乃木坂46大園桃子が投げかけたもの

 強く、美しいラストライブだった。

 そこにいたのは、「乃木坂46 4期生」の大園桃子だった。

 実働5年。

 乃木坂の中では、比較的短く感じるが、不思議なくらい、ファンの多くが卒業と引退を受け入れ、彼女の背中を押す姿勢を見せた。それぐらい濃厚な期間であったことを、なんとなくみんなが感じていたのだと思う。

 乃木坂のセンターというのは、3種類ある。

一つは、戦略的、あるいは演出的なインパクトを狙うもの。

 初代センター生駒里奈、そして堀未央奈、与田祐希と大園桃子も、世代の狼煙をあげる、あるいは乃木坂の姿勢を示すアイコンとしての大抜擢であろう。

次に、人気があった福神に与えられる「卒業センター」 これは、深川麻衣や橋本奈々未といったメンバーが代表格だし、白石麻衣もこれに入る。

 最後に「満を持して」型。「ガールズルール」の白石麻衣、「何度目の青空か」の生田絵梨花、そして西野七瀬もここに入ってくる。(なお、戦略型と満を持して型のハイブリッドが齋藤飛鳥である)。

 この中でも、インパクト型というのは、選ばれたメンバーにとっては諸刃の剣で、知名度もファンも増えるが、アンチも作り出してしまう。

 生駒や堀が受けた嫌がらせ、誹謗中傷は、傍から見ても「訴えていいんじゃないか」と思えるほどひどいものが多かった。当然、大園と与田もアンチは増えたが、Wセンターであったこと、さらにアンチへの対応経験が豊富な1,2期生がガードしたこともあって、前述の二人に比べればひどくはなかったように思える。

 しかし、負担が軽かったのかと言えば、そうではない。特に大園はセンターに抜擢されたことを親にも言えず、番組で知らされた母親がびっくりするという一幕もあったほど、センター抜擢で自分を責めることになった。

 特別に歌唱力が秀でているわけでもない。ダンスだって上手い方ではない。朴訥としゃべるトークは魅力的だが、本人は足りないと考えていた。

 初期、大園は気分屋で問題児であったと自分のことを振り返っているが、おそらくは、センター抜擢に対する不安や混乱が、そういった行為を引き起こしていたように思う。

 そんな彼女が、成長した実力を見せたのは、ラジオだった。NHKらじらーで共演したオリエンタルラジオの二人は、前任の中元日芽香に対してもそうだが、とにかく引き出しを開けるのが上手い。この二人の影響で、大園は素の自分を肯定するような発言が徐々に増え、さらに後輩である4期が入ってきたことで、自分が先輩たちから受けていた愛情を後輩たちに与えられるよう、発言や行動が変わってきていた。

 芸能界に居なければ、乃木坂にいなければ、こんなに悩み、苦しみ、泣くこともなかっただろうが、女性としての魅力をここまで磨き上げることもできなかっただろう。

芸能界を引退する彼女が、今後どんな道を進むのかはわからない。だが、できれば詮索はしないで、彼女が幸せであることを信じていきたいと思う。



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