ケプラー1649

ケプラー1649
第一話

 漆黒の闇を光の帯が、真っ二つに切り裂いていた。光の帯は永遠に続くハイウェイのライトの光だ。
遠く彼方に小さく半円状のドームがほんのりオレンジ色の光を放っていた。
　
人類が火星に移住して100年、火星には、7つのドームが建造されていて、一つ一つのドームには、約100万人が、居住していた。
　
当初は、火星の北極に眠る氷の層に核爆弾を落とし、大量の二酸化炭素を発生させ、火星を雲で覆い尽くし、雨を降らせ、海を作ると言う、火星テラフォーミング計画が、まことしやかに信じられていた。しかし、現実は、100年経っても火星には、海はもちろん、湖も池も無い荒れ果てた茶色の土壌に覆われたままだった。

「独り言？」
「独り言じゃない」
「独り言じゃない？」
「お祈りをしてるんだ！」

ハイウェイを、走る反重力車の中での会話
　
祈りをしていると言う男の名前は、加藤と言った。彼の手の甲には、十字架のタトゥーが、そして腕にも何やらヘブライ語の文字が刻まれていた。
それは、自分の名前「加藤」をヘブライ語に変換した物だった。

加藤に話しかけているのは、アンドロイドで名前をジェイと言った。ジェイは、長い髪と青い目をしていた。
　
ジェイが続けた。
　
「誰に祈ってるの？」
「神様に祈ってるんだ」
「神様？」
「そう、人間を作った神様！」
「人間を作った？」
　
ジェイは、アンドロイドと言っても全く人間とは、変わりがなかった。誰が見ても20歳代の若い女性にしか見えなかった。この時代、既に人類は、全ての臓器を作り出す技術を確立していた。

「まだ、神様を信じているんですね？」とジェイ
　加藤が答える「俺は信じてる」

この時代は、既に宗教が失われていた。
人類が、人間を創造してしまった事もその理由の一つであったが、レピタリアンと自らを称する爬虫類型の異星人の出現が大きかった。

彼らレピタリアンは、神の存在を否定したからだった。
加藤が続けた。
「あのレピ( 加藤は、いつもこうレピタリアンを呼んだ)は、聖書で、サタンと呼ばれる者なんだ。人類はら彼らに完全に洗脳され、奴隷となってしまったんだ。」

「レピが、サタン？」
ジェイの人工脳には、宗教的な知識は、あえて移植されていなかった。
　
　西暦2200年の火星には、地球から移住してきた人類が、約700万人住んでいた。地球は、レピタリアンと呼ばれる爬虫類型人間との長年の戦いで荒廃してしまい。人類の人口も5億人までに減少してしまい。
　レピタリアン約1億人に隷属していた。

　反重力車は、漆喰の闇をオレンジ色の光を放つドームに向かっていた。

　第二話

ドームの入り口が開き反重力車は、ドームの中に吸い込まれていく。100万人が住むドームの中は、無味乾燥の外界とは、別世界だ。
ドームの内部は、球体になっていて、球体の内面に街が作られていた。森や海や山もありちょうど地球の表面を球体の内面に貼り付けた様に見えた。
　ハイウェイは、その球体の構造物の中心を貫いていた。
「いつ来ても奇妙な感覚になるなぁ」
　と加藤がつぶやく。
「私はこの世界しか知らないので、奇妙とは、思わないけど」とジェイが答える。
　ジェイは、目を細め車の窓から外の世界を確かめるように見渡している。
「あそこ！すごい数の鳥！」
　加藤は、ジェイが、指差す方向に目をやる、、、
　V字編隊を組んで数えきれないほどの鳥が、反重力車と並行して飛んでいた。並行していると言っても車窓から見える景色は、ちょうど真上から鳥の編隊を見下ろす角度で見えているのだが、、、
　
「そうそう、加藤は、さっき何をお祈りしてたの？」
「うん、いつもの様に、レピの奴らを追い払って、もう一度地球に平和の世界が来ますようにって
　祈ってた、、」
加藤は、ジェイの青い瞳をじっと見つめてそう言った。
「叶うと良いですね、、、」ジェイが微笑む、、、
「そうだね、きっと人類は、この難局を超える事が出来ると信じてる。」
　
「その解決策が、ケプラー1649なんですね？」
「そう信じてる。」

