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税務調査で質問していますか

国税局の電話相談センターで仕事をしていた頃、確定申告書の時期は1日100件以上の電話を受ける日もあり、出来るだけ短い時間で対応することも求められていましたが、苦情の内容の電話は1時間を超える場合もありました。

お酒を飲んで電話してこられた方、国会中継を見て怒って電話してこられた方、話し方が気に食わないとか、女じゃわからんとか、確認してから話そうとすると、その少しの間でも、わからないのか?と嚙みつくように言われることもありました。

電話を取ったとたんに「謝罪しろ」と言われたこともありました。
それは、国税庁HPやリーフレットを見ても専門用語ばかりでわからないという内容で、専門用語を使わずに説明するのは難しく、苦労したことを覚えています。

電話では、自分が欲しい答えでないとクレイマーのように文句だけ言って切られることもあり、顔の見えない人と接することの難しさを学びました。

今、思うと、電話相談の相談員には色々な感情も含めて電話で、気持ちを伝えることができるのに、調査の時に積極的に質問する経営者の方にお会いしたことはなかったなと。

初めてお会いし、概況などをお聞きする時は色々と答えていただいても、調査終了時に説明する時には、納得していない顔をされていても、何も言われない方が多かったです。

言ってくれればいいのに、納得するまで説明するのにという気持ちがあっても、聞かれないと何もできず、大丈夫かなという思いを残して調査が終わる場合もありました。

反対に、調査に行くと前の調査の苦情から始まることもありました。
経営者が何年もモヤモヤした気持ち抱えていたこと知ることで、こんな調査をしないようにしようという気持ちにもなりました。

そして、国税不服審判所で仕事をしたことで、調査官の言動も含めて調査の内容に不満だったと主張する納税者が沢山いることを知りました。

実際に、不服審判所の事案で、厳しい言葉を使っていた知り合いに「脅された」とか「侮辱された」と主張されてきたのを見て「さもありなん」と思ったこともありました。

調査担当者は脅していなかったと主張しても、経営者がそう受けとめたことを重視すべきで、改善する必要はないのか、と思うこともありました。

しかしながら、私が知るかぎり、審判所でも判例でも、調査担当者の言動が理由で、課税処分を取り消されることはなかったのです。

税理士となり、相談に来られた経営者が税務調査でいくらもっていかれた、と怒りの感情をぶつけられたことがあります。
その経営者の方に調査で指摘された事項からアドバイスができることがあればと、内容を聞いてみても、その理由を知らないことに驚きました。

記憶にあるのは、お金をとられたことだけ。どす黒い感情を吐き出したかっただけなのかもしれませんが、この感情をずっと持っていくのは辛いだろうなと思いました。

税務調査は定期的に実施されるわけでもなく、どんなことを調べているのかを見ているわけでもなく、急に何年も前の話をされてもすぐに思い出せない、それを調査担当者に責められるような気持ちで受け止めてしまうのは仕方がないことかもしれません。

知らないこと、不慣れなことへの不安が、国家権力に対する恐れに繋がるのかもしれません。

国税通則法で質問検査権が規定されています。

調査担当者は、納税義務者だけでなく、調査のために必要がある場合には、代理人、使用人その他の従業者にも質問できます。
取引先にも反面調査である旨を取引先等に明示した上で質問することができます。

これは、正しいかの確認作業だとも言い換えることができますが、税務調査を知らない、不慣れな経営者にとっては、痛くもない腹をさぐられる、と感じる場合もあるでしょう。

ところで、国税庁は「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」を公表していますが、その中の「調査終了の際の手続」には、経営者に質問ができることが書かれているのをご存じですか?

引用すると
「調査の結果、更正決定等をすべきと認められる非違がある場合には、法第74条の11第2項に基づき、納税義務者に対し、当該非違の内容等(税目、課税期間、更正決定等をすべきと認める金額、その理由等)について原則として口頭により説明する。
 その際には、必要に応じ、非違の項目や金額を整理した資料など参考となる資料を示すなどして、納税義務者の理解が得られるよう十分な説明を行うとともに、納税義務者から質問等があった場合には分かりやすく回答するよう努める。」とあります。

つまり、経営者は、調査担当者に質問していいんです。
そして、その質問には分かりやすく回答するように、とあるので、私の場合は、経営者の気持ちを意見書として提出し、それに対する回答をいただくこともあります。

もちろん、納得いかないのであれば、修正申告書を提出しない選択もあります。

修正申告書は、経営者の意思に基づくものです。
先ほどの事務運営指針にも「修正申告書等を提出した場合には不服申立てをすることはできないことを確実に説明し、その内容が書かれた書面を交付するように」と書かれています。

したがって、修正申告書が無効だという主張は裁判でも認められません。

納得しないままに修正申告書を出してしまった結果、納税資金で資金繰りが苦しくなり、その辛さや恨みをずっと抱えている経営者の方とお会いすると、その感情を手放せるお手伝いができないかと思うようになりました。

経営者から調査に対する不安をなくす仕事、それは調査担当者や国税不服審判所の仕事をしたからこそできることであり、納税者の考えや気持ちを伝える大切な仕事だと思っています。

調査官の前だと緊張して喋れないと言う経営者の方もいます。
何を話していいのか、何を質問していいのか、頭が真っ白になってしまう、
はやく終わることだけを考えていたと言われる方もいます。

知らないことに対する不安やお金を取られることへの不安を減らしたい、経営者の考えや気持ちを代弁してくれる人に調査の立ち合いをして欲しい、そんな声に応えていきたいと思っています。

ご興味がある方は、HPをご覧ください。
https://kimiyazakitax.com/

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