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【感想&小話】CLANNAD 現実味から心を揺さぶる、藤林姉妹ルート

こんにちは。なるぼぼです。

この記事書き始めたのが藤林姉妹(杏)ルート完走直後なんですけど、正直放心状態です。
現時点で各ルートの方向性がとんでもないぐらいに違うのに、それぞれに味があって感動するっていうのは感動のバーゲンセールか何かなのかと錯覚してしまいます。
そんなこんなで今回は、藤林姉妹ルートを走りながら思ったことを書いていきます。

※いつものようにですが、本記事にはCLANNAD藤林姉妹ルートのネタバレが多量に含まれています。
ネタバレ嫌いな人はブラウザバック推奨。

恐らくこのルートはAfterの関わりがないとは思っていますが、他ルート進行中に何かありましたら意見が変わるかもしれません。
ご了承ください。

1.藤林姉妹の対称性

藤林姉妹は、キャラクターとして二面性が協調されていると感じます。

共通ルート中の第一印象として、姉の杏は主人公と似てサバサバした性格でわかりやすいキャラクターのように見えます。
一方妹の椋はいつもおどおどしたキャラクターで、主人公と会話をすることすら難しいという印象を抱きます。

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このルート、劇的なまでに当初の第一印象を崩しにかかっていることが特徴で、この二面性がストーリー中で逆転する様が凄いです。
杏は自分の感情と向き合うことができずに葛藤し続け、いつものキャラクターを演じながらも本心を見せる際にはか弱い女の子の顔をしています。
椋はかなり積極的かつ大胆になっていき、当初のおどおどした部分はどこへやらというほどに性格が変化します。
というか椋の性格の変化ははっきり言って中の人格が別の人と入れ替わったんじゃないかと誤信するほどに変わります。
実際プレイ中に「これ人格乗っ取られたんじゃないの!?」みたいな恐怖感に似た感情を感じることはありました。
恋する乙女って怖いねぇ…。

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ともかく、この変化する二面性を持ったキャラが一人ではなく二人いるわけですから、そりゃルート中のキャラ変化は見ていて楽しいに決まっています。
ただここに恐ろしいほどまでに完成されたストーリーがのっかってくることで、藤林姉妹ルートのキャラの魅力は完成された、と僕は思っています。
それじゃ次はそんなストーリーの話。

2.些細なことから始まる幸せと不幸

このルートを問わず今までやってきたルート全般に言えることですが、どのルートも穏やかさが強調されているのが序盤の特徴です。
その穏やかさを強く感じたのがこのルート。
4月末までず~~~~~~~~~~っと平和な日々が続きます。

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その間にもストーリーの根幹となるイベントは進行していきます。
成り行きで椋が主人公のことを好いていることを知った杏は、椋を応援しながらも、主人公に色々なアドバイスを投げかけていきます。
とやかくあって、椋は覚悟を決め、主人公に告白します。割と序盤で。
主人公は恋人もいないので、椋の告白をサラッと受けて恋人生活が始まっていきます。

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最初は恋人同士と言えど何も知らない二人。
特に椋は自分の引っ込み思案な性格が足を引っ張って、なかなか行動に移すことができません。
そこで、杏が間に入って二人の仲を取り持つ機会が増えていきます。
例えば3人で弁当を食べるシーン。
椋と主人公はぎこちないですが、杏が間に入り込んだことであ~んというお約束イベントまで取り付けることに成功します。
また、帰り際に「一緒に下校しなさいよ」と空間をセッティングしてあげたりと、杏のサポートが光るシーンでもありました。

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ここまでは普通の学生生活、ちょっと姉の介入が強いけど気にならん程度の彼氏彼女の関係でした。
ここから、とあることをきっかけとしてどんどん展開が変わっていきます。

