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昔の着物

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昔の染織図案や着物に関することをまとめています。
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記事一覧

六年間の和服生活を振り返ってみる

一度は冷めていた明治時代〜戦前昭和の文化と和服に対する気持ちが再燃し、夢中で追い始めてから早六年が過ぎました。今では当たり前のように生活の一部として溶け込んでいると思っています。 自分の中で、戦前文化と和服における思考が以前よりは形になった気がしたため、ふと、この六年前を振り返ってみたくなりました。 かなり個人的な内容なので、退屈な記事であると予めお伝えしておきます。 たかが装い、されど装いまず、和服を着続けたいと共鳴した岡倉天心の挿話を紹介します。 怒髪天を衝くといった

足利銘仙の図案

写真フォルダを遡っていると、2018年に足利学校で撮影した銘仙行灯の写真が出てきました。記憶にないので調べてみると、「足利灯り物語」なるイベントのために設置されていたようで、行灯の周囲は足利銘仙の図案が貼られています。 ライトアップの写真は撮っていなかったようで、その様子は改めてネット記事で見ました。 足利学校付近には、足利織物伝承館なる施設があり足利銘仙の歴史を学ぶことができます。織物館のWEBサイトでも、歴史が解説されているので、興味のある方は覗いてみてください。 さら

皆の憧れ夏の令孃寫眞

戦前なりきり寫眞和洋装問わず、昔の装いの愛好者は、当時の人物になりきって撮影を楽しんむ人が多くいらっしゃるのではないでしょうか。抒情画を意識したようなポーズ、古写真のように加工した画像等を度々目にします。また、通勤時に和田倉門守衛所跡や三菱一号館美術館周辺で、撮影している人を見かけることがあります。ちなみに今日は、洋装の男性二人が撮影をしていました。カンカン帽、多分麻のセーラーズボンにシャツといった夏らしい格好でした。 このような撮影行為を、「戦前なりきり寫眞」と勝手に命名し

配色總鑑遊び1933-35

時々、手彩色の真似事がしたくなります。私の場合は、アナログではなくアプリを使用しているので、デジタル着色になりますが、昔の色を想像しながら着色するのは楽しい遊びです。 今まではただの遊びで満足していましたが、着色した古写真を活用したい気持ちが湧いてきました。色々と思案したところ、和田三造氏の『配色總鑑』を編集した『配色事典 大正・昭和の色彩ノート』、『配色事典応用編 大正・昭和の色彩と商品デザイン』を利用し、簡単なルールを定め、着色した古写真の着物の色を変更する遊びを試みる

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戦時中の染織図案「一億一心」

斎藤佳三のリズム模様

紳士についてまとめている途中ですが、久々に和服関連のことを書こうと思います。きっかけは古本屋で見つけた「斎藤佳三の奇跡-大正・昭和の総合芸術の試み-」の図録。2006年、東京芸大美術館で開催されたコレクション展です。 戦前のモダンな展覧会で、斎藤佳三の作品を目にする機会が多々あります。中でも和服関連の作品は見応えがあり、風変わりで面白い模様、和服生地を利用した洋服、和服を洋装化した新しい提案など、当時のモダンの一面を知るには最適な作品ばかりです。 斎藤は幅広い分野で才能を

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三越呉服店の染織図案

下駄のすすめ

振り返ると、この3年は下駄ばかり購入していたことに気が付きました。シューズクローゼットの半分は下駄で埋まっています。私は元々下駄が大好きで、草履は母親のお下がり数足しか持っていませんが、全く履きません。戦前も、歩きやすさから都市生活には草履の方が時代に合致していました。利便性を備えていたとしても、下駄のスッキリした見栄えには敵わないものがあります。その魅力について私なりに綴ってみようと思います。 下駄に魅力されて下駄は子供の頃から身近な存在でした。いつも祖母が選んだものを履

昭和3年主婦之友「着附けの秘訣」

久々に昔の雑誌を購入しました。主婦之友は初めてです。昭和3年5月號は美容研究號でもあり、美しくなるための化粧法、髪型と手入れ、着附けなどが指南されています。化粧法は中山太陽堂のカタログや近代美粧と同じような内容ですが、昭和3年の着附け、髪型・髪の手入れ、化粧と美容について要点のみをまとめて紹介します。今回は着附の秘訣です。 姿を美しく見せる着附けの秘訣遠藤波津子女史による、着物の仕立て方、体格ごとの着付け方のアドバイスが紹介されています。女史は、大正15年に婦女界社より「正

松阪屋の子供着物

コロナの流行でお目当ての骨董市が休会続きのため、古い物を求めてネットに頼り切りな日々を過ごしています。先日、ヤフオクにて素敵な染織図案集を発見しました。松阪屋の染織図案「おさな集」です。昭和6年発行なので興味の範囲から1年ずれていますが、この可愛さに心奪われました。とても手頃な値段で落札でき、自分でも吃驚したくらいです。 アンティーク着物が好きな方に見て欲しい可愛さなので、一部を切り取ってみました。背景にキューピーを配置し、可愛さを強調しています。 詳細説明はなく、カテゴ

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昔の染織図案を用いた復刻帯

唐草模様の雛形

明治14年刊行の雛形。唐草をモチーフに様々な模様が展開されています。着物や帯の模様を見る時にも役立ちそうなので、一覧にまとめてみました。浴衣の記事で取り上げた「四條河原夕涼之図」に描かれている、右から2番目の役者は瓢箪車模様の帯を締めています。特に説明は不要なので、市松模様や縞模様などの定番以外の模様を見て楽しんでいただけたらと思います。 染織図案ではありませんが、明治末から徐々に派手化していく模様と比較すると、こちらはかえって洗練された印象です。時代を経ると古典模様と呼ば

男羽織と男長襦袢

明治中期頃の男羽織と男襦袢の図案帳を探しながら、当時の羽織と長襦袢についても少しずつ調べています。知りたい事に中々辿りつけずにいますが、現時点での備忘録として残しておこうと思います。 羽織羽織という名称の起源は諸説あります。 これを着ること鳥の羽の如き 道中を歩く時の埃よけのため、上衣の裾を折って帯に挿むことから服折(はおり) 室町時代に流行した鳥の羽毛で織り交ぜた服からその名が付いた 放り着ることから名付けられたハウリ 等等あり、これといった定説はないようです。

東京自慢名物會の見立模様

浴衣の記事で少しだけ触れた東京自慢名物会。東京自慢名物会は明治29〜30年間に出版され、広告的な役割を担っていた大判錦絵です。東京の名店、美人芸妓や芸人、名所名物をモチーフにした見立模様で構成されています。中でも染織図案のような興味深い見立模様の作者は、梅素薫という図案家です。大久保尚子『錦絵揃物「東京自慢名物会」「見立模様」の研究ー見立意匠にみる「江戸」「東京」の交差ー』には、見立模様について以下のように書かれています。 また、各見立模様の解説もいくつかあるので、切り取っ