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オッペンハイマー博士とスティング

 最近、英国の歌手、スティングの「ラシアンズ」という曲が頭の中によく流れます。
 クリストファー・ノーラン監督、キリアン・マーフィー主演の映画『オッペンハイマー』の記事をよく見かけるからです(アメリカでは7月21日公開。ハリウッドの俳優組合のストが始まったために、俳優たちが映画のプレミアを退席したこともニュースになりました)。

 オッペンハイマーは、「原爆の父」とも呼ばれる物理学者で、第二次世界大戦下の連合国側の原爆計画を主導しました。
 彼の名前を、私は「ラシアンズ」の歌詞で知ったんですね。最初は歌詞の意味もわからず、パイプオルガンの重厚な響きに魅せられたのですが、「オッペンハイマーズデッドリートイ」というフレーズに、「どういう曲なのだろう? オッペンハイマーって誰?」と思ったものです。


How can I save my little boy from Oppenheimer's deadly toy ?
オッペンハイマーの破壊的なおもちゃ(原爆)から私の小さな息子を救うにはどうすればよいのか


 ラシアンズはロシア人たちという意味です。欧米諸国とソ連(1991年まで存在した国。今のロシアとウクライナなどを含む)の間で緊張が高まっているのを受け、イデオロギーに関係なく、ロシア人だって子どもを愛しているはずだ、と平和を説く歌詞になっています。

 この曲は、もとはポリスのボーカルだったスティングが、1985年にソロで発表したアルバム『ブルータートルの夢』(名盤!)に収録されています。
 ただ、私が「ラシアンズ」を初めて聴いた時には、欧米とソ連の対立は既に過去の話になっていて、ソ連は崩壊寸前でしたから(悪い崩壊ではなく、良い国に変わるための崩壊だと受け止めていました)、歌詞の内容がずいぶん古めかしいものに感じられました。
   
 まさか、再び「ラシアンズ」の歌詞がリアルに感じられる時代がくるとは。「イデオロギーは違っても、ロシア人だって自分の子どもを愛しているはず」と問わなければならない時代…。
 去年の3月には、スティングがウクライナ支援のために、「ラシアンズ」の新バージョンを公開しました。

日本語訳付き。


ウクライナ支援版


アルバム『ブルータートルの夢』。三曲目が「ラシアンズ」。


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