　第三話

反重力車は、静かにハイウェイを外れ、下降していった。
「あれが、その研究所ですね？」とジェイが加藤に尋ねる。
「あぁそうだ、、、ダークエネルギー研究所！」
「ケプラー1649から送信されてきた技術ですね、、」
「我々の科学技術では、とうてい理解出来ない技術だ！」
「謎の技術ですね？」
「そう、人類の未来は、ケプラー1649の科学技術にかかっている」
反重力車は、研究所の前に着陸した。
研究所は、窓もないコンクリートの固まりの様な建物だった。扉は、どこにも見当たらなかったが、
　二人が、建物の前に立つと正面の壁一面が、音もなくせりあがった。
「びっくり」ジェイは、子供の様に驚いていた。
二人は、コンクリートの固まりの様な建物に足を踏み入れる、、、とても狭い空間、窓も何もない空間
すると、その空間自体が、音もなく上昇する、
そして、今度は、二人の背面のコンクリートの壁が
音もなく開いた。そこには、反対側が見えない位の広大な研究施設があった。
「ワオ！」何故か今度は、英語で驚くジェイ！
　その時、スピーカーから、女性の声が流れた。
「こんにちは。加藤さん、ジェイさん　お待ちしていました。」

　第四話

「はじめまして、四ノ宮と申します。」
二人の前に現れた、その女性は、いかにも研究者と言う白衣を着ていたが、どう見ても未成年にしか見えなかった。
「こちらへどうぞ、、、」
二人は、彼女に案内され、ガラス張りの部屋に通された。その部屋の真ん中には、何やら見たことのない機械が、鎮座していた。その機械は、まるで生きている様だった。そう、呼吸をする様にシューシューと音を立てていた。
「何なんですか？この機械？」ジェイは、不思議そうに顔を近づけた。
「それが、ダークエネルギーを利用した宇宙船のエンジンのコアになる部分なんです。」
「ダークエネルギーは、宇宙の膨張エネルギーだと聞いてますが、本当にそんなエネルギーを利用する事が、可能なんですか？」加藤が尋ねる。
「可能です、、、いえ、これまでは、私たちも全くその可能性を見出す事は、できなかったのですが、、、」
「それが、ケプラー1649から送信されて来た？」
「そうです。ケプラー1649は、約300光年離れた星でかなり以前から地球に非常によく似た星と言われていました。そして、ケプラー1649の科学技術は、私たちの何百年も先に行っているのは、間違いないでしょう。」
「で、そのコアを使った宇宙船は、いつ完成するのですか？」加藤が続けて尋ねる。
「宇宙船は、もう完成してるんです。このコアを装着すれば、光の数万倍の速度を出す事が可能です。
ケプラー1649までほんの数日で到着できる計算です。ただ、、、」
「ただ？」ジェイが首を傾げる。
「ただ、送られて来たのは、ダークエネルギーの利用方法だけで、生身の人間は、超光速に1秒も耐えらる事は、出来ないんです。」
「ケプラー1649の人々は、我々人類とは全く違う体を持ってると言う事ですかね？」
「それは、わからないですが、加藤さん、あなたをお呼びした訳は、そこにあるんです。」
「訳？、、、」
「実は、、、」

