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読書感想文

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海外文学や現代文学の感想文。
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2024年7月の記事一覧

創作大賞一口感想

 創作大賞2024年にエントリーなさった皆さま、お疲れ様でした。  去年の創作大賞が縁で、多くのnoterさんと出会えたので、今年も楽しみにしていたのですが、特に7月に入ってからは、私自身も創作にかかりきりだったこともあり、新しいnoterさんに出会うどころか、フォローしている方の小説でも、読めない分がありました。  そんなわけで、とても不完全燃焼な気持ちなのですが、その気持ちを吹っ切るために、「完読できた小説」に限り、一口感想を書いてみます(以下、私がフォローした順にな

『プロット・アゲンスト・アメリカ』 現代の映し鏡のような小説

 フィリップ・ロスの『プロット・アゲンスト・アメリカ』は、1940年のアメリカ大統領選挙で、ルーズベルトではなくリンドバーグが大統領に選ばれる世界を描く歴史改変小説です。  リンドバーグは、大西洋横断飛行に世界で初めて成功したパイロット。アメリカだけでなく、世界中で大人気だったそうです。ただ、ナチスの高官たちと親しく、ユダヤ人嫌いを公言していたので、第二次世界大戦前後を舞台とする小説では、イギリスのエドワード八世前国王(離婚歴のある女性と結婚したために、王位を弟のジョージ6

2024年6月読書記録 強烈な短編集二つと太宰治

 6月に読んだ海外小説は3冊、『プロット・アゲンスト・アメリカ』は別記事で感想を書く予定です。 グレイス・ペイリー『人生のちょっとした煩い』(村上春樹訳・文春文庫)  村上さんの翻訳なのと、表紙にエドワード・ホッパーの絵が使われていることに惹かれて購入しました。  強烈な短編集です。個人の短編集でここまでエッジが効いた作品ばかり集めたものは読んだことがありません。  村上さんの翻訳だからと、カポーティやフィッツジェラルドの短編のような美しく繊細な作品を期待していたら、シ