「待つこと」って、結構面白い 第1章の2

 待っているときにさまざまな気分が起きることを誰もが体験されたことがあるであろう。待ったことによって生じる結果の善し悪しで気分が大きく変わることは予想がつくが、他にも微妙な周囲の雰囲気でさまざまな気分が生じるのである。
 先日、私は単純に「待つ」という行動の中で自分に生じた心理変化に興味を持った。それは郵便局でのカード待ちである。年度末となり、各種会費の振込が必要となった。普段は家族等に任せていたが、先日は仕事の合間に郵便局に出かけた。単に振込窓口で済ませるのだが、他にも大勢の人がいたためカード待ちとなった。いわゆる番号札で、私の受けたカードは110番である。振込窓口は4箇所あり、それぞれの担当者がカード番号を呼んで対応している。私がカードを受けた時は、窓口のカード番号は101、102、103、104となっていた。直ぐに済ませるものと思っていただけに、「あー、まだ6人待ちか」と溜息が漏れた。そして、窓口の前に2本の長椅子があり、3人ずつ6人が座っていた。若手のビジネスマンが1人、子連れの主婦が1人、お年寄りの女性が2人と男性が2人である。
 「105番の方どうぞ」とアナウンスが入った。誰か椅子を立つかと思いきや、別所に立っていた女性が窓口に向かった。椅子が一カ所空くことを期待していただけに、「何だ。空かなかったのか」と、若干の失望感であった。高々、椅子に座るだけのことで、別に座れなかったからといって、普段なら何と言うこともない。地下鉄でよくあることである。でも、何か予想が外れたことで少々がっかりしたのである。
 3分ほどして、「106番の方どうぞ」とアナウンスが入った。今度は誰か立つだろうと思ったが、今度も別所で立っていた男性が窓口に向かった。「何だ、今度もか」といった気持ちである。それくらいで不快感までは至らないが、嬉しいとか楽しいといった気持ちではない。直ぐに、「ここに座っている人たちは振込窓口を待っているという訳でもないのか」という微かな疑問感が出てくる。しかし、107番、108番と同じ現象が続くと、「一体、ここに座っている人はどこの窓口の人なのだ」と不信感が沸くのである。特に、既に10分以上経つのに当初の6人が誰も席を立たない。最初に意識してから、4人の振込業務対応が終わったのに、座って待っている人に変化がない。「一体どういうことなのだ」と全体的な戸惑いが意識され出すのである。

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