Tomorrow Worldのあなたより、愛をこめて

某アニメが19年ぶりに復活するとかで、かつてのファンたちが少し前にざわめいていた。

かくいう私も、19年前といえば中学生。
ちょうど高校受験を控えていた頃。だから当時のアニメを見た記憶はじつを言うとそんなにない。が、原作漫画は好きで友達に借りて読んでいた。だから、『復活』のニュースにこっそり紛れ込んで私もいっしょに喜ばせてもらった。

・・・あの頃。

過疎化の町で、田舎臭いセーラー服のスカートの下から青いジャージをのぞかせていた、あの頃。

上手に校則も敗れなくて、スカートの丈はひざ下で、髪の毛ひとつ可愛くまとめられなかった。不器用で、チビでデブだった。周りに馴染めなくて、話が合わせられなくて、人生に絶望していた。

その頃のたった一つの楽しみが、水曜日の深夜12時に聴くラジオ、「林原めぐみのTokyo Boogie Night」だった。
当然、親は夜更かしを許してはくれないから、おやすみと言って寝たふりをして、ラジオを抱えて布団の中にもぐりこむ。ひとつ前に吉永小百合の番組がやっていて、その人の優しいさよならを聴きながら、じっと待つのだ。やがて始まる、スピーディな都会のイントロと、めぐさんの突き抜けて明るい「こんばんはー!」。

ずっしりと暗い気持ちを切り裂くような、透明で清涼な、触れているだけで世界のあらゆるものを浄化してくれる声だ。

布団を頭からかぶって、丸みを帯びたラジオを胸に抱きしめて、親にばれやしないかとドキドキしながら、一週間に一度だけ私が息を吹き返す、長くて短い30分間だった。
あの頃の私の命は、この30分間に繋がれていたと思う。
救われていた、と思う。

***

めぐさんの歌は全部が全部、優しくて力こぶがあって最高なのだが、その中に「I&Myself」という歌がある。

会いたい君にTomorrow World
勇気を そして愛を
いっぱい詰めたTomorrow Heart
振り向いて 呼びかけて

あの頃の私は、一番の歌詞を聴いて泣いた。
毎日が大変で、生きていることが辛くて、本当に明日なんか来るんだろうか、ということがわからなくて。
でもめぐさんは歌ってくれる。
明日の自分はいるよ、捜しに行こう!と。

この歌の秀逸なところは、二番の歌詞が、一番の歌詞のアンサーになっている点だ。

見せたい君に Tomorrow World
希望が ここにはある
疑わないで Tomorrow Heart
追いかけて がんばって

明日の自分が、振り向いて微笑んでくれる。
そのままでいい、転んでも傷ついても恥ずかしがることはない、がんばれ、がんばれ、と。

***

あの頃の私は、明日の自分を疑いながらも、信じていた。
きっと明るい未来が待っているはずだ、と強く強く祈っていた。できることなら確証は欲しかったけれど、そんなことは現実的には無理だから、一日、一日、生きるしかない。一歩一歩、前に進むしかない。

今の私なら、あの頃の私に言いたい。
後ろを振り向いて、そこにあの頃の私がいるなら、駆け寄って手を取って、その顔の涙を拭いて、絶対に、絶対に大丈夫だからそんなくだらないものなんかに負けるな、と言ってやりたい。生きてさえいてくれれば、あとは私が何とかするから。

この明るい未来を、あなたと一緒に見たいのだ、と。

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