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青空文庫

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2022年7月の記事一覧

谷崎潤一郎『細雪』 時代の変化で読み方も変わる 【読書感想文】

 今、谷崎潤一郎の『細雪』を読んでいる。ジェーン・オースティンの『高慢と偏見』とともに、学生時代に繰り返し読んだ作品だ。あまりに何度も読みすぎたので、その後は手に取ることもなくなっていた。  ところが、先日noteでフォローしている方が谷崎の『吉野葛』を紹介していらしてーーこれも大好きな作品なので、青空文庫で再読してみた。一度谷崎の世界に入ると、とまらなくなり、青空文庫にある作品を次々に拾い読みして、『細雪』にたどり着いた。  『細雪』と『高慢と偏見』はどちらも、気軽に読め

あえて現実と距離を置く 山本周五郎とシューベルト 【読書感想文】

 若い頃は、現実を直視しなければとストイックに考えていましたが、今はほどほどにしています。他人の苦しみに無関心になってはいけないけれど、私が世を憂いて落ち込んでも、それで何かが変わるわけではありません。  時にはあえて現実と距離を取るように心がけています。情報が洪水のように押し寄せる時をやり過ごし、心の準備ができてから現実と向き合っても、遅くはないのでは。  つい先日、そんな風に現実と距離を置いていた時に出会ったのが山本周五郎さんの小説でした。noteでフォローしている方が