実録ICT支援員「続コピペの効用」
生徒のレポートがコピペばかりで見るに耐えない。発表は読めない漢字ばかりで聞くに耐えない。こう批判して生徒全員のレポートを手直しすると粋がったが、一人目のレポートで行き詰まった。
前回作 「コピペの効用」
大学生がレポートをネットで見つけた論文を切り貼りして自分のレポートに仕上げたり、教員が研究授業の指導案をネットから見つけてきて名前だけ変えて利用することがある。検索するのはGoogle検索のお陰で容易くなったし、探す行為自体がトレジャーハンティングのようで楽しい。切り貼りも難しくはなく楽しい作業の部類に入る。ところが中学生のネットを使った調べ学習では事情が変わってくる。例えば、ノコギリの使用法や歴史の記事を探すのは楽しく簡単だが、切り貼りしただけではレポートにはならない。重要な箇所を探すためには全文を読まなければいけない。漢字が読めなければ探すことさえままならない。たとえ使えそうな文を見つけることができても、それらをつなぎ合わせたり部分的に書き換えたりしなければレポートにはならない。書いてある内容を理解していなければいけないのだが、大人用に書かれた資料を生徒が理解することは難しい。さらにオリジナリティーを出すためには意見や感想が必要になる。
タイトル画面に貼り付けた資料をもとに簡単なレポートを作ってみた。
最終行はレポート作成者の感想だが、ネット資料をまとめると上の4行になる。これは技術科教師が木材を切断させる際、生徒に説明する内容に他ならない。この資料を見つけただけでも立派だがレポートにはならない。資料をネットで見つけてレポートにまとめさせる学習課題は教師の指導がない状況で両刃のこぎりの使い方を生徒が自力で理解して、それを文章で表現する行為に他ならない。もし、生徒にこれが可能ならば教師の指導は必要なくなる。
昔、出張で授業ができない時に書いた補欠指導案を思い出す。穴あき問題の学習プリンを作って用意することもあったが、準備の時間がない場合に、
「両刃のこぎりの使い方を教科書を使ってまとめなさい。」
生徒にこんな課題を与えたことがあった。ネット検索が教科書に変わっただけだ。検索は楽しい作業なのにその楽しみさえなかった。教科書に書いてある内容を生徒が理解して文章にまとめる行為は非常に難しい。教師の与えた無理難題に生徒はどう答えたかというと、それらしい部分を丸写しした。そうだ。重要箇所を丸写しして無理やり記憶に留めるこれこそが学習だった。生徒の学習を助けるために、教師は教科書を熟読して理解し、それを噛み砕いて、生徒が効率よく理解できるように指導方法を考える。教師でも数時間かかる学習課題を1時間の自習で生徒に押し付けた。
定年して10年経って己の愚かさに気づいた。