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実録ICT支援員「授業支援」

「今日は誰かの役に立っただろうか?」
こう考えながら帰宅の途につくようになった。
 生徒用デジタル教科書英語と音楽が試験的に配布された。生徒をタブレットのホーム画面からデジタル教科書のあるバーチャル空間に連れて行く指導に時間を取られる。
「ホーム画面のこのアイコンをタップして、IDを入力して、パスワードを入力する。」
これだけの指導が結構難しい。IDやパスワードを忘れる生徒がいる。スペルを1文字間違えただけで入れない。中には誤作動する調子の悪いタブレットがあったりする。1分かからずに入口に行ける生徒も多いのだが5分経過してもたどり着けない者が続出すると授業に支障をきたす。支援員の出番となり、授業開始と同時に説明する。説明の後、
「入り口まで行きなさい。」
こう指示するが、自信のない者はタブレット画面に入力信号である指を触れられない。生徒は隣に聞こうとする。
「隣と相談しない。」
厳しい先生の声が鳴り響く。どうやら私語や徘徊を許さないルールを徹底させようと考えているらしい。隣同士で相談し合えば立ち往生している生徒が半減するのにもったいないと思う。教室に先生の支援がないと10分しても入れない生徒が存在する。学習は先生に教えてもらうのも友達に教えてもらうのも同じであることが理解できない先生の顔を潰さないために3時間授業支援をした。
「多少は役に立った。」
刈谷駅のプラットホームでため息混じりに線路を眺めた。

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