マック技報Talk_006 〜CSTRによる連続接触水素化(水添)反応・進化継続中〜
マックエンジニアリング株式会社・技報担当
《マイクロリアクター専用ウェブサイト》
密閉型マイクロスケールCSTR®を活用した連続フロー合成(ラボスケール)の実施例です。先のマック技報Talk_003にてお伝えしましたが、このリアクターをより良く活用して頂くために、その後も実験操作・手順の検討を継続し進化させています。現在もその途中ですが、興味深い結果が得られましたので、速報ベースでお伝えします。
1.はじめに
繰り返しになりますが、今回の内容は「密閉型マイクロスケールCSTR®を活用した連続接触水素化反応の実施例」のひとつです。
先のマック技報Talk_003の実施例には、このリアクターをより良く活用して頂くための課題2点が残されていました。
課題1:Pd/Cスラリー注入ポンプを市販品から選定すること。
課題2:水素圧力を0.15MPa(ゲージ圧)以上に上げられるシステム構成を考案すること。
【注】(ゲージ圧)=(絶対圧)ー(大気圧)
これら2点の課題解決を目指し、その後も実験操作・手順の検討を継続して行っています。現時点では(検討すべき事項が残されていますので)完全なる課題解決という状況にはありませんが、興味深い結果が得られましたので、誤解を恐れずお伝えします。
2.連続接触水素化反応
2-1. 概略
(リアクターや操作等を評価するための)具体的なモデル反応は、今回も1-tert-ブチル-4-ニトロベンゼン(BNB)からの4-tert-ブチルアニリン(BAN)の合成です。
これまでと同様に、触媒にはパラジウム炭素(Pd/C)、溶媒にはエタノール(EtOH)を用いましたが、室温(実験時25℃程度)、水素圧0.50MPa(ゲージ圧)、滞留時間(反応時間)18分で行いました。
2-2. 実施例
2-2-1. 装置
2-2-1-1. 主な装置・器具・部品
先のマック技報Talk_003と異なり、全ての装置・器具・部品が市販品であり、これらを組み合わせたもので実験を行いました。主なものは以下のとおりです。
・密閉型マイクロスケールCSTR®(反応槽数:4) 1セット
※CSTR本体材質:SUS316L ※液張り量:約18mL(4槽合計)
・(ホット)スターラー 2セット(含:温度センサー)
・セラミックポンプ 1セット ←今回の変更点
・PTFE三方コック ←今回の変更点
2-2-1-2. セラミックポンプを使ったスラリー注入
マック技報Talk_003で使った「DIYシリンジ内撹拌装置」付のシリンジポンプに替え、今回はセラミックポンプを使ってスラリー(水素ガス以外の原料を含むPd/Cスラリー)を水素圧0.50MPa(ゲージ圧)に加圧された密閉型マイクロスケールCSTR®への注入を試みたところ、注入できることを確認しました。ただし、耐久性や汎用性については、未確認です。
2-2-2. 試薬調整
この実験では「水素ガス以外の原料をあらかじめ混合(分散)し、密閉型マイクロスケールCSTR®へ“分散状態を保ちながら”セラミックポンプ1台で注入する」想定で試薬を調整しました。
【原料液内訳】
・1-tert-ブチル-4-ニトロベンゼン(BNB) 20mmol
・10%パラジウム炭素(Pd/C) Pdとして、0.2mmol
BNB:Pd=100:1(モル比)
・ジフェニルエーテル(DPE) 10mmol
・エタノール 40mL
2-2-3. 実験
反応条件としては、次のとおりです。
・温度:室温(実験時25℃程度)
・水素圧:0.50MPa(ゲージ圧)
・原料スラリー流量:1mL/min
・滞留時間(反応時間):18min ※リアクター液張り量:18mL
その後、受器から反応液をサンプリングし、シリンジフィルターを使ってPd/Cを濾過した後、TLC分析を行いました。
2-2-4. 結果
2-2-4-1. TLC分析
S: 出発物質(原料液)、C: SとRの重ね打ち、R: 反応混合物
TLCプレート:メルク社・シリカゲル60F254
展開液:トルエン
検出:UV(254nm)
内部標準DPE(Rf=0.9付近)
原料BNB(Rf=0.8付近)
目的物BAN(Rf=0.25付近)
2-2-4-2. 課題解決に向けて
前掲の課題2点については、セラミックポンプの耐久性や汎用性など検討すべき点も残されているとは言うものの、下記のとおり、解決に近付いていると考えています。
課題1:Pd/Cスラリー注入ポンプを市販品から選定すること。
⇒ セラミックポンプを選定・活用すれば、「少なくとも、モデル反応では良い結果が得られる」ことが分かった。
課題2:水素圧力を0.15MPa(ゲージ圧)以上に上げられるシステム構成を考案すること。
⇒ 水素圧力を0.50MPa(ゲージ圧)まで上げられるシステム構成を考案できた。
3.おわりに
今回は、継続して行っている検討の途中経過を速報ベースでお伝えしました。今後も「途中経過であっても興味深い実験結果だった」ならば、誤解を恐れずタイムリーに情報発信したいと思います。
今回はこれまで。最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。
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