第五話

「実は、加藤さんに重大なご決断をお願いしなくてはいけません。」
「重大な決断？」
「はい、そうです。」
「そのご説明の前に、私自身の話をさせてください。」
「はぁ、、お願いします。」と加藤、、、
「加藤さんは、初めて私と出会った時、明らかに何だ、未成年じゃないか？っと感じたのではないでしょうか？」
「いえ、まぁ、、そうかもです。」
「私は、多分あなた方より年上ですよ」
「体を入れ替えた？」ジェイが、思わずつぶやく、、
「その通り、人類は、その技術を確立しています。」
「、、、で私にどうしろと？」加藤は、四ノ宮の意図がわからなかった。
「加藤さんの脳だけを超音速に耐えられる身体に移植するのです。」
「勘弁してくださいよ！俺は、アンドロイドになんかなりたくないですよ！」加藤は、顔を真っ赤ににして叫ぶ、、、
「安心してください。この任務が終わればもちろん元の身体に戻れます。ほんの、少しの辛抱です。」
「任務とは？」ジェイは、冷静だった。
「ケプラー1649の人々は、このコアエンジンの情報に加えて、ダークエネルギーを利用して、過去レピタリアンの種族から自らの星を守った歴史があると言う事も伝えて来てくれたのです。」
　
「えっ！彼らもレピと戦ったんですか？で、、
　その、技術を入手するために、ケプラー1649に行かなくてはいけない、、、と言う事ですね？」
「そう、加藤さんのおっしゃる通りです。」
「なんか、面倒ですよね？何故、このコアエンジンの技術だけ、先に教えて、そのレピタリアンを撃退した技術は、教えてくれなかったんですかね？」
「それは、簡単な事ですよ。彼らは、自らを守る為に、その技術は、我々、人類を見定めてから教えるつもりなんでしょう！」
「つまり、我々人類は、信用されてない？」
「そう言う事でしょうね」
　四ノ宮が、静かに答えた。

　第六話
　
「先輩！火星からケプラー1649に宇宙船が、出発したって話を聞いたんですが、本当ですか？」
「ケイコ君！声が大きいよ！」先輩と呼ばれた彼はくちびるに人差し指を押し当て、声を立てない様に指示する仕草をする。
彼は、このレピタリアンの軍事施設の研究室で、働く数少ない人間で、名前を田島と言った。
　田島は、答える、、、
「そう、ケプラー1649から未知の技術を得て、宇宙船を完成させ、昨日ケプラー1649に出発したらしい。」
　
その時、二人のいる部屋のドアが開き、入って来たのは白い研究衣に身を包んだレピタリアンの女性だった。「情報が早いわね、、」彼女は、この研究室の室長のケリーだった。金髪で人間を装っている様に見えるが、肌には、うっすらとウロコが見えて、瞳孔は、縦に割れていた。そして、舌も２つに分かれていた。
ケリーが続ける、、、
「もう、既にその宇宙船のケプラー1949行きを阻止する作戦の実行に取りかかっているらしいわよ」
　
地球を実質支配しているレピタリアンの中にも人類と平和に共存すべきと主張するレピタリアンも少数ながら存在し、ケリーは、その共存派だった。
　
　レピタリアン種族と人類の関係は、太古の昔に遡る。かっては平和に共存していた時代もあったが、何かのきっかけで、両者の間に戦いが始まり、レピタリアン種族は、その、人類との戦いにやぶれ、地底空間に追いやられてしまったのだった。
　
　彼らは、それ以降、人類に対して一矢を報える事だけに集中し、地上に出るチャンスを伺っていたのだ、そして、今や人類は、レピタリアン種族の支配下に、、、

第七話

「加藤、、、何かおかしい」ジェイがつぶやく
「確かに、宇宙船が急に重くなった感じがさっきからしている」
レピタリアンは、ワームホールを利用して時空間移動する技術を持っており、加藤達が乗る宇宙船の前にワームホールを設定していたのだった。
　すなわち、地球の上空宇宙にワームホールの出口を設置し、入り口の目標を加藤達の乗る宇宙船の前に設置したのだった、
「ワームホール？」加藤がつぶやいたその瞬間、、
彼らの宇宙船は、ワームホールに吸い込まれた。
　次の瞬間、宇宙船は、地球の上空に、、、
さらに、息を飲むまもなく彼らは、レピタリアンの軍事施設に転送される。
一瞬の出来事だった。レピタリアンの科学技術は、
計り知れないものがあった。
加藤とジェイの前には、複数のレピタリアンが
立ち並ぶ、、5人？6人？人では無いのでどういう風に数えるのが正解か？加藤にはわからなかったが、
彼らが、軍人である事は、加藤達にも分かった。
そして、レピタリアンのリーダーと思われる一番背の高いレピタリアンが口を開く、、身長は、人間よりもはるかに高い、、
「私の名前は、ライム、この施設の最高責任者です。あなた達を歓迎します。」
「歓迎？俺たちをどうするつもりだ？！」

