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マシーナ・ヴレーメニ(時の船)  川柳140句


Ⅰ.スターリングラード午前零時  三十五句

喪神の餅とくらべる時間石

アイドルに翻訳された鮫の缶

鮫を描く永野護の狂いざま

真夜中の徹子の部屋に阿含宗

死都晴れて実朝の描くペンタゴン

月尽きてイギー・ポップの透かし彫り

とりもちをボードリヤールから辿る

現世のチクタクマンを喚ぶ御苑

小結を二度見すイザヤ・ベンダサン

襲撃のメロディ上のぼんのくぼ

北極を春日神社に見うしなう

句に詠めば仮面の虎に給餌室

一月の江連卓のビル崩れ

織姫に脳いじくられ冬の空

黄道を喩える蟹の味噌のパン

リムスキー=コルサコフとの起請文

世界果てUの世界に古本屋

中国の地下アイドルの長い槍

寒い日の魯迅絶食する夕陽

青梅市の市境超えて核の冬

パーソナル・コンピューターに羊歯を書く

まりや等が子規のスナッフヴィデオ録り

茶渋拭き展覧会の絵を盗む

石庭へ禁忌のパスタ借りにゆく

釘を買う私性川柳書き尽くし

終電に北上次郎その他揺れ

国沈むアンテナショップ撒き残し

夕陽市の豆腐の鍋に古村比呂

意識下の大型犬が視るちんぼ

避寒して芸術祭の二枚貝

貝を飼うものども接すアヴェ・マリア

どら焼を含めて脳の巨大なる

たまご焼くウェルズ放送事故のなか

射的屋に魚類図鑑を読み上げる

折れて居るキング牧師の遠眼鏡


Ⅱ.樺太のP.K .ディック  七十句

県庁に駱駝の居ないヴィデオ観て

妻抱いて背鰭の唄を思い出す

漢語もてウォルト・ディズニー黒く塗れ

敷島に異父兄弟の連句成る

犬小舎に倒幕つづくパンの会

建国記トットの部屋に床が無い

マリリンと主観を換えるボディビル

録画者の詠む川柳に対し詠む

詩の国にストーブ捨てる王者a

欽一の生麦事変終わらざる

酢豆腐を砕いてトニオ・クレエゲル

縁語にてアイアンマンを魏志で釣る

点鬼簿のさかながくさい記号論

鼻濁して章魚怪獣に雪の闇

五輪書ハマコーあまた詰むガスト

新一が適者生存しない酢屋

雪國にユングの城をわかち書く

理解者が任天堂の蕪を抜く

ニコライの再臨までのわさび和え

想像のニコラ・テスラの恵方巻

指紋付く煮カツを入れた金魚鉢

悟性にて則巻博士米を研ぐ

詭弁なりハードパンチャー卵割る

悪と云うべったら漬を湯に溶かす

丸美屋に千葉県民の路上劇

誤色するアルケミストの大漁旗

異星晴れアンヌの日記読み潰す

豚吉とアンドロメダの忌に逢おう

さびしさの糸をつなげるゴルバチョフ

意図にしてプロボウラーのめりけん粉

ラコステの正常劇をみて眠る

母捨ててまりもっこりにみみず腫れ

軽井沢夫人天動説に拠り

豚まんの時計じかけに絵文字打つ

倭の国のアグネス仮面一首詠み

肌に肌融合都市の日脚伸ぶ

鯖缶がいまここに在る殴られ屋

無謬なりソヴィエト・ロック訳すなか

タモリとの火の輪をくぐる暗記パン

節分のドレスコードを書いて消す

武田家にかかわって居る熱湯屋

萩本とインベーダーに寄りかかる

初場所に菅野よう子のレジを打つ

ハツを焼く王貞治を主体にし

童貞の兄に近づくひつじかい

みんな来てハンマー投げる不凍港

職も無く阿部完市の椅子を買う

童貞の兄弟間に実験句

ナナ死んでふとポリゴンの歪みけり

保護室の外にフルーツバスケット

鳥瞰にまざまざと在るたまごやき

ツナの日に命名される詰将棋

棋士脳がとらえつづける馬場猪木

偈が終わる吉野博士を除算して

燃えつきた戸田城聖のウエハース

ぶぶ漬ける大地にイタロ・カルヴィーノ

ワトソンとクリックが成す四日市

子守唄三角形の差を求め

不確定性理論にて滝行す

マシリトの論理階梯のぼりつつ

饅頭が現実界にあらわれず

操車場三島由紀夫が夜に這う

端数時を夜が掴んでいるところ

すばらしい新世界での蚊が遅い

記述するズボンが太い月光市

卵殻が剥かれてゆくよ生者死者

等高のマルベル堂が孤立する

日暮里の日時計狂う劇のなか

谷底に劇場版の釘ひろう

ジャントニオ猪場の居ない注連の外


Ⅲ.デルスウ・ウザーラに孵卵器  三十五句

無題なり湯島天神細描し

美神来て古田敦也の菓子を買う

童貞が信楽焼を買い直す

麒麟児のマゾヒスティック大野点

交霊がドラッグストアにてつづく

時ながれ疲労骨折する茶会

蚕室を塗る家ならぶ新世界

手脚生え鏡の国のわれの醜

臓器買う東欧アンチ・リアリズム

山眠るひたすら螺子をひろいつつ

仲人が加わる冬の盆踊り

神経やロック・オペラに膳はこぶ

水星のタモリの槽に昆布無し

都市を棄て森田童子が凍りつく

雪が降る童夢の団地立ち並び

火酒消える小動物を解剖し

弁髪のサラダを買って居る男女

駅伝の国に駅伝便所建つ

イデア成る鳥羽上皇の鳥の歌

尿こぼれハルマゲドンの或る終わり

長城に孤独のウノの終わらざる

厭な世に煎餅というものを買う

凶暴のコーヒー淹れる冬銀河

母星から逐われる贋のストーンズ

カレリンの大背筋や蛆を飼う

腐食するアンモナイトの無い館

クソコラに拝一刀立ち並ぶ

とち狂え生前葬のふえた島

囲碁と酢に触れざるままの恥多し

B級の戻り川からゲルあふれ

ザブが在るはじめのときも神は無し

メンデルの入れ墨入れるひとり部屋

パロールの髙田延彦毛布焼く

足袋破け鈍器を持ってくるララァ

雛鳥をしめころすとき白い月


#川柳 #詩歌 #エンターテインメント #タイムマシーン  #МашинаВремени

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