お先にどうぞ

最近、二人の友達から同じ時期に再会し謝罪される。

一人目は、男友達で「久しぶりに会おう」と連絡があった。結婚するまではよく連絡を取って遊んでいたが、彼の子どもが次々生まれて、子育てでなかなか時間が取れなくなる。

2年に1回ぐらいのペースでしか会えなくなり、彼はたまの空いた時間は趣味のバイク仲間との予定を優先し、タイミング悪く僕からの誘いを断り続けていた。

その旨を会った際に謝罪される。

「網村の方が仲良いからこそ断れるけど、バイクという趣味で繋がるとはいえ、目上の方もいたりし、関係の浅い人の誘いの方が断れない事が多い。だから甘えていた。ずっと網村の誘いを断っていたのを申し訳ないと思っていた。いつも断っていたから、今度は自分から網村を誘うことにした」とのこと。

確かに、子育てで忙しそうだし、バイク仲間とも会うのだろうと思い、彼をだんだん誘わなくなっていたのも事実だった。僕からの誘いを連続で断られたあとで、インスタに趣味の投稿をされると、過去の僕は少し寂しかったが、理解もしていた。

何故なら彼のストレス解消の手段が、大人になってできたバイクという趣味とその仲間と遊ぶことだった。

僕が踏み込めない趣味だったのだ。

彼の求める友達が変わったのかなと思ったこともあったが、結局、連絡をとらなくても、友達は友達だと言う所で落ち着く。

会えばいつもと変わらない、楽しい時間を過ごせることも知っていたから。

話は変わり、女友達は約7年ぶりの再会だった。彼女とは29歳までは、かなりのペースで連絡し、月1ペースで会っていた。

それが29歳の年は、1年近く彼女が僕の誘いを断り続け、最後はドタキャンされたのもあり、言葉通りに受け止めていいのかな?何かしたかな?と疑問がわく。

「最後に会った時に、俺が何か失礼なことをいった?」と問うた事もあった。

誤解だと言われたが、結局、その後すぐに「結婚を考えた彼氏ができて、男の人と会うのはNGになったので、会うのは終わりにしたい」と話があり、モヤっとしつつも「おめでとう」と伝え、ほぼ連絡が途切れる。
 
お互いパートナーを見つけようと励まし合っており、彼女のこれまでの恋愛事情を知るからこそ、せめて最後に対面であってお祝いしたかったし、当時の自分は、「学生時代から続いていた友達なのにあっけないな。俺は用済みか」とぞんざいに扱われた気がした。

その時の寂しさは、なかなかのものだった。

とはいえ、それから7年も立つと連絡しようとは思わないものの、インスタで子供が生まれた写真が上がった際には、素直に祝福の気持ちが湧く。

そんな女友達は僕に会った瞬間に、全力フルスイング謝罪を受けて面食らう。

「あの時、結果的には網村をぞんざいに扱ってしまって申し訳ない。仕事が忙しくなって余裕がなかった。許されるとは思っていない。たくさん失礼なこともした。でもずっと気になっていて、ちゃんと謝りたかった」とのこと。

誰かに最近ここまで丁寧な謝罪を受けた事があったかなというくらいの謝罪である。

二人とも僕にとっては、とっくの昔に整理をつけていた。それくらい前なので、謝罪されながら「友達として大切に思ってくれている」と伝えてくれたことが嬉しかった。

では、29歳当時の僕がどうだったかというと僕は僕で、人に執着していたし、寂しかった。

なので、おあいこだ。

友達が彼氏・彼女ができた、結婚をした、子どもが生まれた等の報告を聞くと、「おめでとう」といいつつも、心の何処かで僕は「取り残された、先を越された、置いていかれた」みたいなことを思っていた。 

29歳の頃は、太って痩せてのリバウンドをしたり、「イエス」か「はい」しかない体育会系の仕事関係者や職場環境自体が自分は合わないと思うこともたくさんあり、でも立場の弱い自分が生きていくには、無理に合わせに行くしかなく、自分を見失い、自信を失っていたからだ。

ストレスの逃がし方もわからなかった。

さらに、29歳で、僕も一人暮らしを遅れながら始め、慣れない環境に誰かと繋がっていたかったが、次のステージへ進んだ友達と、もう学生時代の延長のベタベタした感じの関わり方でいられる状況ではなかったのだ。

そこから年月が経つにたつれて、僕は僕で自分のライフスタイルを確立させ、自分自身や自分と人との関わり方も見つめ直し、再構築していった。

人生のステージが変わった友達と付き合いを続ける為には、僕も変わらないといけなかったのだ。

相手には相手の生活があり、相手の時間がある。

相手を大切に思うからこそ、連絡をしないことも必要だった。

でも時間を作ってくれたときは、その時間を大切に過ごせばよかった。

長い付き合いになる友達と関わるということは、お互いの変化を受け入れて、お互い成長を認めあい、間違いを認めて、許し合う事が必要だった。

ひさしぶりに、再開した友達は二人とも大人になっていた。僕が多少なりとも成長した間に、ちゃんと彼らも成長していた。

今の僕は、前よりマシだが、まだ少し寂しがり屋だ。でも昔ほどそこまで人に執着はない。

一人でも楽しめる趣味がある。

これさえあれば生きていけると思えるものに出会えた。

筋トレとサウナだ。大体のことは筋トレとサウナが解決してくれる。


誰かが次のステージに上がるような報告を聞いても、今の自分なら「おめでとう」と素直に思える。

何故なら、僕には僕の人生のペースがあるのだ。だから、ちゃんと地面に足をつけて踏み出せばいい。

それだけの成長はしたのではないかと思う。

今仲良くしている別の友達も、次のステージに向けてまた動き出そうとしている。

どちらが先に次のステージに上がるかはわからないけど、例え相手が先でも今の僕はちゃんと送り出せると思う。

送り出したら、その空いたスペースに、また何か新しい出会いが生まれるはず。

不思議と縁がある人は、今回謝罪してくれた友達のように、またどこかで繋がる。

前ほど人が離れて行くことが怖くはない。

だからめでたい話の報告は、こう伝えようと思う。

「おめでとう!お先にどうぞ!」


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