカルさが楽しいですが、そこは宮部みゆき、100年前野赤穂浪士討ち入りの悲劇から始まる、幽霊の物悲しさ。

「生きとし生けるもの」(2024)

渡辺謙、妻夫木聡、原田知世。余命三ヶ月を宣告された男。彼に寄り添おうとする若い医師。自分もこれが他人事ではなくなる年になりました。初恋の人への切ない想いをバックに描く人生最後の時間。

「張込み」(1958)

「高峰秀子生誕100年展」にいってきたのでDVDを。松本清張原作、野村芳太郎監督作品。音楽は黛敏郎。 東京の質屋殺人事件の犯人を追い、そのもと情婦で今は佐賀に住む主婦を張り込む刑事。この映画の高峰秀子はほとんど笑顔を見せない儚い女性。若い刑事は最初は捜査対象にすぎなかったその女にだんだん心を寄せていく。犯人の男(田村高廣!)と話すときの無邪気な笑顔がせつない。 この映画は当時の鉄道旅行の記録映画の趣も。ブルートレイン登場まえ、冷房のないすし詰めの夜行列車。 なんといっても

「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」(2024)

ときは昭和31年。鬼太郎誕生の哀しい物語。『ゲゲゲの鬼太郎」の現代的再解釈。「犬神家の一族」の舞台を借り、登場する最強の妖怪は京極夏彦の小説にも登場した「狂骨」。東京から会社の密命を帯びて因習の村を訪れる水木をとおして、戦時の悪夢や経済成長、そして現代の世相への皮肉も。なかなかの傑作だと思った。 少しだけ登場する猫娘、子供の頃に見たゲゲゲの鬼太郎とは違って今どきのアニメ風ですが、個人的には田中麗奈の実写版猫娘が好きです

「オッペンハイマー」(2024)

やっと見れました。3時間の大作ですが時間を感じさせない密度。 「原爆の父」オッペンハイマーのお話ですが、物理を学んだ人には馴染み深い、ボーア、ハイデルベルグ、ファインマン、そしてアインシュタインといった人々が登場します。時間軸が異なるシーンがつなぎ合わされていく映画なので少し迷子になりそうになりますが、3時間でも中だるみのない緊張感は凄い、色んな意味でハードな映画。ラストの40分はオッペンハイマーと政治家ストロースのいわば法廷の戦いになってこれはこれで大変おもしろいのですが、

「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」(2023)

伊藤沙莉。新宿歌舞伎町の場末のパブのバーテンマリコ。実は探偵業。 怪しい外人(FBI)からの依頼は「歌舞伎町で行方不明になった’宇宙人を探すこと」ビンボー忍者?の竹野内豊。 なにかのストーリーがある感じではなく、歌舞伎町に生息するいろんな人間模様のコラージュのようでそれがいいです。

オフビートの魔法 〜フリーレンと志摩リン〜

 一昨年ドラマからハマってキャンプまではじめた「ゆるキャン△」、そして今年の「葬送のフリーレン」。 かたやタイトルそのままの女子高生のゆる~いアウトドアライフ、もうひとつは剣と魔法のドラクエ世界。ぜんぜん違うけど共通するところがあって、そこに惹かれたのも一つのような気がしました。 主人公のリンちゃんとフリーレン、ふたりとも最初はちょっとクールに見えて、決して人嫌いとかでは無いけれど他人にあんまり興味がない。でも仲間と過ごすうちに今まで自分が気づかなかった楽しさに気づいていく、

「シャーロック・ホームズ 忌まわしき花嫁」

ベネディクト・カンバーバッチのホームズ。 「SHARLOCK」のキャストで19世紀に舞台を移したお話と思いきや、現代と行き来する意外なストーリー。心霊現象と思わせる事件にきっちり事実の結論をつけていくあたりはホームズらしい。

「夜明けのすべて」(2024)

松村北斗、上白石萌音。萌音ちゃんの今年の新作、『カムカム』の稔さんと安子の再共演でもあります。 地味かなと思ってはいたのですが、「『トットちゃん』と並んで前評判はそれほどではないけれど見た人が激賞する映画」という評があったので。 たしかに地味な邦画ですが、すうっと心に染み込んでいく良い映画でした。 PMS(月経前症候群)とパニック障害。他人には理解されにくい生きづらさを抱えるふたりが、すこしずつ、すこしずつ心を寄せていく物語。 ドラマというほどのドラマもなく、ラブストーリーで

「身代わり忠臣蔵」(2023)

ムロツヨシ、永山瑛太、川口春奈。楽しいコメディ時代劇。 乞食坊主同然だった吉良上野介の弟、松の廊下の刀傷が元で死んでしまった上野介の身代わりに。ロボジーなんかもそうですがこういう「バレたらどうする?」系コメディはハラハラしながら笑うのが楽しい。テンポもよいです。川口春奈可愛い。 それにしてもムロツヨシ、いい声してます。

「復讐の女神」

アガサ・クリスティの ”Nemesys"。ミス・マープルは人気で何度も映像化されていますが、BBCのジェーン・ヒクソン版が好きです。 著名な大富豪は死の直前、真実を明かす依頼をミス・マープルに託します。 一見やさしい田舎のおばあちゃんのミス・マープルの凄みがよく出ている一作。

「窓際のトットちゃん」(2023)

原作はもちろんお馴染みだし可愛らしい絵柄で冬休みの子供向け映画とおもってたのですが、Twitterで激賞されてたので見てみました。 子供向けだけにしておくのはもったいない、良い映画です。前半は「この世界の片隅に」のそれとも似て、ちょっと変わったトットちゃんの日常がコミカルに描かれますが、同級生のやすあきちゃんとの優しいやりとりと、戦争の影が差してくる後半が切なくなります。新海誠や細谷守の映画とは違う、昭和の絵本の挿絵のようなタッチもよいです。