　第8話
　
「あなた達に危害を加えるつもりありません。ただ私たちの平和を守るためにあなた達をケプラー1649に行かせる訳には行かないのです。私たちは、人類とのこの平和な関係を壊したくないのです。」
「平和？人類は、レピタリアンに自由を奪われているじゃないか？！」
「私たちは、決して人類の自由を奪ってはいません。それは、あなたの誤解です。」
「誤解？事実人類は、レピタリアンに侵略されレピタリアンの支配下に置かれているのが、現実じゃないか？」
「侵略？最初に私たちを侵略したのは、あなた達、人類じゃないですか？私たちは、平和をいつも平和を望んでいるのです。」
「とても、俺には理解出来ない。」
彼は最愛の妻を先の戦争で無くしており、レピタリアンを許す事は、到底出来なかった。
「あなたの意見は、尊重しますよ。ただ、私達も、過去に人類に辛い思いを強いられた経験もあり、簡単にあなたを自由にする事は、出来きません。申し訳ない。」
そう言うと、レピタリアンのリーダーは、部下に合図をし、加藤とジェイを軍の隔離施設に連行させた。
　
第9話
　
「ケプラー1649に向かっていた例の宇宙船の乗員が、この施設の隔離施設に捉えられたそうよ」
「えっ！ついこの間、出発したばかりなのに！」
ケイコは、ケリーの突然の話に驚きを隠せなかった。
「ワームホールの技術を使ったみたい。私もその技術を軍が、開発したと言う噂は聞いていたけど、驚いたわ、、、」 
「彼らはどうなるんですか？」と田島がケリーに尋ねる。
「それは、私にも分からないけど、もう火星には戻れないでしょうね！レピタリアンの私たちは、火星に移住した人々の自由は、尊重しているの、ただ、、」ケリーは、言葉につまる。
　
「ただ？」それを促す田島、、、
「ただ、私たち達も一枚岩じゃないので、火星に移住した人々を危険分子と見ているグループもあるのは、確かなの、、、」
「現実に、レピタリアンに反撃を計画したのが、捉えられた彼らが、危険分子なのは、間違いないですね？」とケイコ、、
「そう、その通りなの、、、彼らは処刑されるんじゃないかしら、、、とても心配、、、」
　
第10話
加藤とジェイの尋問が、始まった。
「加藤さん、あなたの事について教えてください。あなたは、私たちレプタリアン種族にとても反感を持っておられるようですが、それは、なぜですか？」
尋問をしているのは、 ライムと名乗ったレプタリアンのリーダーだった。
「反感を持ってる？当たり前じゃないか」
「人類は、君たちレプタリアンに支配されているじゃないか？」
「支配？私たちは、あなた達にテクノロジーを授け、過去とは比較にならない生活を送れるようにしているだけで、支配しているのでは、ないですよ」
「そんなテクノロジーをくれとは誰も言ってない！それは、詭弁だ！」
「私たちはとても平和を愛しています。人類との共存共栄を望んでいるのです。」
「この地球は、人類のものだった。それを君たちが力で奪ったんじゃないか！」
「それは、とんでもない誤解ですよ、我々が、先にこの、あなた達が、地球と呼ぶこの星に住んでいたんですよ」
「そんなのは、作り話だ、、、つくり、」
「どうしたの？加藤、、、」ジェイが加藤の肩に手をかけ心配そうに顔を覗き込んた。加藤は、目を開けたまま、固まっていた。完全に意識は無かった。
「何をしたんだ！」ジェイの戦闘モードにスイッチが入り、男言葉で、ジェイが叫んだ。

