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アルコール消毒は不安な気持ちを拭き取る大事なルーティン


私の働いている薬局では、毎日店内のいたるところをアルコールで消毒します。
 
特に発熱患者さんの対応をした後は、患者さんが触れたペン、紙類、お金、イスなどのすべてをその都度アルコール消毒します。
 
これは、コロナの感染経路として「モノを介した接触感染」もありうる(*1)ことに由来していて、「接触感染はほとんどない」という報告(*2)もある中、今も続いているルーティンです。
 
この3年間そして現在も、来る日も来る日もこのルーティンを繰り返しています。アルコールスプレーで濡れてゴワゴワになった処方箋を見ると、「ここまで消毒しなくてもいいのではないか」と思ってしまうこともあります。
 
そんな中、誰よりも率先して消毒するスタッフA子さんがいます。普段から大人しく黙々と一人で仕事をするタイプの彼女ですが、アルコール消毒の隊長は彼女です。誰かがつい忘れて消毒せずにお金をレジに入れてしまうと、すかさずアルコールスプレーをレジの中のお金に吹きかけます。妥協は一切ありません。
 
ある日そのA子さんと同じ時間にお昼休みを取ったときのこと。
 
彼女は昼食を買いに外出して、コンビニ袋を持って休憩室に戻ってきました。すると、自分のロッカーから徐にマイアルコールスプレーを取り出し、買ってきた商品すべてにアルコールスプレーをして、最後に自分自身にもアルコールスプレーをかけて、それから食事を始めました。
 
その徹底ぶりに私は驚きました。
 
ウイルスは見えないから、彼女が買ってきた商品に、彼女自身に、ウイルスがついているかはわかりません。
 
でも、アルコールスプレーをすることで彼女は不安な気持ちを拭い去り、安心して食事を取ることが出来ているのです。
 
コロナが流行し始めてからの発熱患者さんと接する毎日は、「いつか自分も感染してしまうのではないか」と不安な日々でした。それは、きっと私だけでなく、A子さんもそして他のスタッフも同じだと思います。
 
そんな3年間を無事に乗り越えられたのは、率先して消毒ルーティンをやり続けてくれたA子さんと、ウイルスとともに不安な気持ちも拭き取ってくれたアルコールスプレーのおかげかもしれません。
 
だから、コロナの感染症分類が2類から5類に変わっても、この消毒ルーティンは変わらないと私は思っています。それは、ウイルスを拭き取るためだけでなく、働くスタッフと訪れる患者さんの安心のためだから。


参考資料
(*1)新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染経路について (niid.go.jp)
(*2)COVID-19 rarely spreads through surfaces. So why are we still deep cleaning? (nature.com)

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