常連さんになる心理とは? 第1章の6

 先日まで毎週行く店があった。午前の診察が終わり、昼休みに入ると直ぐに食べに行く店である。カウンター席で少人数が食べるうどん屋であるが、出汁のよくきいた白醤油の汁でわりとうまい。ほかに、かやくご飯や親子丼、カツ丼、カレーうどんもあり結構いける。飲食店は周囲にとても多く、別にそこにこだわる必要はなかったのだが、結構長い間、毎週顔を出していた。
 その店は料金前払いだったが、毎回スタンプを押してくれるということがあった。スタンプは毎回押し、20回貯まると400円分サービスがある。20回で400円ということは、1回が20円である。たかが20円であるが、今思うと、このスタンプ押しに莫大なパワーがあったことを感じさせる。
 これまで3年ほど毎週この店に通った。スタンプカードを忘れることはしょっちゅうあったが、店の人がその度に新たにカードを渡してくれた。4、5枚にバラバラになっていても、20回分で400円分のサービスであった。
 こうして20回貯まったことはこれまで何度あったことか。しかし、先日貯まってサービスを受けてから急転した。カウンターには、中年女性の店員が新しく店に入っていたのだが、20回貯まってサービスを受けた翌週に、料金を前払いした際に、そのままの対応となったのである。そのままの対応とは、新しいカードを渡されることがなかったのであり、その時点では、「忘れはったんや」と気にもとめなかった。それもそのはずで、たかだか20円だからである。しかし、その後何度訪れても彼女から新しいカードを渡されることはなかった。毎週、周囲を見ていると、持参したカードを店員に示せばスタンプを押してくれるが、示さない人にはスタンプを押さない。そして、新しいカードを渡される人と、そうでない人もあるが、渡される人とは、自らカードを希望する人のようだ。
 カウンター内の作業を見てみると、前払いへの対応、厨房への注文、ご飯の盛りつけや漬け物の用意、食後のカウンター拭きと食器洗い、電話注文対処、持ち帰りの人への袋に注文品を詰める対応など、全てを1人でこなしている。確かに、とても忙しそうである。カウンター席には8人は常にいて、昼の時間は待っている人も多く、どんどん入れ替わることとなる。そんな忙しさの中で、スタンプ処理を組み込むのは大変であろう。
 以前、カウンター対応をしていた店員は几帳面に、全ての人にカードを渡していた。このスタンプ処理の作業は結構大変のようでも、新たに来る人(一見さん)にも必ず、サービス内容まで説明して渡していた。先日からこの店員が替わった。彼女にカウンター内の作業に何ら落ち度がある訳ではない。てきぱきと進めている。恐らく彼女は、新たにカードを渡すという作業への優先性を意識せず、手抜きとしたのであろう。
 カードがなくなっても暫くは通っていたのだが、「ふと」別の店に行ってみるかと、近くの店に入った。

ここから先は

2,632字
この記事のみ ¥ 100
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?