第11話
「ケイコ君、宇宙船の乗組員の2人を救出するのに
　手を貸してくれないか？」
「えっ私がですか？」
「実は、火星のレジスタンスグループから極秘の連絡が、あったんだ。」
「レジスタンス？って」ケイコは、突然の田島の話に全くついていけなかった。
「地球からレプタリアンを追放しようとしているグループなんだ！」
「田島さんも、そのレジスタンスのメンバーだったんですね？」
静かにうなずく田島、、、
「どうやって追放するんですか？もう、人類は完膚なきまでに負けてしまったじゃないですか？」
「いや、彼らレプタリアンを完膚なきまでに最初に打ち負かしたのは、人類だったんだ！」
「えっ？どういう事ですか？」
「それが、ケプラー1649に住む、我々の祖先なんだ！」
「ケプラーに住んでいるのは、人間なんですか？」
「そうなんだ」
「それなら、何故、地球の人類を助けに来てくれないんですか？」
「それは、とても説明が難しいんだよ」
「と、言いますと？」
「実は、レプタリアンとの戦いは、2回あったんだ。」
「2回？」
「そう、1回目は、人類が勝利してレプタリアンを地球の地下深くに追いやったんだ、しかし、その後に人類同士の大きな戦争があって、大規模な核戦争に発展、地球上には、ほぼ住めなくなってしまい、人類は、ケプラー1649に移住をしたんだ。」
「そして、残された人類は、ほぼ科学技術を失い、レプタリアンの支配下に甘んじる事になった。」
「それが、私たちの直接の祖先なんですね？」
「そうなんだ、それでも一部の人類がレプタリアンに反旗を翻し戦争を始めた。」
「しかし、その戦争では、人類は敗北してしまったという事ですね？」
「そうなんだ、それで、反旗を翻した人類の一部が、火星に移住したと言うわけだ、、すなわちケプラーの人々にとって地球と火星に居住している人類は、過去激しい戦争を行った宿敵と言う事なんだ。」
「同じ人類なのに悲しいですね？敵は、共通してるって言うのに、、、」

　第12話
作戦は、決行された。
深夜レプタリアン達は、深い眠りについていた。彼らは地中での生活が長かった為、一度眠ると死んだ様に起きない体質に変わっていた。地中では、天敵もいなかったからだ！
「ケイコ君、この廊下の突き当たりの部屋に彼らが監禁されている。」
「レプタリアン達は、この時間は、絶対寝ているから、大丈夫！」
「あっ！」
ケイコが叫ぶ！
2人の前にレプタリアンが突然現れた。2人は驚いて
逃げ出そうとした。
「私です！ケリーです！」
「ケリーさん？何故ここに？」田島が尋ねる。
「お願いがあるの？」
「お願いとは？」
「私も一緒に連れて行って欲しいの、、」
「えっどうして？」
「私は、もうライム達の考えには、ついていけないの！彼らは人類との共存共栄を謳っているけど本当は、レプタリアンに反抗的な人々には、マインドコントロールを行っているの！」
「マインドコントロール？」
「そう、私たちレプタリアンは、生まれ持ってマインドコントロールの力を持っているの」
「人類は、その力に屈服したんですね？」
「そうなの。でも最初の人類は、それに対抗する装置を開発してレプタリアンを追いやったの」
「そうだったんですね、、、」
「それと、ワームホールの技術も実は最初の人類が、持っていた技術なの、その装置の場所と使い方も理解しているから、私について来て！」
二人は、ケリーの指示に従った。

第13話    
「ジェイ、、、今、外で話し声がしなかったか？」
「えぇ確かに、、、」
　その時、二人を監禁していた頑丈な鉄の扉が音もなく開いた。
加藤は、本能的に身構えた。
ジェイは、加藤の後ろに身を隠していた。
そして、二人の前にレプタリアンのケリーが
現れる。「なんだ！お前は！」加藤が叫ぶ！
「安心してください！彼女は、味方です。我々は、あなた達を、助けに来ました！」田島が叫ぶ！
「レピが味方？本当なのか？」加藤は、にわかには信じられなかった。
「大丈夫ですよ！私たちを信じてください。」ケイコの言葉にジェイが反応した。
「こんなかわいい子が言うなら信じられそう！」
「さぁ、こっちです。」とケリー
　皆んなは、ケリーの後に続いた。
　彼らは、長い廊下の突き当たりのエレベーターに
　乗った、そのエレベーターには、階数を示す表示も無ければ、ボタンも無かった。全く音もしなかったが、感覚的に地下に向かっていると言う感じを
加藤は感じていた。
「おいおい、どこまで降りるんだよ？」と加藤
「後、少しです。」ケリーが答える。
「あなた達の宇宙船は、この施設の最下層に格納されています。」
「最下層？」とジェイがつぶやく
「そう、地下500階です。」

