療育手帳について1 はじめに-障害者手帳全般の整理から-


 ここでは、知的障害者を対象とした障害者手帳すなわち「療育手帳」に関して様々な角度から整理、検討することにあるが、本論に入る前に、障害者手帳と呼ばれるもの全般にわたって、まず整理しておきたい。
 そこで、厚生労働省HP(20240909確認)に掲載されていたものを以下掲載した。    

障害者手帳について 

障害者手帳は、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種の手帳を総称した一般的な呼称です。
制度の根拠となる法律等はそれぞれ異なりますが、いずれの手帳をお持ちの場合でも、障害者総合支援法の対象となり、様々な支援策が講じられています。
また、自治体や事業者が独自に提供するサービスを受けられることもあります。
 
 ここから、障害者手帳全般に関する厚生労働省の上記「資料」に関する補足をしておきたい。
(1)障害者手帳の発足時期、根拠法等
①身体障害者手帳
 根拠の欄に記載されている昭和24(1949)年に制定された身体障害者福祉法であるが、実際には翌年(1950年)4月1日からの法律運用開始(=施行)となっている。
 また、スタート当初は、「視力障害」、「言語機能障害」、「中枢神経機能障害」、「聴力障害」、「肢体不自由」の5つの障害のみを対象としたものであり、その後、徐々に障害対象の拡大が図られ上記の障害分類に整理されるまでとなった。
②療育手帳
 法律ではなく、昭和48(1973)年各都道府県知事・各指定都市市長宛に出された、厚生省(当時)事務次官通知「療育手帳制度について」が根拠とされているが、同じ日に合わせて出された児童家庭局長通知「療育手帳制度の実施について」も根拠に加えてよいかと思われる。ただ、2つの通知とも、法律のように強制力はなく、あくまでも「目安」「参考資料」レベルのものが示されているに過ぎないなかでのスタートとなった。
 なお、②については、改めて詳細に整理・検討することになる。
③精神障害者保健福祉手帳
 根拠の欄の法律は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法第123号)とあるが、昭和25(1950)年に障害者手帳がスタートしたわけではない。そもそも法律名も「精神衛生法」であり、その後「精神保健法」に、平成7(1995)年には「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に改められ、ようやく障害者手帳が制度としてスタートした。
(2)再認定、再判定、更新時期
①身体障害者手帳
 障害が固定して発行されるため、再発行や更新といったことは「ない」という考え方が基本にある。ただし、「医療の進歩や機能回復訓練の実施 、又は発育等により」「障害程度が変化する事例が増加してきている」ため、東京都は身体障害者手帳の「障害再認定制度」を平成14(2002)年度から実施している。そのため、全国各地においても再認定の必要な身体障害者手帳取得者が一定程度存在しているのは間違いない。
②療育手帳
 (1)②で紹介した家庭局長通知「療育手帳制度の実施について」の中に「障害の程度については、交付後も確認する必要があるので、その必要な次の判定年月を指定するものとする。なお、次の障害の程度の確認の時期は、原則として2年後とするが、障害の状況からみて、2年を超える期間ののち確認を行ってさしつかえないと認められる場合は、その時期を指定してもさしつかえないものとする。」といった記載があるものの、先に触れたように「通知」はあくまでも「目安」であることから、各自治体での取扱いにかなりの違いが見られる。
③精神障害者保健福祉手帳
 そもそも2年の有効期限となっているため。2年ごとに医師の診断書とともに申請をし、手帳を更新する必要がある。
 以上が、障害者手帳全般に関する補足となる、障害者手帳に関して様々な課題や問題が存在することは言うまでもないが、ここでの目的は、あくまでも「療育手帳」に関して様々な角度から整理、検討することにあるので、
ここで終わりとしたい。
 最後に、障害者手帳取得者の日本の人口における割合を見ておこう。令和4(2022)年10月1日の現在の総人口は1億2494万1000人(長期間居住している外国人を含む)、日本人人口(日本国籍取得者)は1億2203万1千人(以上総務省統計局HP20240914確認)である。とりあえずここでは、日本人人口の中の障害者手帳取得者の割合を計算してみると、人口の約6.1%に相当する。
 ただ、厚生労働省第25回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(2022年3月28日開催)参考資料2では「人口の7.4%に相当」と違う数字が上がっている。
 数字が違うのは、使用している根拠資料等の違いによるものであるが、ともあれ、100人の集団があれば、その集団の中の6人~7人程度は障害者、ということが日本社会の実態である。
 このように考えると、結構身近な存在としての障害者となるはずのものが、私たちの実感としては、障害者をそれほど身近に感じられない存在となってはいないだろうか。
 
 



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