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大正バスケットのお手入れ

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藤のバスケット。通称大正バスケットは、その名の通り大正時代に大流行したハイカラな携帯用旅行鞄です。着物で旅行する時に使用しています。2個とも川越骨董市で購入。入手当初は手入れが必要な状態だったので、購入先の骨董屋さんに手入れ方法を教えて頂きました。長く大切に使用するには手入れが欠かせません。自分なりに楽しみながら実践した手入れを綴ってみようと思います。


お手入れ道具

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  • 霧吹き

  • 豚毛ブラシ2本(汚れを落とす用、油とラノリンを塗布する用)

  • 植物油(オリーブオイル、荏胡麻油、椿油など)

  • ラノリン(保湿艶出し用なので無ければ良い)

  • 布2枚(植物油とラノリンの塗布用、ラノリンの拭き取り用)


お手入れ方法

全体の埃を豚毛ブラシで払う。

霧吹きに水を入れ、金具や革を避けながらバスケット全体に吹きかける。

再び豚毛ブラシを用い、水で浮かび上がった汚れを優しく洗う。

〜自然乾燥のため日の当たらない場所で一日放置〜

植物油を布に含ませバスケット全体に塗布。細かい所はブラシで塗り込む。

〜塗布した油が落ち着くまで日の当たらない場所で放置〜

ラノリンがない場合は以上で終わりです。

植物油を塗布してから一日放置したバスケットに、今度はラノリンを塗布。金具部分だけを避け、革も含めて全体に塗布。ベトベトになるほど塗布するのがお勧め。豚毛ブラシを使い細かい所まで塗り込む。ラノリンを塗り込むことで保湿と艶出しになり持ちが良くなるそう。

〜ラノリンを乾かすために一日放置〜

一日放置してもまだベトベトしていますが、乾いた布で磨くように拭き取る。丁寧に磨けば艶が出て綺麗に仕上がる。

しばらくは少しベトベトした状態が続きますが、時間が経つと落ち着いてきます。物によっては時間がかかる場合もあります。ラノリンはアンティークの革製品を手入れするのにお勧めです。ヴァセリンとラノリンを混ぜ、オリジナルクリームを作っている方もいました。ラノリンは肌や髪にも使用できるので、安全面でも安心です。革靴に使用するのはどうなのか微妙なところですが。


お手入れあと

手入れしてから2年経っていますが、乾燥しておらず艶もあります。購入当初は乾燥のせいでガビガビしていましたが、手入れで綺麗な状態になりました。保管場所は風通しがよく、湿気が滞留しない所がいいです。頻繁に使用することで防カビ対策にもなります。

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こちらはまだ手入れをしていないバスケットです。一見、昭和中期頃の物に見えなくもありませんが、戦前の物です。よく見る大正バスケットと異なり、留め具部分が個性的で可愛いです。

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破れかかっているラベルを読み解くと、「平和記念東京博覧会銅牌受賞 一番地清水商店謹製 本藤パスケット 杞柳パスケット 日乃出商會」と書かれていると思います。バスケットでなくパスケットが気になりますが、このバスケットは、大正11年に上野で開催された平和東京博覧会に出品された品物ではないかと思います。文化村が14棟造られ、文化住宅という言葉が一般に広まった博覧会です。ラベル付きというのも珍しく貴重だと思います。

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ちなみに平和祈念東京博覧会のポスターです。日本人女性が、旅行先のギリシアで描いてもらったような一枚ですね。平和色の緑が基調となっており、勝利と栄光のシンボルである月桂樹を頭に載せています。緑色は大正7,8年の流行色でもありました。

上二点よりも小型のバスケットです。こちらは、手入れ済みで売られていました。

名札に氏名が書かれており、若狭高浜の一瀬順さんという方が使っていたようです。昔の方が使用していた形跡が残っていると、少し嬉しくなります。


終わりに

バスケットに限らず、戦前の籠や革製品は手入れがされていない物と聞きました。革製品は手入れを続けていれば100年は持つそうです。当時、日本人にとって舶来品の手入れは一般的でなかったようです。所作や背景を気にせず、文明開化の名の下に使用していたのかなと推測してしまいます。戦後に放置されボロボロになった可能性もあるかもしれませんけど…。