3.幻想なんて与えない、直接的な感情表現

このルートの最大の特徴として、他ルートと違うファンタジー的な雰囲気一切なしのストレートな表現と心情が挙げられます。
このルート、シンプルにいってしまえば「三角関係の中で悩み続ける主人公」という物語なのですが、前提となる「彼女(椋の存在)」が序盤の平和な時間に出来上がってしまっており、何も知らないプレイヤーはそこを純粋に楽しんでしまうことで、後半のドロドロ感に苦悩するようになっています。
甘い罠である序盤で誘い込み、後半のドロッドロの展開で精神に語り掛ける。
主人公に感情移入しながら純粋に椋との時間を楽しめば楽しむほどに、恐ろしいまでの罪悪感が襲い掛かってくる。
そんなルートです。

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そんな展開になるきっかけは二つ。
一つは、杏のキスの練習に付き合うか付き合わないか。
付き合うことで、杏の顔に近づくことになりますが、そこで主人公は「髪が見えなくなれば椋と杏の違いに気づかない」ということになんとなく気づきます。
そして二つ目は、椋が欲しがっていたタンザナイトの宝石と間違えて、杏が欲しがっていたアメジストの宝石を買ってしまうこと。
そんな二つの出来事から、椋と杏の雰囲気が一変していきます。

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椋は二人きりの時間が少しずつ、少しずつ長くなっていきます。
最初は全く続かなかった会話も、段々と中身が入ってくるようになりました。
椋の占い好きの話を聞いたり、実際にゲームセンターで占いをしたりしているうちに、少しずつですがお互いのことがわかり始めるようになっていきます。
そして、それはキスの本番をすることでより椋に近づいていきました。

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そんな中、主人公はこんな生活を続けていく中で一つの疑問に当たります。
それは、「本当に椋のことが好きなのか?」という単純な疑問。
これは春原から投げられますが、彼はこの単純すぎるほどの問いに少しずつ疑問を感じ始めるようになります。
告白してきたのは椋だ。確かに自分はあの空間に安らぎを覚えている。
彼女が自分を求めてくれている、ということにも嬉しい気持ちがある。
ただ、何かが違う…。
そんな気持ちの中で揺れ動くことになります。

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それに呼応するように杏は「主人公と杏が付き合っている」という嘘の噂をきっかけとして距離を取り始め、挙句の果てには春原に告白し、キスまで持ちかけようとします。
しかし春原は「無理してない?」と杏の行動を不振がりながらも行動を避けます。
そして、それを見ていた主人公に、杏が去った後もう一度「お前は本当に椋が好きなのか?」と聞きます。
そしてもう一つ、核心的なセリフを口にします。

「心が安まるのと心が痛むの、どっちが『好き』って気持ちのもたらした感情なんだろうね」

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この言葉がすごく響きました。
普段からバカやってきた友達が、この一言を言い放つことにも衝撃を受けましたが、何よりも彼がすべてを見通したうえで、かつ何をすべきなのかという部分に完全な理解を示したうえで、主人公にそれとなく何をすべきかを伝えているということに一番の衝撃を受けました。
春原がまた一つ大きく見えるシーンでした。

4.交錯し続ける思い

そして時間が流れていくとともに、二人の対応はより大きく変化していくことになります。

椋は日が経つごとに大胆に、積極的になっていきます。
連休中にキスをしてからはより身体的な接触も増えるようになり、恋人という意識をいやでも植え付けてきます。
この椋のシーン、申し訳ないんですけど僕は怖かったです
なんというか彼女が「本当にあの椋なのか?」というほどに大胆に積極的になっていって、普通じゃないというような恐怖感がありました。
人格ごと他人に入れ替わったとか、実は杏でヤンデレオチとか考えてた僕も悪いような気がしますが、明らかに今まで見ていた椋と変貌します。
周囲のイメージ像で椋を見ていたことも相まって、椋という人間に対して理解が足りなかったことを知らされます。
この時点での対応が、恋人に対する椋の考え方だったのかもしれません。

