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シン・鬼十則 ~ルールは自ら創るべきで、与えられるべきでない~

嘘か本当か、『悪法もまた法なり』と宣って毒杯をあおった昔の偉い人の逸話があります。この言葉には色々な思いを馳せてしまいます。

ごはんを食べないと人は死ぬ。林檎は木から落ちる。エントロピーは増大する。ブルシットジョブにまみれると衰退する。この手の話はルールではありません。法則です。
法則ではなく、みんなが守るもべきものと取り決められた約束がルールです。その定義からしてルールと呼ばれるものは全て人工物です。誰かが誰かの都合で創ったものです。そして割とちょこちょこ改定されます。

オリンピック種目含めスポーツのルールも割りと変わります。かつてスキージャンプのルール改定では低身長選手が不利になったと言われます。結果、背が低い日本勢に不利益だったので国内で大きく報道されました。
ルールを決める立場の方々のお国の選手の平均身長が何センチだったのかは知りませんが、低くはなかったのではないかなぁ?と想像します。

かつては電通も無法地帯だった日本の広告業界のルールメイカーとして活躍しました。定価の存在しなかった新聞広告料金や手数料を公定化したり(1944年)。杜撰だった雑誌発行部数の第三者確認機関設立を主導したり(1952年)。当時の最先端テックを用いた民間テレビ放送に社運をかけてフルコミット。産業の立上りを支え様々なルールや商習慣をゼロから創ってゆきました(1953年)。
そして広告業界のルールメイカーとして日本の経済成長を最大限享受しました。結果、1973年には世界最大の売上高を誇るグローバルNo1広告代理店にまで登り詰めました。20世紀のお話です。

ビジネスの世界はルールでいっぱいです。国内の法規制や商習慣はもとより、国際ルール、国際規格も目白押しです。なんでもありの無法地帯よりよっぽど良いのですが、自分が商売を行っているマーケットのルールメイキングの場に自らが関与できているか否かがとても大切になります。
何故なら自分以外の誰か達が、誰か達の都合で創った、誰か達のためのルールの上で徒手空拳に戦っても勝てないからです。そもそも勝負になっているのかすら疑問です。無理矢理に勝とうとすると歪が生じて破綻します。これは法則です。

アップルとグーグルが打ち出したターゲティング広告についての今回の「自主規制」が、世界のネット広告業界を揺るがすこと自体が、両社が競争の枠組みを決める「ルールメーカー」として君臨していることを示す。

日本経済新聞 2021/4/27 23:30

あなたにとっての悪法は、あなた以外の誰かにとっては都合が良い法です。「悪法もまた法なり」と格好つけて毒を喰らっても所詮はルールテイカー、世の中は何も変わりません。かと言ってルールブレイカーに堕ちるのは論外です。

同じ毒を喰らうならルールメイカー側に回る努力として飲み込む方がまだましです。その為になら、皿までしゃぶり尽くしてなんぼです。そこまでしてやっと「周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。」でいうところの周囲を引きずり回す側になるのだと私は思います。

この失われた30年は『技術で勝ってビジネスで負けた』と言われ続けてきました。ルールは自ら創るべきで、与えられるべきではなかったのでしょう。今までも、これからも。

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