「いくよ、フィナーレへ」セクサリス・サーガ完結記念、少女病特集vol. 4(メジャーデビュー直後編)
はじめに
2009年、少女病はランティスよりメジャーデビューを果たした。今回はメジャーデビュー直後の作品3作品を紹介する。
・蒼白シスフェリア
魔女の物語、堂々開幕。
メジャーデビュー1作目のシングル。アップテンポ×2の締めがバラードの通常構成。メジャーデビューに伴いネックだった音質が改善され、セリフがバッチリ聞こえる。
1曲目「瓦礫の終音」はメジャーデビューの自己紹介としては充分な威力。魔女周りの設定も端的に纏めており秀作。演技周りの強化著しく、終盤の叫びは必聴。
2曲目「lunatic…」は表題歌詞の差し込み方がすごくキャッチーで中毒性が高い。物語自体はいつにも増して重めのはずだが、表題歌詞のおかげでかなり曲感は軽い。
少女病では珍しい男性CVによる語りから始まる3曲目「Celestial blue」は7分超の大作失恋ソングである。一切の裏切りのない透明感溢れる曲調と素晴らしい演技で隙がない。
魔女の物語に対しての最適な導入としては後に紹介する残響レギオンに一歩譲るものの、あらゆる意味で手軽な作品であり、物語音楽初心者にもオススメできる。
・慟哭ルクセイン
同人3枚目のシングル。ここからの作品で高い頻度で登場するルクスの初出作品。物語性に重心を置くために語り・セリフがいつも以上に多様されており、他のシングルと一線を画す。
シングルでありながらも、7分6分8分の3曲で構成されており、本格派の物語音楽となっている。
1曲目「虚空に消えるFairy tale」はラストの大サビが見事に決まっており、2曲目「Innocent Sin」の語りへと繋げている。
3曲目「分かたれたセカイ」は歌いながら自然に語るという少女病の基本姿勢が前面に押しだされた曲になる。シングルの物語音楽の締めとしては模範的だ。
沢城みゆきをCV&語りでフル活用しているが、名演が光る。声質が全く違うのに雰囲気合わせてくるボーカルもボーカルではある。
テーマ・作風は違うが前作の「蒼白シスフェリア」と構成が似ている。この頃になるとシングルの構成自体は完全に確立された印象。物語音楽としての確度は高いのでローランにはオススメできる。
・告解エピグラム
同人4枚目のアルバム。様々な物語を提示するという作品設定上、サンホラ(moira除く)のようなオムニバス形式を取っている。
1曲目2曲目がどちらもアップテンポで、1曲目で作品設定の提示、2曲目から本格始動する流れは他アルバムと変わらない。問題は3曲目だ。
3曲目「Double Cast」、なんと11分23秒という超大作になる。語りや演技、間奏が長くなりがちな物語音楽界隈は、基本的に1曲が長くなりがちではあるが、物語音楽界隈でこの長さ以上の曲となるとサンホラの「Interview with Noel」、cosMo@暴走Pの「AI少女と深層心海」ぐらいしかない。
それらの大作曲が、音楽的な場面転換を複数回用い、クラシック音楽における楽章に分かれたような構成をしているのに対して、「Double Cast」は一貫した物語・音楽で構築された1つの音楽となっている。音楽・物語的な起承転結がしっかりしており、特に終盤のツインボーカル部分は必聴。
7曲目「錆びない言葉と錆びない指輪」は物語的には起承転結の転にしてネタばらしになる。今後の少女病のアルバムにおいての「転」曲の基準となる曲。
8曲目「セカイの調律した祈り」は世界で2番目にかっこいい自○誘導ソングとなっている、1番目である「Aingeal」と違って言葉で殴ってくるので攻撃力が高い。
10曲目「fine」は少女病では数少ないTrueエンド曲になる。前述の「蒼穹に向けた透明な弾丸」とは180度違ったポジティブな救いの曲だ。良い意味でギャルゲーのTrueエンド感があり、そこにいつもの強強バックサウンドが乗るので非常に強力な締め曲になっている。
少女病のアルバムの中ではストリングスに重きを置いた作品となっている。攻める部分では当然いつも通り攻めているが、クラシックの文脈にある程度乗っている。丹下桜ボイスも作品の雰囲気にマッチしており均整のとれた作品だ。