【感想】CLANNAD 記憶が紡ぎ出すことみルート
こんにちは、なるぼぼです。
CLANNADもいよいよ後半戦に入ってきました。多分…?
本記事執筆時点でことみルート、勝平ルートが終了しています。
ルート進行としては、以下のようになっています。
渚→風子→美佐枝→藤林姉妹→幸村→智代→ことみ→勝平
今回はことみルートのお話。
深く沁みるものがあったなぁと思います。
今回もゆるくお話していきます。よろしゅう。
※いつものように、本記事にはCLANNADことみルートのネタバレがございます。
気になる方はブラウザバックでお願いします。
また、全クリ前の記述であり、後々意見が変わるかもしれない、という点にもご注意ください。
それではいきましょう。
1.とってもとっても不思議な女の子
渚ルートでちょっと見ただけの存在だったことみ。
その時点でかなりの不思議キャラだと思っていましたが、その不思議キャラはルートに入ったことでより強化されたと思います。
このルートだけ他ヒロインの介入が強いこともあってか、僕はことみのイメージは他者によって形作られているように思いました。
最初は主人公のことを気にしているようなよくわからない不思議キャラでしたが、徐々に面白い要素が杏や渚によって形作られていくことで、ことみならではのキャラの濃さが引き立っていきました。
イベントなんかでキャラのイメージが変わるとかはよくありますが、ことみはイメージがより強く、より面白くなっていったのはことみならではだったと思います。
ボケやツッコミの練習だったり、バイオリンの練習だったりは、どうやっても主人公一人の力では見れなかったことみの側面でもあり、それが強い魅力でもありました。
一方でことみ自身の特徴として、「子供らしくあり大人らしくもある」という二面性も挙げられます。
ことみの子供っぽいキャラクターとは裏腹に、大人顔負けの知識を持っている点やかなり印象的な服装など、大人と子供のそれぞれの尖った部分が明確に出ているのが印象的でした。
キャラクターで笑わせたりほっこりさせたりさせながらも、時々ドキッとするような大人な行動に打って出る。
ギャップ萌えのキャラ、という意味ではかなり尖っていつつもしっかりとしたキャラクター性を持っていたと思います。
さて、そんなことみルート。
ストーリーは打って変わって丸く収まる雰囲気だったと思っています。
さて、次はそんなストーリーから見ていきましょう。
2.5人の絆
このルート、他ルートと明確に違うのが前述したとおり「他ヒロインの介入が多く、それも長期にわたる」という点。
ことみルートでは渚、杏、椋の三人がことみの友達という役割で付き添うことになります。
そのきっかけは、ことみの友人関係の狭さ、そして人との対話能力に主人公が問題意識を感じたことにありました。
彼女は時々本のページを切ろうとしたりなどの不思議な行動に出ることがあるため、主人公は他人と交流させることでことみをいい子にしようと考えます。
その上で絶好の人間は演劇部再建のために人を集めようとしていた渚であり、彼は渚とことみ、そしてついでに藤林姉妹を引き合わせようとしました。
初めはことみと杏の間でいざこざが起きたりと不安定ではありましたが、静かな雰囲気がマッチしたのか椋と渚とはすぐに打ち解けたことみ。
その後主人公の協力もあって杏との絆をボケツッコミの関係性から理解し合ったことみは、徐々に主人公と二人だけでは見れなかったような、自分の持ち味を出していきます。
天然ボケをしつつも時にはしっかりとした渚。
占いと天然ボケをしつつも、優しさに溢れた椋。
勘違いも傲慢さもとてつもないながら、気遣いをかかさない杏。
どこか棘のある言葉を言いつつも、皆に理解を示す主人公。
そしてそんな輪の中心にいて、いつも話題を作ってくれることみ。
緩い雰囲気を保ち、皆が仲良く過ごしていた5人組の「暫定演劇部」は、にぎやかでハチャメチャでありながらも、皆で過ごす楽しい時間の共有を続けていました。
しかし主人公はことみと二人でいた時間も長かったため、「大人と子供の間にあることみ」の存在を薄々感じ始めていました。
例えばそれは空を見上げていなかったとき。
例えばそれは鋏を手放さなかったとき。
そして、老紳士の残したよくわからない言葉。
静かに、ただ静かにことみの中に深い闇があることを、それとなく自然にプレイヤーに意識させる演出が本ルートでは多く使われていたように感じました。
3.些細なキッカケと、つながった記憶
皆で楽しく過ごしていたある日、椋の占いから「明日もいいことがある」という結果が出ます。
これ見た瞬間に翌日の惨状を察しましたが、結果は予想の通りでした。
