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プラトン社

過去の記事で、中山太陽堂について漠然とした内容を書いた際に、プラトン社が発行していた「女性」という雑誌について少し触れました。先日「女性」をまとめて入手することができたので、この雑誌の表紙絵と挿絵を紹介してゆきます。雑誌の内容について取り上げると長くなりそうなので、気が向いたら書いてみたいです。



♣プラトン社とは

プラトン社は、大正11年(1922)に中山太陽堂が創設した出版社です。啓蒙と実用を兼ね備えた女性のための文芸雑誌「女性」(大正11年5月創刊)と「苦楽」(大正13年1月創刊)を発行していました。6年という短期間で廃業となりましたが、レベルの高い作品を掲載し人気を呼んだそうです。


♣図案家 山六郎

山六郎は京都高等工芸学校卒業後、中山太陽堂に入社。プラトン社の創立により中山太陽堂の意匠部から出向し、図案家として装丁を担当。氏が手掛けた「女性」のロゴ、装丁、イラストは当時から高い評価を得ています。

余談ではありますが、戦前の染織業界で活躍していた人の中には京都高等工芸学校出身者が多くいました。


♣女性の表紙絵

大正末〜昭和初期の高級グラフ誌や販促品は、西洋のファッション誌を参考にしているであろう図案やイラストが多くあります。特に「女性」は、フランスのファッション誌「Gazetta du Bon Ton」のイラストを模写したであろう扉絵が多いです。「女性」が発行されていたのは1920年代後半。1920年代、西洋では女性を抜きに語れないほど、様々な場面で女性が登場し活躍しています。「女性」の創刊号には、新しい時代の到来であるかのような一文が沿えられました。「20世紀は婦人の世紀である」。そのような表明を扉絵でも表現していたのかもしれません。

今回入手できた8冊の扉絵です。大正12年、大正14年、昭和3年。

♧大正12年10月号

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♧大正12年11月号

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♧大正13年3月号

♧大正14年2月号

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♧大正15年2月号

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♧大正15年3月号

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♧昭和2年4月特別号

♧昭和2年5月号

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♧昭和2年12月号

♧昭和3年2月号

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♧昭和3年3月号

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♧昭和3年4月号

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♧昭和3年5月号

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♣女性の裏表紙広告

裏表紙は自社商品の広告です。お洒落で洗練された美しい広告ばかり。中山太陽堂の一ファンとして愛おしさが込み上げてきます。

♧大正12年

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♧大正13年

♧大正14年

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♧大正15年

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♧昭和2年

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♧昭和3年

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♧頁内のカット

「女性」のカットをランダムに並べてみました。各作家のタイトル部分に使用されていることが多く、モダンな流行が取り入れられています。ただ、一体何だろう…?というようなものもポツポツあるので、何をモチーフにしているのかが気になりました。カットには製作者のサインが入っているので、誰が担当したのかが大体分かるようになっています。

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♣苦楽の扉絵

プラトン社から第二の雑誌『苦楽』が創刊されたのは1923年12月。
『苦楽』は全53冊が刊行され、その内31点の表紙を山名文夫が担当していました。
私が入手したのは『苦楽』ではなく『クラク』。『クラク』と改められたのは1927年3月のこと。『苦楽』のフォントデザインの方が面白みがあって良かった気もします。

♧大正15年

♧昭和2年


♣苦楽の裏表紙広告

『女性』と同じく裏表紙は自社商品の広告になっています。

♧大正15年

♧昭和2年


♣演劇・映画の表紙絵

第三の雑誌『演劇・映画』が創刊されたのは1926年1月。
この雑誌を創刊した目的が、創刊号に述べられています。

劇壇にも映画界にも好い雑誌が無い。本当の意味の批評雑誌がない。第一線に立つ雑誌がない。(…)体裁に拘泥せず、内容本位の純然たる研究雑誌を作ろうではないかと云う話がプラトン社の中山社長と文藝春秋の菊池寛氏との間に持ち上がって、幸ひ文藝春秋社もプラトン社もドラマ・リーグを主宰している関係上、その機関をもかねて爰にこの「演劇・映画」が創刊される運びになったのである。

『モダニズム出版社の光芒プラトン社の一九二〇年代』より

『女性』と同じく山六郎による美しい扉絵です。

♧大正15年3月号

♣演劇・映画の裏表紙広告

♧大正15年3月号


♣プラトンインキ

中山太陽堂が1919年に設立した日本文具製造株式会社のプラトンインキ。いつの物か不明ですが、1923年にプラトン文具株式会社に社名変更されたので、1923年3月迄に販売された物だと分かります。また、中山太陽堂文具部と表記されているので、初期に販売された物かもしれません。

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プラトン社のものを入手したら追記していきます。