第14話
彼らが、地下500階の宇宙船の格納庫に着くないなや
けたたましい警報が鳴り響いた。
「なんだ？見つかったか？」加藤が叫ぶ。
その瞬間、格納庫のシャッターが閉まり、彼らは格納庫に閉じ込められてしまった。
「こ、これを見て下さい。」ケリーが格納庫の真ん中にホログラムを映した。元来、冷静沈着な性質を持つレプタリアンが、こんなに慌てる事は、珍しい事だった。
「何だ？これは？！」加藤が息を呑んだ。
「戦争？」ジェイがつぶやく、、、
ホログラムには、無数の宇宙船が、地球に総攻撃を
かけている情景が生々しく映し出されていた。
あっという間に地上の全てが破壊されてしまった。
戦力の差は歴然だった。
「こんなに圧倒的な力の差があるのか？」その場の誰もが言葉を失った。
「どうして？こんな酷いことを、、、」ケリーの声も震えていた。
その時、皆が見ていたホログラムに研究室の様な部屋が映し出された。そして現れたのは、火星のダークエネルギー研究所であった女性、四ノ宮だった。
「加藤さん、そしてジェイ？　よかった無事だったのね？」
「何とか生きてるみたいですね」ジェイが人間的なユーモアを交えて答える。
「あなたの仕業なの？」ケリーが怒りをあらわにする。
「とんでもない！私は、単なる研究者です。ただ、ケプラーの人達とはネットワークを持っています。今回の加藤さん達の乗った宇宙船をレプタリアン種族が、拿捕した事は、とてもケプラーの人達を怒らせたようです。」
「それにしても、やり過ぎです！」ケリーも怒りを抑える事が出来なかった。
「そうですね、確かに表面的には、そう見えますね」四ノ宮が、答える。
「表面的？」ジェイがつぶやく。
「表面的には、そう見えますが、ケプラーの人達は、地球に残った人類をレプタリアンから救いたいとずっと願っていたのです。」
「救うとは？どう言う意味ですか？」と田島、、、
「あなた方、地球に残った人類は、レプタリアン種族に所属する事を結果的に選んだ、
　ケプラーの人達は、100年余りに渡って火星への移住をする様に地球に残った人類のリーダーを説得していたの」
「しかし、地球に残った人類は、レプタリアンを選択した？」田島がつぶやく、、、
「その通り」四ノ宮は、悲しげな表情で答える。

最終話
「人類をケプラーに導いた種族が、いるの、、その種族は、人類を作り、またレプタリアンをはじめ様々な派生種を作ったの、そして、生存競争で最後に残ったのが、レプタリアンと人類だった。」
「ケプラーに行った人類と行かなかった人類に別れたのは何故なの？」ジェイが首を傾げる。
「人類をケプラーに導いた種族は、自らを神と名乗ったの、その神を信じた人類は、ケプラーに導かれ、信じなかった人類は、レプタリアンを信仰する様になったの、火星に移住した人類は、後々にケプラーの人々を信じた人類なの」
その時だった、まばゆい光が格納庫を満たした。
その光が、次第に人の形に変化していく、、、
「なに？誰なの！」ジェイが叫ぶ。こう言う時のアンドロイドは、冷静沈着だった。
人の形をした光が、反応する。
「私はケプラーから来た者です。」
「姿を現してください！」ジェイが続ける。
「私たちは、肉体を持っていないんです。あなた方の概念では、聖霊にあたる者なんです。」
「聖霊？」ケリーがつぶやく、、、
「ケリーさん。あなたは、最後のレプタリアン種族になりました。とても残念ですがレプタリアン種族は、滅びてしまいました。」
「あなた達が、滅ぼしたんでしょ！」
　ケリーが声を荒げる。
「私たちは、人類、そしてレプタリアン、そして、全ての生命体を作りました。最後に救われるのは、私たちを受け入れた人類だけと、最初の段階から定められていたんです。」
光の人は、悲しげに語った。
「さぁ私と一緒にケプラー1649に行きましょう。
そこは、人類が思うところの天国です。」
次の瞬間、格納庫の全ての人が光に包まれ一瞬で消え去った、彼らが本当にケプラー1649に行ったのか
それとも滅ぼされたのか？


知る術は無かった。

完