翌日、バスの横転事故が発生します。
主人公たちは椋がバス通学をしていたことを知り焦りますが、結果は回想バスで椋は無事でした。
しかし、それを聞いたことみが泣き始め、事態は急変していきます。
ことみが学校を早退した後、事情を聞きに奔走している際に杏の放った一言はかなり印象的です。
「(私たち)ホントはまだ、あの子の友達じゃなかったのかもね」
ことみに友達を作ろうとして2週間程度経ち、めぐり合って絆が生まれた5人。
でもことみにとっては、5人は楽しい時間を作り出す存在であって、心にしまっていた何かを共有できるような存在ではなかった。
このセリフは、ことみと自分たちの間に明確な距離感があったこと、そしてそれを主人公がうすうす感じていたことを、杏を通じて明示している言葉だと思います。
じゃあ何が足りなかったんだ。
何がことみと主人公たち、特に主人公を引き離してしまったんだ。
それは、主人公が彼女の家を突き止め向かった際に明らかになります。
ことみはルート開始前から主人公と関りを持っていました。
それもとても小さなころ。
そして子供の頃の思い出は、ルートの初期に散らばった様々な伏線が見事に絡み合って、主人公の思い出す過去と繋がっていきます。
「一昨日は兎、昨日は鹿、今日はあなた」
こんなプレイヤーに「?」と思わせるようなシーン一つ一つに明確な意味があったことを、二人の過去の回想で痛感することになります。
そしてそんな二人の過去は、ことみの両親の飛行機墜落事故による死亡によって、引き裂かれていったのでした。
彼女がふさぎ込んだ理由は「両親の死別」と「自分の追わなければならない夢」にありました。
バスの事故は「両親の死別」と結びつき、それが「追わなければならない夢」になったことで、彼女は留学の意思を固めていってしまいます。
そしてそれを変えなければならない、ことみがすべてを置き去りにしていってはならないと考えたのは、残された4人でした。
4.記憶が作り出したものと真実
主人公と他3人の行動は違うものでした。
主人公はことみの家の庭を手入れすることで過去の風景を思い出してもらうこと、そして渚たち3人はことみが弾いていたヴァイオリンを修理することを考えつきます。
彼らは行動に移し始めますが、障害が重くのしかかっていきました。
主人公の場合は時間の問題。
そしてことみと向き合うための孤独な手入れの時間。
一方の渚たちはバイク事故に巻き込まれかけたことで、ヴァイオリンが大破してしまう問題に直面。
楽器屋との交渉の末に修理はできましたが、2か月以上の修理期間を要求されます。
そして庭を直し続ける主人公も、諦めようとする感情が何度も頭をもたげるようになっていきました。
最後まであきらめなかった主人公。
途中星のかけら?を見ることがありながらも、なんとか庭の完成までこぎつけることができました。
そして現れたことみ。
しかし彼女はまだ過去の中に心を閉ざしていました。
それを抱きとめる主人公。
俺が迎えに来たから、もう過去にしがみつかないで欲しい。
そんな率直な気持ちを伝え、ルートは終結に向かっていきます。
そして最後に、真実が語られます。
それは彼女が望んだ誕生日プレゼントの真実。
彼女の欲しがったクマのぬいぐるみは、海を越え砂漠を超え、世界中を旅して彼女のもとにたどり着きます。
そしてそこには、墜落の衝撃に動じず、自らの命の終わりを悟りながらも自分たちの論文を投げ捨て、手紙を書き入れた両親の思いが詰まっていました。
それは彼らの残した最高の結論だと後見人の紳士は語りました。
彼女は最後に、両親が残した本当の愛に、触れることができたのです。
ストーリーはこれで終わります。
次はちょっとしたかった演出の話。
5.このルートの演出は本気だ
僕が強く印象に残っている点として、このルート、最後の演出や展開がものすごくこだわって作られているんです。
例えば庭の手入れの最終日。
ことみと出会う主人公は昔に想いを馳せ、小説の一節を互いに読み合います。
しかし、そこから急に画面暗転が入るとともに「ドゴン!」という効果音。
そしてことみの「でもダメなの」というセリフ。
この演出で一気にプレイヤーを引き込むの、凄いと思いました。
多分よくある演出だと思うんですけど、「CLANNADでやってくるか!」とちょっとビックリしてました。
さらに目を引くのがラストシーンからの怒涛のCG。
かつ多言語での「このかばんを娘に届けてください」という言葉。
これらの演出があることで、より壮大にことみルートが終わっていくのを感じることができました。
ことみの両親の思いと、見ず知らずの世界中の人々の思い。