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一方杏はいつも通り接しているように見せながらも、どこか無理をしているような描写が目立っていきます。
それは学祭の際に椋からキスを迫られ、そこを偶然見てしまったときに爆発してしまいます。
翌日、彼女は昼過ぎに学校を早退します。
ぼたん(杏のペット)の助けを得ながら彼女を探した主人公は、雨の中で全身ずぶぬれになりながらも立ち尽くす杏に出会います。
その時の杏はいつもの雰囲気など一切なく、全ての感情をさらけ出した女の子になっていました。

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そんな中で、彼女の本当の感情に向き合ったことで、主人公の気持ちにも大きな変化が見られるようになっていきます。
彼女に好きと言われたことで、自分の中の本当の気持ちに整理をつけたようにはなりますが、杏に想いを伝えるためには同時に涼を振らなければならないために、今ある環境の中で罪悪感と不安に駆られ続けることになります。
途中、椋の占いによって本当の気持ちが見事に明かされるシーンがありますが、その際に椋が「私たちは上手くいきます」と取り繕ったこと、主人公の思いは杏に向かい続けていること、それらがすべて明かされてもなお椋を見ていて欲しいと願い続けている杏のこと、全てが上手く重なり合わないような一幕は苦しみを覚えるものでもありました。

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5.決意

椋に罪悪感を感じながらも付き合い始めて何日か経った頃、春原に呼び出された主人公は、悩みや思いを吐露します。
彼はそれを受け止めたうえで、「絶対に片方が傷つかなければならない、それでも被害は最小限にすべきだよな」と言うことを告げます。
それは「早く答えを出さなきゃどっちも傷つけ続けるだけなんだぞ」ということに他なりませんでした。
その日、主人公は涼を振ることを決意します。

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主人公は椋のお弁当を断りましたが、その時点で彼女は逃げるようにその場を立ち去ってしまいました。
そして、放課後になって二人きりになった主人公は、椋に自分の本心を伝えようとします。
彼女の「私はあなたのためになんにでもなれる、お姉ちゃんの代わりにもなってあげるから」という言葉を聞きながらも、彼は「椋の中の杏を見てしまっていた」という本心を伝えなければなりませんでした。

このシーンでも、椋の主人公に対する愛情の強さを知ることができます。
絶対に彼を手放したくない。そんな気持ちが彼女の言葉の節々に表れています。
結局その日は、彼の最期の一言を聞く前に椋が逃げ出してしまい、振ることには失敗してしまいます。

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そして翌日、「椋が探していたぞ」という話を聞いた主人公は、死ぬ気で彼女を探し続けます。
そして、何度も後者を往復し、日が暮れる直前に彼は椋を見つけます。
そして彼は彼女に自分の思いのすべてを伝え、謝ります。
でも、それは椋ではなく…。

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まぁ流石に全部言っちゃうとしょうもないような気がするので、ここで切り上げちゃいます。
ネタバレとかどうでもいいぜ!って思いながら見てる方、ごめんね。
この続きは察して。無理言ってごめん。
それはともかくとして、ラストシーンはとてつもなく良かったです。
杏のアフター含めて、なんというか哀愁と喜びを混ぜ込んだ複雑な終わり方をしたように感じました。
ただ、椋自身も最後の結果に決着をつけて前向きに生きていく辺りは、時間の流れでの変化が如実に表れたシーンだと思います。
グッドエンド最高。

6.小話:現実感に揺さぶられてみて

最後にちょっとだけ小話。
このルートにはなんというか、他のルートとは違った独特な思いがあります。
何が独特だったのかは、「自分が過去やってきたゲームの中でも登場人物に一番感情移入した」という点です。
それは藤林姉妹ルートの中にあった「誰かを振らなければならない」なんていう描写を、僕が今までのギャルゲー経験の中で見なかったことにあるのかもしれません。
もしかするとこれも今のギャルゲーの主流になっているのかもしれませんが、僕はこういうタイプは初めて見ました。

このルート、ファンタジー要素一切なしの現実的な演出で占められていることや、主人公の気持ちがストレートに表現されていることで、三角関係の渦中にある気持ちが主人公を介して直接的にプレイヤーに突き刺さってきます。
なんというかやっていて本当につらいルートであるとともに、自分の中で色々と考えさせられるようなルートでもありました。

