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裏ひよこ日記 夜、B面を打ち出してきた

今日?

今日。

今日?
(ウソよね?)

今日なんならいまから。
(マジでいってんの?)

…えっとー

クククッ。ウソだよ

え、そうなの?
(なーんだ。)

腹減ったから晩飯にしようぜ。着替えてくる。

う、うん。わかった

わたしは急ぎキッチンに戻ってオーブンの中身をチェックする。


全くいっつもこんなんでからかうのやめれっつうの。

あ、よし。きれいに仕上がっている。いい焼き色だ。良き良き。

本日は降って湧いたご褒美の3日間の有休休暇初日でずーーーっと寝ていたのでなんとなく夕飯を頑張って作ってみたのだった。

しばらく家事とか丸投げの丸投げで交代してもらっていたのでここらで回収しないといけない。明日は家中の掃除洗濯しないとホムパするんだった。買い出しもしないと。

アルベルトは今香港に行ってて帰ってくるのは来週の真ん中辺り。アルベルトとはちゃんと連絡を取り合っていてマメな彼は欠かさず連絡をくれる。時差がありすぎるのでなかなか長く話したりは難しかったりもするけれど。クリスマスのあの日からやっぱりいろんな事があって今に至る。説明をめちゃめちゃ端折ったけれど。

そう、アルベルトとフレッドは何か秘密会議をしたらしく協定を結んだらしい。
内容はわたしには教えてくれない。
で、アルベルトはイヤイヤ渋りまくっていたトラウマ治療に自分の意思で再び通い出した。
これにはクレアさんが驚いていた。

ひよこちゃん。アルベルトが、あの全然人の話聞かないヤンデレが治療を受けだすなんて、なんて立派な溺愛ストーカーなのかしら。正規のスパダリのルートに入ったのね?とかなんとかサロン・ド・テで言っていた。

ヤンデレもストーカーもわたしには特にそう思わないけれどスパダリには納得だ。そもそもスパダリではないか。ルートに入らずとも最初っからスパダリだ。

クレアさんに言わせるとひよこちゃんはそういうズレたところがめちゃ可愛いからそれでいいのよ。て頭をなでなでしてくれた。推定年齢26にもなろうかという年の年明けの話だ。

夕飯はパプリカのファルシーと冷蔵庫にたくさんたくさん使いかけの野菜があったからそれを全部スープにした。で、おわり。
簡単だけど野菜がいっぱい。わたしのカサカサお肌の回復にはビタミンをた~っぷり摂らなければならない。あと、ゆっくりバスに浸かる事とたっぷりの睡眠。

…そりゃわたしにもわかってる。

大好きな人とすることすれば女の子はうんと見違えるくらいにキレイになることくらい。大好きな人とそんな事すればうるツヤボディになることくらいわたしにだって十分わかる。ちゃんと立証済みだ。だってもういいお年頃のオンナなんだから未体験未経験ではないのだ。

そんなことをツラツラと頭によぎらせながらテーブルの準備をしていると着替えたフレッドがキッチンにやってきた。

お、ファルシー!今日は作ったんだ?

うん。食材傷んじゃう。もったいないし

ありがとな。なら白を出すかと通りすがりにと頭よしよしぐしゃぐしゃワシワシ。いつもの2倍の勢いで頭をワシワシしてきたのでお団子頭のゴムが外れて髪が落ちてきた。

わたしがむすーとしたのに気がついたフレッドは

すまんすまんと言いながら簡単に髪を手ぐしでほぐしてたのが動きがピタッと止まった。

なに?

あ、いやー髪のびたなー。って

いまやわたしの髪は肩下胸のあたりに届きそうな今までで一番長い髪になっていた。切りに行く時間がなさすぎてどんどんのびていっただけなのだけど。

うん、のびたね。美容室いかなきゃ

切るのか?

白ワインのコルク栓を器用に開けながらわたしに聞いてきた。

考え中。

そっか。

おまえちょっと飲む?

うん。少し

りょ。

2人分のワイングラスを出してきてソムリエみたいにワインをそそぐ。それをなんとはなしに
じーっとみてたら

あ、なに?惚れた?とか言い出した

さあ。

さ、飯だ飯!久々の家飯!

いただきまーすと母語で言うと
フレッドもいただきますと私の国の言葉でいった。なかなかに流暢で。

あれ?

ふふん。前より上達したろ?

うん。びっくりした。

お前ばっかりハンデがありすぎるもんな。

そんなこと考えてたの?

まあ。お、めっちゃうまい。やっぱ家飯だよなー。

そ?ありがと

珍しくテレビはつけっぱなしのまま夕飯をたべている。ニュースがずっと流れている。
うちはご飯の時はテレビを消す。食事の時は会話を楽しむがモットーなのでおしゃべり以外の音がしているというのはなんだか不思議だった。

消さなくていいの?
ああ。今日はちょっと見たいニュースがあってな。気になるなら消すけど。

いや、全然構わないよ。

…はい、もしかしたらもしかしてわたしが変にギクシャク身構えたりしてるのを気がついているのかな?

あたいもいい年のオナゴだからいつまでもコドモっぽいことにこだわってたらあかんやつや。

とか食べながら考えまくっていると
いきなりフレッドが笑い出した。

なんすか

眉間にシワが寄ってるんだが。

え?うそ?


ナイフとフォークの文化生活圏のフレッドはスイスイとキレイな所作で食べながら突っこんできた。

かたやお箸の国の人だからのわたしはお箸でご飯を食べている。

じっと手元をみられてる。

う、なに。ヘタ?

いや、器用に使うなーって感心してた。

あ、ほんと?ありがとう。

なかなかうまくいかないんだよな。箸使うの

お箸も練習してんの?

ああ。奥さんがお箸の国の人だから。使えたほうがいいじゃないか。

…そんな事考えてたの?

当たり前

え、もしかして私の国の言葉も?

ああ。

(ヤバい、推せる)


フレデリック大先生さすがです!

よろしい。

褒められたフレッドはニヤリとして白ワインをすいーっと飲み干し二杯目を注いだ。


今日は

…はい

今日はちゃんと寝れたのか?あれから

もちろん。起きたらお昼だった

はははっ。ちょっとは役にたったわけだ

(なんだ?なんか自信なさげ?)

役にたったとかそういう風にいわないの

あ。うん。

んーと。うまく言えないけども
そっちはボランティアとか単なる好奇心とかからかったとかじゃないんだよね?

当たり前なこというな。
オレをなんだとおもってるんだ?

 いやだって、今までなんにもなかったから
そういうの無くても全然平気なタイプなんだとばっかり

そんな簡単に手だせるかよ。

みるみるフレッドの顔が赤くなってる

あれ?どしたの?酔った?


フレッドはそれには答えずにドバドバと三杯目のワインをいれて一気飲みした。

これ。この食器だけど

うん。

後で洗うから。

うん

ごちそうさまでした。とても美味しかったです。いつもありがとうございます。私の国の母語で言いながら席を立ってこっちにやってきた。

え、はい。どういたしまして



はい?


ちょっと?

ずっとだよ。
冗談かと思ったのか?

うん。

気恥ずかしいとか照れるとかなんていってられない。やっとできたのに今更引けるか。何年待ったと思ってる?


おおっとー?
(なんかこのセリフどっかで聞いたことあるぞー?てあっちのフレッドがあっちのひよこお姉さんに言ってたやつや…て、ことはガチだ。これ)


後で全部オレが片付けるから。





















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