築地の寿司屋の若いカップル 第1章の5

 東京築地の寿司屋に家族で食べに行った。名の知れた店のようで、店に訪れると既に多くの人が列をなしていた。前には10組程の人たちが並んでいる。これでいくと、1時間程は待たなくてはならないであろう。それでもせっかく築地に来たのだから食べてみたいというのが筋だ。個人的には学会関連で東京に来た時、時々知人たちと築地で寿司を食べることもあったが、家族4人でというのは初めてである。となると家族も、せっかくだから行ってみたい店という気持ちで店をネット等で探す。数多くある店の中で、敢えて列に並ぶ店の前に来たという経緯はこうした事情もある。
 30分程待ったであろうか、やっと入店となった。人数の割に意外と早いではないかとやや驚きも感じたが、早く店に入れるに越したことはない。呼ばれて、そそくさと入った。後になって、この早さの意外性に頷くことになるのだが、、、。
 店に入ると、中はそんなに広くはない。カウンター席に8人、2人テーブルが7から8席程であろうか。われわれの入ったのは2Fなので、これぐらいの広さはあったが、1Fはカウンター席だけのようである。
 席について、注文するが、おまかせ寿司を頼んだ。10カンで3500円。何と、意外に安いではないか。列ができるのも頷ける。それでも、子供たちには、素晴らしく高級寿司を口にできるという期待感がみられていた。それもそのはずで、家族で寿司といえば、回転寿司が定番だった。大勢の寿司職人を前にしたカウンター席の臨席で食べるという状況設定に早くも高級感が感じられたのか。
 暫くして、お寿司がテーブルに運ばれた。早速、子供はスマホで写真を取っている。料理の写真を取るなんて、一昔前には考えられなかったが、今ではFacebookなどのお互いの情報のやり取りで当たり前になっている。まあ仕方ないか。
 それでも、一カンずつ口にするごとに、家族同士でコメントを述べ合うのである。食べる順番は人それぞれである。蘊蓄を言う連中が、寿司を食う順序の基本とやらを述べ立てているが、笑止千万の話だ。とは言いながら、私もこうした愚者の仲間入りをさせてもらうと、食べる順序はその人の性格関連であると言いたくなる。
 大きく分けて、2パターンである。自分の最も好きで、食べたいものを、最初に食うか、一番後に残しておくかである。

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