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認められない理由 売掛債権の貸倒損失の計上時期

こんにちは

セカンドオピニオン税理士の
宮崎貴美子です。

法律を知らないことで損をすることがあります。

特に税金については、学ぶ機会がない人も多く
税務調査で「認められない」と言われ、
納得いかないまま高い追徴税額を支払い

ますます税に対する不信感を募らせている経営者の方がいます。そんな思いを少しでも減らせたらいいなと思っています。

今回は売掛債権が回収できなくなった場合
いつ落とすことができるのかについてお話しします。

貸倒損失については、法人税法の法令に明文化された規定はなく、法人税基本通達に当てはめ、いつ損金の額に算入されるかの判断をすべきものです。

利益が出た事業年度に売掛債権の貸倒損失を計上し、認められなかった場合等もあり、調査官は、必ず調査において確認する事項です。

調査官が「認められません」という事実を把握した場合は
本税だけではなく、加算税、延滞税を追徴されることになりますのでご注意
ください。


貸倒損失については、

「債権者が債権回収のため真摯な努力を払ったにもかかわらず客観的に見て回収見込みのないことが確実となったことを要し、単なる債務者の所在不明、事業閉鎖、刑の執行等の外的事実のみでは、これを直ちに貸倒れと認めることはできない(昭和49年9月24日東京地裁判決 )。」

という考え方がベースにあります。

そのため、貸倒損失の存在と金額については、納税者が立証すべきだとした判決があります。

「貸倒損失は、通常の事業活動によって、必然的に発生する必要経費とは異なり、事業者が取引の相手方の資産状況について十分に注意を払う等合理的な経済活動を遂行している限り、必然的に発生するものではなく、取引の相手方の破産等の特別の事情がない限り生ずることのない、いわば特別の経費というべき性質のものである上、貸倒損失の不存在という消極的事実の立証には相当の困難を伴うものである反面、被課税者においては、貸倒損失の内容を熟知し、これに関する証拠も被課税者が保持しているのが一般的であるから、被課税者において貸倒損失となる債権の発生原因、内容、帰属及び回収不能の事実等について具体的に特定して主張し、貸倒損失の存在をある程度合理的に推認させるに足りる立証を行わない限り、事実上その不存在が推定されるものと解するのが相当である(仙台地裁平成6年8月29日判決)。」

しかしながら、実際には法的に債権が消滅していない場合もあり
「債務者の資産状況、支払能力等からその全額が回収できないことが明らかになった」かは、何をもってその事実とするかの判断に迷うところです。


法人税基本通達逐条解説の解説覧から抜粋すると、次のように明記されています。

・担保物があるときはその処分後

・保証人がある場合には保証人から回収できないとき

・債務者について破産、強制和議、強制執行、整理、死亡、行方不明、債務超過、天災事故、経済事情の急変等の事実が発生したため回収の見込みがない場合のほか、債務者についてこれらの事実が生じていない場合であっても、その資産状況等のいかんによっては、これに該当するものとして取り扱うことができる

・債務者の資産状況、支払能力等の債務者側の事情のみならず、債権回収に必要な労力、債権額と取立費用との比較衡量、債権回収を強行することによって生ずる他の債権者とのあつれきなどによる経営的損失等といった債権者側の事情、経済的環境等も踏まえ、社会通念に従って総合的に判断されるべきものである場合(最高裁判 平成16年12月24日)

通達に当てはめようとしても、どこまで確認すべきか悩むところです。

実際は、調査担当者が反面調査を実施し取引先の債務超過、資産状況、支払い能力などを確認するようにはいかないでしょう。

なので、貸倒損失の立証責任は納税者か国税かという議論になるほどです。


また、貸倒損失は、法人税法第22条第3項第3号により、回収不能が明らかになった事業年度において計上するもので

それ以外の事業年度において損金算入をし、利益操作に利用するような処理は認められません。

取引先との関係だったり
経営状態から売掛債権の回収を放棄できないと判断をせざるを得ない状況の時もあります。

債権が回収不能になるだけでも痛手であるのに
経理処理の誤りだと是正を求められ、調査担当者が示した事業年度に損失の額が認められればいいのですが、救済ができない場合もあります。

「認められる場合」を知ることは大切なことです。

法律は知っている人の味方です。

大丈夫かな?の疑問にお答えするのがセカンドオピニオン税理士の役目です。是非、ご活用ください。

今回の関係法令は次のとおりです。参考にしてください。

法人税法第22条《各事業年度の所得の金額の計算》第3項第3号は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額として、「当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの」と規定し、また、同条第4項は、同条第3項第3号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする旨規定しています。

法人税基本通達

9-6-1《金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ》は、法人の有する金銭債権について次に掲げる事実が発生した場合には、その金銭債権の額のうち次に掲げる金額は、その事実が発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入する旨定めています。

(1)会社更生法の規定による更生計画の認可の決定があった場合において、その決定により切り捨てられることとなった部分の金額

(2)商法の規定による特別清算に係る協定の認可若しくは整理計画の決定又は和議法の規定による和議(強制和議を含む。)の決定があった場合において、これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額

(3)法令の規定による整理手続によらないで関係者の協議決定で次に掲げるものにより切り捨てられることとなった部分の金額

イ 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの

ロ 行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容がイに準ずるもの

(4)債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額


法人税基本通達9-6-2《回収不能の金銭債権の貸倒れ》は、法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。この場合において、当該貸金等について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできないものとする旨定めています。


法人税基本通達9-6-3《一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ》は、債務者について次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対して有する売掛債権について法人が当該債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理したときは、これを認める旨定めています。

(1)債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該停止をした時以後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上経過した場合(当該売掛債権について担保物のある場合を除く。)

(2)法人が同一地域の債務者について有する当該売掛債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、当該債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないとき


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