超ショートショート データ放送の効果音

「ピッ」

という文字それぞれに濁音をつけなくてはいけない。そんな音が、星空の下の住宅街を散歩している私の耳の中に入ってきた。

「ピッ」
「ピッ」
「ピッ」

この人、データ放送なんかやってる。古いな。

恐らくお婆さんなのだろうな。



怖い。

この人、もう1時間はデータ放送をさまよっている。

テレビに閉じ込められているのかも。逆貞子。おばぁが吸い込まれた、テレビに。多分。

「ヒュン」

吸い込まれるときは、こんな音が鳴るのだろうか。

いや、音は統一されている。絶対に

「ピッ」

だ。

その音がやんだのは、それからさらに48分後のことであった。

人間って、怖い。


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