両親との別れからずっと一人で生きてきたことみにとって、こんなにたくさんの人の温かみが伝わっていくというのは、とっても大きなことだったと思います。
そういったキャラの心情表現も含めて、演出の凄さに感動しました。
あと何といっても庭のCG表現。
主人公の努力によって少しずつ庭が直っていくのもそうですし、回想の中で大切な空間として表現される庭も、全てが終わって大事なものが並べられた庭も、全部に二人の思い出が詰まっていることがよくわかる演出は見事です。
何より最後のクマとヴァイオリンが映ったCGは、ことみと両親を繋げるクマ、そしてことみと今の友人たちを結び付けたヴァイオリンという二つのものが並んでおいてあることで、今のことみがいろんな人に支えられている、ということを間接的に表現していると思います。
怒涛のCGが続きますが、一枚一枚に深い意味があって、僕はこのルート大好きです。
最後の白いワンピースも印象的。
彼女の「子供と大人」の二面性の中でも、「大人」である部分を強調するかのように黒のワンピースを着ていたのがルート中の特徴でしたが、最後のCGでは白いワンピースを着ています。
この白いワンピース、主人公が杏や椋に「プレゼントしてあげたら?」と言われていたものなんです。
それを着ていることは二人が結ばれたという事実を示すことと同時に、「ことみの中にあったどす黒い何かが抜けていった」ことを示しているのではないか、と僕は思います。
ことみの「大人」な部分は過去に悩み葛藤していた時に生まれたものです。
だからこそ、あどけない「子供」ぽかった白いワンピースでも、ことみが着ていれば似合ったんでしょう。
そんなワンシーンでした。
6.考察:過去にどう向き合うか
最後に、このルートの主題の話。
このルートの根幹を占めたのが、「過去の記憶に悩まされる少女」という点であることは間違いないでしょう。
ことみは両親を失ったという悲しい過去、そして論文を燃やしてしまったという自信の罪に囚われ続けていました。
CLANNADという作品がことみを通じて出した答えは、「誰かに救いの手を差し伸べてもらう」でした。
その誰かも過去に向き合うことのできた人、つまり主人公でなければダメでした。
そして彼は庭の手入れという彼女の幸せだった過去に一番近づける行動を起こし、彼女の支えとなることで救い出すことに成功します。
つまるところ、このルートは「過去の悲しみに近づける誰かに支えてもらう」ことこそが、過去と向き合う大事なポイントであると伝えたかったと僕は思います。
ただ、これが現実的にできるのかという問いには難しいと答えざるを得ないでしょう。
自分の過去を主人公とことみの関係以上に共感してくれる人っていうのは、おそらく早々簡単に出会えるものではありません。
ましてそれを支える行動なんていうのはもっと難しいことです。
それこそ恋愛関係にまでいかなければ、真の心の支えにはなれないと思います。
じゃあ何が必要なのか。
僕は「時間」だと思っています。
実はあまりいい意味で言っていないのですが、とあるルートで「時間だけが傷を癒してくれる」っていうセリフがありました。
作中では時間の癒しは明らかにいい意味では用いられていませんが、僕はそれが一番現実的で、合理的で、回り道でも確実な向き合い方だと思います。
逃避みたいに見えるけど、結局は時間の中で風化させなきゃいけないぐらい、どうしようもないことって生まれてくると思うので。
身近な人に相談して吐き出すことも大切だとは思いますが、それよりも自分の中でなんとか消化していくことの方が、僕は大事なのかなぁなんて思いました。
主観が入ってなんかおかしなことになってますが、これが僕がことみルートの中で見つけた主題、そしてことみルートのプレイ中に考えていたことです。
そんな感じ。そろそろ締めに入ります。
7.終わりに
いかがでしたでしょうか。
ことみルート、終盤の展開も相まって僕はかなり好きです。
過去の記憶と伏線の多さ、演出の濃さなどの要素から、二週目を回ってみても楽しめるルートだったと思いました。
多分回っている余裕はないんですけど。
今後のプレイ方針ですが、有紀寧→春原兄弟になる予定です。
草野球は最後に取っておこうかなという気持ち。
勝平はクリア済みですが色々と語りたいことがあるので、もしかしたら記事にして投稿するかもしれません。
ボリュームは普段より小さくなるとは思いますが、よろしくお願いします。
それではまた。さいなら~。
—他ルートの感想は以下のリンクからどうぞ―
・渚ルート
・風子ルート
・藤林姉妹ルート
・智代ルート
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