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リーフレット 「韓国 徴用工問題Q&A ー徴用工問題ってなんですか?」(日本語版)

Q1.「徴用工」って何ですか?
A. 戦時中、日本は植民地朝鮮から日本国内に約80万人の朝鮮人を募集・官斡旋・徴用などさまざまな形で強制動員し、炭鉱や軍需工場などで働かせました。政府は労務動員計画を立て、企業は官憲の力を利用し、計画的に動員したのです。これを朝鮮人強制動員といいます。「徴用工」とは、強制動員された人びとのことです。『三菱社誌』にも「半島人徴用工12,913」(1945年8月現在員数)と書いてあります。労働現場では、賃金未払い、強制貯金、拘束・監視、酷使・虐待などが横行しました。ILO(国際労働機関)は日本による強制動員を強制労働条約違反と認定し、日本政府に対し被害者救済を勧告しています。安倍元首相は、「旧朝鮮半島出身労働者」問題と言っていますが、それは強制的に動員した歴史をごまかすいい方です。

Q2.韓国の「徴用工」判決って何ですか?
A. 2018年の韓国の大法院(最高裁)の判決は、強制動員を日本の不法な植民地支配や侵略戦争の遂行に直結した日本企業の反人道的不法行為とみなし、強制動員被害に対する慰謝料請求権を認めました(強制動員慰謝料請求権)。日韓請求権協定で解決済み論に対しては、協定は両国の民事的・財政的な債権債務関係を解決するものであり、反人道的不法行為に対する請求権は、日韓請求権協定の適用対象には含まれないと判断しました。
 それにより日本製鉄と三菱重工業に対して強制動員被害者への賠償を命じたのです。

Q3.日本政府は「完全かつ最終的に解決済み」と言っていますが?
A. 請求権協定にはそう書いてあります。日本政府は韓国政府に「経済協力」と引き換えに請求権を放棄させたのです。しかし、消滅したのは国際法上の「外交保護権」です。個人の請求権は、国同士の取り決めで消滅させることはできません。日本政府も「個人の請求権を消滅させたものではない」(1991年8月27日、参議院予算員会、柳井俊二条約局長答弁)、「個人の請求権が消滅したと申し上げるわけではございません」(2018年11月14日、衆議院外務委員会、河野太郎外相答弁)と述べています。小和田恒外務省条約局書記官(1965年当時)も、政策的に消滅させたくても、理論的に「消滅させることがそもそもおかしいものがある」と述べています。不法行為への損害賠償については未解決です。

Q4.韓国に払った5億ドルで賠償は済んだのに、また払えと言うのでしょうか?
A. いいえ賠償は終わっていません。日本政府は、植民地支配を「合法」と主張し、韓国への賠償は拒否していました。日本が韓国に渡した5億ドル(無償3億ドル、有償2億ドル)は「経済協力」で、「賠償」ではありません。しかも10年間に渡って、「日本国の生産物と日本人の役務」が提供されたのであり、現金は支払われていません。使い道も「大韓民国の経済の発展に役立つものでなければならない」という縛りがあり、強制動員の被害者への賠償に当てることはできませんでした。他方、韓国への5億ドル相当の援助は、日本の企業が再び韓国に進出していく契機となり、日本にとっても利益になったのです。

Q5.それでも韓国政府に責任があるのでは?
A. 韓国政府が日韓会談の中で、補償に関わる資金の一括支払いを要求し、(各個人への)支払いはわが政府の手ですると言ったことは事実です。しかし、結局、日本政府は韓国に現金は支払いませんでした。それでも、韓国政府は、1974年には対日民間請求権補償法、2007年には太平洋戦争前後国外強制動員犠牲者等支援法を制定し、強制動員被害者に一定の補償を実施しました。しかしそれは、強制動員という不法行為への賠償ではありません。強制動員を行った日本政府と日本の企業の不法行為の責任は今も果たされていないのです。

Q6.安倍さん、菅さんは「国と国との約束は守られるべきだ」と言いますが?
A. 大切なことは、朝鮮植民地支配の歴史にどう向き合うかということです。1995年の村山総理談話は、日本の植民地支配と侵略が、多大の損害と苦痛を与えたことを認め、深い反省と謝罪を表明しました。1998年には「日韓パートナーシップ宣言」を交わしました。ただ、いまも日本は朝鮮の植民地支配が不法であったことを認めていません。政府、企業が、強制動員被害者に対し、自らが行った不法行為を認め、謝罪したこともありません。いまこそ、植民地支配の不法を認め、強制動員被害者の尊厳回復を図るべきです。それ抜きに「国と国の約束」だけを言っても、互いの距離は縮まらず、信頼もつくれません。

Q7.日韓関係はこじれていますが、本当に解決できるのですか?
A. 企業にはグローバルな規範が求められています。日本製鉄の「企業行動規範」には、法令・規則を遵守し、高い倫理観をもって行動する、各国・地域の法律を遵守し、各種の国際規範、文化、慣習等を尊重して事業を行うとあります。三菱重工業は、国連のグローバル・コンパクトに参加していますが、グローバル・コンパクトには、人権保護の支持と尊重、人権侵害への非加担、強制労働の排除があります。
 新日鉄(当時)は1997年に、釜石製鉄所に動員された韓国人元徴用工遺族が起こした訴訟で原告と和解しました。2012年6月の株主総会では、「(判決が確定すれば)いずれにせよ法律は守らなければならない」(佐久間常務・当時)と述べています。三菱重工も名古屋の朝鮮女子勤労挺身隊被害者との和解に向け、2010年から2年近く協議を重ねました。
 グローバルな規範をふまえ、政治的環境や条件が整えば、企業は判決を受け入れ、話し合いで問題を解決するという意思を持っているのです。必ず解決できます。

Q8.強制労働問題の全体的な解決は可能ですか?
A. 中国人強制連行では、鹿島建設(花岡和解)、西松建設、三菱マテリアルが、強制連行の事実を認め、被害者に謝罪した上で、基金を設立して被害者に補償する方式で和解を進めています。戦時中に強制労働を行ったドイツは、2000年に政府・企業の共同出資で「記憶・責任・未来」基金を設立し、約170万人の被害者に補償しました。これらは、強制動員問題の全体的解決をめざす貴重な経験です。先例に学べば全体的な解決は可能です。
 韓国の強制動員被害者で存命の方は現在では数千人といいます。この方々が生きているうちに問題を全体的に解決する必要があります。そのためには、政府と市民社会が知恵を出しあい、被害者が納得し、受け入れられる解決策を見出していかねばなりません。強制動員被害救済の財団や基金の設立は急務です。


《紙版のリーフレットはホームページよりご注文いただけます》
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