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PR誌「三越」

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大正6年6月発行のPR誌「三越」です。表紙は三越嘱託専属の杉浦非水によるもの。明治後半から昭和初期まで、数多くの表紙を手掛けています。

三越呉服店のPR誌

明治32年1月、三越の前身三井呉服店は日本で初めてとなる商業PR誌「花ごろも」を刊行。同年に通信販売も開始。その後、明治32年6月に「夏衣」、明治33年1月に「春模様」、明治33年6月に「夏模様」、明治34年1月に「氷面鏡」、明治36年11月に「みやこぶり」と都度タイトルが変わりながら刊行されてました。当時のPR誌は、上流階級の顧客に無料配布されたカタログです。また、明治期〜大正期のPR誌は文芸誌としての側面も持っており、尾崎紅葉や中山白峰 が執筆する小説に三井呉服店の商品を取り入れ、広告的な役割も担っていました。

明治36年8月に月刊誌「時好」を創刊。その翌年の明治37年、東洋のハロッズを目標に、三井呉服店から三越呉服店へ社名を変更。「デパートメントストア宣言」を行います。明治44年3月からPR誌「時好」は「みつこしタイムス」と改題されてました。みつこしタイムスとは別に、明治44年に新しいPR誌として「三越」が創刊され、大正4年に「みつこしタイムス」は「三越」に統合されています。このタイトルは他百貨店と比較しても、インパクトがあって印象に残り、「三越」というブランドを展開しながら定着させるには、これ以上にないタイトルかと思います。

現在でも、東洋版ハロッズのブランド力は侮れません。もちろん戦前の商品に限りますが、人を惹きつける魅力が充分備わっているからです。骨董市でも、「○越」のマークが入っている商品を見つけると、心がトキメキます。当時から、三越のブランディングは他店と比べ物にならなかったので、現代の私がトキメクのも何らおかしい事ではないのかもしれません。

今回は大正6年(1917)の「三越」を選びましたが、昭和2年のPR誌にも関心を持っています。三越が染織図案に初めて「モダン」という言葉を用いているので、どのような商品が並んでいるか気になります。また、流行を追うにはディケードで見るのが良いので、是非入手したいものです。


流行や新柄の生地と半襟

「三越」を開くと、三越特製の香水詰合箱と流行新型のカラーの商品広告から始まり、和服関連の紹介が12頁ほど続きます。特にハイカラな模様はなく、古典的な模様のみだったので4頁だけ選んでみました。

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うす物類の長襦袢には、友禅越後縮、白地にドロンウオーク入のものなどが人気とのこと。流行のうすもの地は縞絽、絣明石、縞明石、壁上布などがあります。

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流行の半襟地は縦絽絹縮と縦絽縮緬。色は鼠色や藤色、紺。


夏向け座ぶどん其他と婦人持袋もの

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布団は温かそうな見た目ですが、近江麻と越後縮麻なので汗をかいても肌にまとわりつかない素材で作られています。ただ、着物と同じような模様なのが気になりました。そう見えるのは、宇野千代のせいにしておきましょう。持袋は、鹽瀬、絽織透し、絞羽二重などがあり、夏らしい古典模様があしらわれています。


夏向けの鞄と化粧ケース

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あけび製のバスケットや制服・衣裳用鞄は旅行用でしょうか。薬ケース、紳士・婦人用化粧道具は革製で値が張るばかりです。


お座敷用具・団扇と団扇置

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夏のお座敷道具は、桐と竹素材で出来ているものばかりです。舟形の巻煙草入れが面白いけど、どういう方が買い求めたのか少し気になります。芥子模様の団扇は杉浦非水による図案で、3本セットで55銭(約1,400円)。

他には夏向けのお髪飾り、食器なども載っています。他百貨店と同様に、着物や装飾品はどれも対象年齢が記載されています。アンティーク着物を好んで着ていると、対象年齢を考慮できていない場合が多々あるかもしれません。ファッションと定義せず気をつけるようにしていますが、当時の人からするとどのように映るのかな…と考えることがあります。