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まず一般的な恋愛の前提として、椋のような利己的な行動に移るのは人間自然なことだと思うんです。
「恋愛は好きになった方が負け」なんて話もよく出てくるぐらいですし、椋のように相手のためにならなんにでもなれるというような気持ちになることも、全くおかしくないことだと思います。
そして、その相手になる人が「振らなければならない」と言う気持ちになったときにそれをどうやって伝えるか、ということが本ルートの肝でもありました。
本ルートは振らなければならない理由が「双子の姉の方が好きだったと気づいた」というかなりいびつな構造になっていますが、一般的に何かしら理由があって誰かを振らなければならないというケースはよくあることだと思います。

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これは本当に多分、っていう範疇の話なんですけど、「誰かを振った」「誰かに振られた」なんていう経験は、人生で一回ぐらいは経験することなんじゃないかと思うんです。
その時が来る前、「誰かを振らなければならない」「もしかするともうすぐ分かれるかもしれない」となった時に、多分多くの人は(もちろん自分自身もそうですけど)「自分の気持ち」が先行しすぎて、他人の気持ちに気づけないままに時間を過ごしてしまう(もしくは無理だとわかっていても相手にずっと合わせようと努力し続けてしまう)ような気がするんです。
椋も主人公も、お互いに自分の気持ちを優先したからドロドロと沼にハマっていったように感じます。

杏はそんな中で最後まで自分の気持ちを隠し通そうとした存在であり、それを気づかれたとしてもそれ以上は関係を狂わしてはいけない、それ以上自分の気持ちを表してはいけないとして、自ら我慢しつつも主人公を諭し続けていました。
それは自分の中にある気持ちを「我慢しなければならない」、そして行動としては椋と主人公の二人から距離を取り続けなければならないということでした。
僕はそんな杏の気持ちも行動も、結局「自分の気持ちの優先」にほかならなかったのかな、と思います。

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結局、誰かを本当に思うことっていうのは難しいことであると同時に、本当に相手を思うことができるからこそ、人を振ることができるのかなぁとも感じます。
そんなことを考えながらやってきたからか、はたまたこのルートの持つ現実性に当てられたかはわかりませんが、僕はこのルートの各キャラクターに強い感情移入をしながら遊んでいました。
「よくあること」を題材にしたギャルゲーってあることにはあるんですがやっぱりプレイしていなかったのが大きかったですかね…?
誰かを振る、もしくは誰かに振られるときに、自分がどういう行動をしてどういう風にそれに向き合っていけばいいのか、このルートは僕にそれを教えてくれていた、と思います。

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7.終わりに

はいよクサい話終わり!!!!!!!!!!!
贅沢言うなバカたれ!!!!!!!!!!!!!!

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…画像使いたかっただけです。

まぁ何はともあれ、すごく沁みるルートだったなぁと感じています。
ここまでリアリティあるのも初めてだったので、色々と自分の中に当てはめてプレイしていました。
恋愛って難しいね。知らんけど。

何より三角関係の中で悩み葛藤し、結果的に罪悪感から壊れていく主人公を見ていくのは辛いものがありました。
心情表現がストレートであることも相まって、杏と椋の間で揺れ動く心理表現は絶妙だったなぁと思います。
またこんなルートあるゲームができるといいな。そういう気持ちです。
あと言いそびれてた上に付け足すところなかったのでここに書きますが、杏のテーマのBGMがかなり好きです。これだけは言っときたかった。

さて、CLANNAD本編の方はまだまだルートが残っています。
今後とも気長に続けていこうと思います。
一応次の予定は幸村先生→ことみor春原兄妹の予定です。
まぁなんかまた「このルートいい!」って思ったら現れます。よろしゅう。

それではまたね~。

—他ルートの感想は以下のリンクからどうぞ―

・渚ルート

・風子ルート

・智代ルート

・ことみルート





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