シン・鬼十則 〜リスク・決定・責任が一致するフィールドで戦え、でないと君は卑屈未練になる〜
栄華を極めた歴史的巨大企業が衰退する話は枚挙に暇がありません。その理由として叫ばれるのは蛸壺縦割組織構造だとか、重層複層決裁構造だとか、減点主義、隠蔽・粉飾体質等々、幾らでも出てきます。しかし、そんな体制、体質、制度の話は二の次三の次、枝葉末節であって本質ではないかも知れません。
人類が形成した最大規模の近代組織で最も派手に破綻したのは15の社会主義共和国によって構成されたソビエト連邦でしょうか。幼少期に買い与えられた地球儀にはソビエト連邦があり、随分大きいなぁ、と思っていました。
このソ連崩壊の原因について論旨明快な説明に出会ったことがあります。『ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼』(松尾匡, 2014年,PHP研究所)です。当時の上司に薦められて読みました。
曰く、彼の国、彼の組織は「リスク・決定・責任の一致」が見事なまでに欠如していた為、それを根本原因として崩壊したということです。
リスクも責任も負わない決定権者によってとんでもない数の餓死者を出したり、海が干上がるような地球規模の自然破壊をしたり、官僚が自身の評価に繋がるKPIだけを追い求め部分最適が極まり全体の経済が停滞したりしました。
なんだか旧日本帝国軍の体たらくと重なるものがあります。
そういえば戦中の日本も国家総動員法による社会主義もびっくりな超統制社会でした。現代日本の大企業もよく社会主義と揶揄されます。リスク・決定・責任の一致に乏しいという事でしょう。日本を代表する老舗巨大企業が、同じく巨大国家であったソ連のように豪快に衰退してゆくのは、つまりそういう事かも知れません。
リスク・決定・責任の一致について、著者は下記のように述べます。
乱暴に言えば、どれだけ「自業自得」な構造になっているか、ということでしょうか。
そう考えると、「リスク」「決定」「責任」の一致は組織の根本原則でしょう。これを見て見ぬふりした体制刷新や制度改革、体質改善は焼け石になんとやらです。流行りのジョブ型雇用を導入したところで人件費削減にはなっても、成長には繋がりません。
そしてそういうフィールドでは決定に関与しない現場、一般市民や一兵卒といった人々が割と悲惨でろくでもない目に遭います。これは歴史が証明しています。
ただ国家と違って企業は出入り自由です。一昔前ならリストラの名の下で露と消えた社員達。今時は「リスク」「決定」「責任」の不一致が著しい企業から率先して脱出してゆきます。
勿論、大本営やクレムリンの悲劇を繰り返さないことで人は少しずつでも前に進んで行けるのだと存じます。”逆命利君”を標榜した財閥は世界最古の歴史を誇りますが、これも日本の企業グループです。
私達が今歩むこの道が、いつか来た道、見た風景でないことを祈る限りです。
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