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認められない理由 使途不明金

こんにちは

セカンドオピニオン税理士の宮崎貴美子です。

今日は、商品券の使途が明らかではなく業務との関連性も不明であるからその購入費用は損金の額に算入されないとされた裁判事例、東京高裁平成27年10月15日判決(税務訴訟資料 第265号-158(順号12741、第一審は水戸地裁平成27年1月29日判決(税務訴訟資料 第265号-14(順号12597))、を紹介します。

抽選会の商品として不特定多数の来場者に配布することで、来場者の商品を購買する意欲を高める効果が見込まれるので販売促進費に該当するとし、交際費で処理していたのになぜ認められなかったのでしょうか。

法人の業務の遂行上必要と認められるのは明らかなのに、商品券の購入代金は経費として認められないなんてどういうこと?と思われた方もいるかもしれません。

よいと思って行った行為が、税務調査で「認められません」と言われたら本税だけではなく、加算税、延滞税を追徴されることになります。

国税のルールを知っていれば否認されないのに「認められません」の理由を知っていれば対策ができたのにと、口にされる経営者の方を沢山みてきました。

法律は知っている人の味方です。
ですが、租税法はわかりにくいし、勉強しなくても経営はできます。

そのため、認められなかった理由に納得いかないまま調査が終わり、不信感だけが残った話もよく聞きます。

同じような納得いかない理由で、裁判されたものがあります。

その判決文の中の「裁判所の判断」に書かれている内容から、認められない理由に答えていきたいと思います。

接待交際費勘定に計上している本件商品券各購入費用は
平成19年4月期が200万円
平成20年4月期が200万円
平成22年4月期が300万円

調査官は、商品券の配布先、配布金額、保管状況等について確認したところ、会長から、取引先の担当者に配ったが、相手先は迷惑がかかるだろうから教えられない、断じて私用に流用はしていないと説明され、配布先は明らかにされませんでした。

その後、会長から商品券の配布先のリストが提出されましたが、リストの記載内容について
現場名が記載されたものは、現場の関係者に配ったもの
イベント名が記載されたものは、顧客やメーカーの人に配ったもの
だと説明がされました。

調査官は、リストや会長の供述等からは
個々の配布先、配布金額等を明らかにされないので使途が不明なので
商品券の購入代金は経費として認められないと、更正処分をしたのです。

この判決のポイントは
まず、納税者が
使途不明金を損金の額に算入しないとする法人税法上の規定はないにもかかわらず損金算入を否定して課税することは憲法84条に反すると主張したことです。

これに対して、
法人税法22条1項は、内国法人の各事業年度の所得金額は、当該事業年度の益金の額から損金の額を控除した金額とする旨規定し、同条3項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、当該事業年度の収益に係る売上原価等並びに当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用及び損失の額とする旨規定している。上記各規定に照らせば、内国法人の所得金額の計算上、損金の額に算入することができる支出は、当該法人の業務の遂行上必要と認められるものでなければならないというべきであり、支出のうち、使途の確認ができず、業務との関連性の有無が明らかではないものについては、使途不明金として損金の額に算入することができないと解すべきである、と法令解釈をしました。

その結果、納税者の主張は独自の見解であり採用できないとしています。

このように、法人税法上の規定はないものについては、法令解釈により判断されることになります。

なお、法人税基本通達9-7-20により「法人が交際費、機密費、接待費等の名義をもって支出した金銭でその費途が明らかでないものは、損金の額に算入しない。」と定められていますが、通達は法律でないので、法的拘束力はありません。しかしながらが、法令の解釈や運用方針を示したものなので参考にすべきです。

次に、「帳簿書類の記載自体を否認するものではない」という言い方は独特なものです。

「総勘定元帳に記載された本件商品券各購入費用が架空であるなどとして同費用が前提とする事実を否認するものではなく、商品券を総勘定元帳記載の購入先から、同記載の購入時期に、同記載の購入金額で購入した事実を前提とした上で、商品券の具体的な使途を確認することができないことから、使途不明金に当たるとし、損金算入を否認したものである」と判決文にありますが、

買ってないのを買ったようにして経費に計上した場合は「架空」であり、「ない」ものを「ある」ように帳簿に記載した場合は記帳事態を否認することになります。

では、なにをもって認められないと判断したかというと、判決文には
会長らの供述は具体性を欠くものである
リストの記載内容を信用することはできない

他の証拠によっても本件商品券の具体的な配布先、配布時期、配布金額等は明らかとされていない以上、本件商品券の使途は不明といわざるを得ないと書かれています。

つまり、
商品券各購入費用と業務との関連性を合理的に推認させるに足りる具体的な事実についての主張や立証ができないのであれば、使途は不明であり、業務との関連性を認められないと判断されても仕方がないことです。

使途を明らかにすることとは、
交際費等の損金不算入制度から除外される「1人当たり5,000円以下の飲食費」を例にとって説明すると

除外する場合の要件として、以下に掲げる事項を記載した書類を保存していることが必要とされています。
イ その飲食等のあった年月日
ロ その飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
ハ その飲食等に参加した者の数
ニ その費用の金額並びにその飲食店、料理店等の名称及びその所在
ホ その他参考となるべき

この要件を満たして初めて、使途が明らかにされ、「1人当たり5,000円以下の飲食費」に該当するといえます。

イベントにおいて、商品券を、来場者や関係者に配布したり、抽選会の商品として使用したりすることがダメだといっているわけではなく、商品券を渡した相手は誰で、いつ、いくら渡したのかを明確にできれば、経費として損金算入が認められ、できないのであれば、業務との関連性の有無が明らかでないので使途不明金として、損金算入が認められないことになります。

また、商品券の支給については金銭による支給と異ならないとし、給与等として課税の対象となる場合もありますので、ご注意ください。(国税庁HP、質疑応答事例「創業50周年を記念して従業員に支給した商品券https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/42.htm」)

法人の業務の遂行上必要だと主張しても、全てが認められるわけではなく、調査担当者の「認められません」に疑問が生じ、声を大きくする人を沢山みてきました。

知らない法律、知らない国税のルールにより
良かれと思っていたことが否認されると、加算税や延滞税を含めた追徴税額を払うことになります。

大切なお金を無駄に払わなくてもよい状態にすることが望ましいことです。今の状態を検査してみませんか。

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