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界隈性デザイン ~あなたの人生は、あなたの界隈で9割決まる~

界隈性という言葉を知っていますか?Googleで検索するとトップ(強調スニペット)に下記のように出てきます。

「界隈性」という聞き慣れない言葉は、建築や不動産業界で用いられる専門用語です。 ざっくりいうと界隈性がある街というのは、地元民や来訪者も含めた多種多様な人々が往来し、つながり、コミュニティーを形成している街を指します。

電通報 2017/01/26

実はこの引用元の記事の著者は私です。2017年、私はオープンイノベーションや新規事業開発における「界隈性」の重要性を『都市の界隈性とインキュベーション開発』という名の電通報WEB刊での連載寄稿記事にて提唱しました。

これは2015年に構想し、2016年に設立した金融スタートアップ特化型インキュベーションオフィス”FINOLABで概念を実証した結果に基づく提案でした。

2020年の今、社会人生活を踏み出し10余年を過ごした電通を離れ、全く異なる文化業態の住友商事に転職し1年余り。この「界隈性」はビジネスの場だけでなく、人の人生そのもの、それ自体に非常に大きな影響を及ぼすことを体感しました。そして、より良い人生、生活、つまり【Well-being】を実現するための非常に実効的かつ実用的な手段としてWell-beingに向けた【界隈性デザイン】を提唱することにしました。

結論から言ってしまいますと、『あなたの人生は、あなたが身にまとった界隈で9割決まる』ということです。

どういうことでしょうか?界隈性とはなんでしょうか?ご説明してゆきます。

近いニュアンスの言葉に「あなたは、あなたの最も親しい友人5人の平均である」という言葉があります。少し調べたところ、原典は20世紀中盤に活躍した自己啓発の専門家ジム・ローン氏の言葉のようです。正確には下記のように述べています。

You are the average of the five People you spend the most time with.
(あなたは最も長い時を共に過ごす5人の友人の平均になる。)」

Aimee Groth Jul 25, 2012, / businessinsider.com

同氏は1930年、約100年前生まれの方です。彼が生きた時代において、この格言は真理を突いたものだったのだろうと思います。だからこそ長年語り継がれている。
しかし時は進み21世紀も20年が経った現代においては少々事情が異なります。当時は存在しなかったインターネットやスマートフォンといったテクノロジーによって、私たちの生活環境は劇的に様変わりしています。

20世紀中盤においてはアナログな時代です。当然ネット等存在せず、移動も少なく、コミュニティは今よりよっぽど狭く濃密で、同じ人間と関わり合う時間はずっと長かったでしょう。結果、その関係性は今よりもずっと深いものだったと想像します。
そんな環境においては「最も長い時を過ごす友人5人」は、人生のほとんどの経験や思い出を共有していたとしても違和感はありません。

しかし、今日の私たちはどうでしょう?SNSやソーシャルメディアの普及、都市化の進行、人材の流動化、グローバルな移動の容易化により、人生において関わる人間、触れる人間の数は指数関数的に増えました。
ネットやメディアから得られる情報量も膨大で、情報の洪水に日々見舞われています。
すると、一人一人の友人と過ごす時間の長さは圧倒的に少なく、希薄になったのではないでしょうか?

私たちは今の時代、誰から、何から、どのような影響を受け、「自分の幸福の輪郭」を形づくっているのでしょう?今でも仲良し5人の平均なのでしょうか? 閉鎖的なコミュニティで生涯を過す場合ならいざ知らず、多くの方は違うでしょう。
私は、今現在、私たちを形作っている、友人5人に相当する、人生の幸福、つまりWell-Beingに影響をあたえる概念を【一人一人が身に纏った界隈性】と名付け呼んでいます。

ここで言う界隈性とは、身の回りの様々なコミュニティや触れているメディア、住んでいる街や働いている職場、SNSから得られる雰囲気・空気感や情報が織りなす、得も言えぬ空気感、文化や常識のようなものです。

実に掴みがたく、分かりにくい概念です。アナロジーとして「渋谷界隈」や「原宿界隈」、「丸ノ内界隈」といった土地・エリアに根差した界隈性が解り易いでしょう。何となく渋谷はイノベーティブであったり、原宿はお洒落だったり、丸ノ内は超一流であったり、という印象を抱くと思います。つまるところ、界隈性とはそれらと同じような「主観的な印象」のようなものです。若い方はTikTokにおける”和室界隈”というワードが想像し易いでしょう。

「付き合う友人は選びなさい」という格言は、少数の友人が人生に大きな影響を与えるという経験則から語られた人生の本質です。しかし、現代においては付き合う友人を選ぶだけでは人生は変わりません。そうです、友人も含めた、あなたが普段接する界隈、自分自身の界隈性をデザインしないと人生は変えられないのです。

「何となく幸せではない気がする」「充実しない」「疎外感がある」「焦りや不安が尽きない」といったWell-beingに至らない、大きな閉塞感が日本全体を覆って久しいと思います。しかしこの界隈性のデザインを一人一人が知り、実行することで打開策が見えてきます。

プランニングやマーケティング、プロモーション、ロビーイング等の実務家として培った視点から、この「界隈性デザイン」について、noteで綴ってゆきたいと思います。

ぜひご高覧ください。


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