unknown voice 〜韓国インディーミュージックシーンで見つけた美しい歌声

先日の Stella Jang との出会いも冷めぬうちにまた新たにとても素晴らしいアーティストに出会った。
女性シンガーソングライターには目がないのでとても感動している。

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(画像 : http://www.msbsound.com/artist/kim-su-young )

Kim Suyoung (김수영 キム・スヨン)

日本語での情報がほぼ皆無の状態で詳しいプロフィールがわからないが、彼女が所属しているレーベル MAGIC STRAWBERRY SOUND と彼女の Facebook に簡単な紹介があった。
その紹介文によると彼女は 1996年生まれで、서울예술대학교 Seoul Institute of the Arts(ソウル芸術大学)を 2018年に卒業したと書いてある。お気に入りの音楽の項目に Taylor Swift の名前があるのは彼女の音楽スタイルとあまり結びつかず意外な気がした。

ちなみに彼女が所属しているレーベル MAGIC STRAWBERRY SOUND には、日本でも一部の界隈にはよく知られている SE SO NEON や BYE BYE BADMAN、CHEEZE といったアーティストが所属している。

MAGIC STRAWBERRY SOUND

私が初めて彼女の歌を聴いたのは、YouTube の関連動画で何気なしにクリックして聴いた、변진섭 (ピョン・ジンソプ) "그대 내게 다시" と、TOY (유희열 ユ・ヒヨル) "내가 너의 곁에 잠시 살았다는 걸"のカバーだった。
アコースティックギター1本で淡々と歌う彼女の声を聴いて一瞬で虜になった (YouTubeリンク)。
調べてみるとこのカバー曲は韓国では屈指の名曲とされているらしく、韓国のバラード曲も大好きな私にとってこれらの曲を知れたことも嬉しい出会いであった。
彼女の音楽に関しては最後にまとめようと思う。

まずこのライブ映像を紹介したい。
とあるカフェでのライブをファンの方がフルで収めたもの (韓国には FANCAM という文化があり、こういったライブ映像がグレイゾーンでオンライン上にたくさんアップされていて、ある意味そのおかげ?でこうして私たちも異国のアーティストを知るきっかけのひとつになっている)。彼女はMCでお客さんとたくさんコミュニケーションをとっていて、それもそのまま撮っているので動画の長さが1時間以上ある。こういった長尺の動画は普通なら飛ばし飛ばし見たりするものだが、私は韓国語を覚えたいという気持ちもあるので、会話もすべて耳に入れながら見ていたら歌があまりにも素晴らしいので最後まで通して見てしまった(2分ぐらい経過したところから始まります)。

via YouTube @RoyalMilkTea (https://youtu.be/QDVZWFG0coQ)

リリースされている音源を聴くとドラムやベース、キーボードの伴奏でアレンジされていて、おそらく彼女自身がひとりですべての楽器を演奏している曲もあると思われる。ただ、上で紹介したライブのように他の楽器の音が無い弾き語りスタイルで聴くとより彼女の持っている素質があらわになって、その魅力がまっすぐに伝わってくる。

YouTubeでは様々なカバーソングを聴くことができるのでその中からいくつか紹介したい。

まず彼女の音楽スタイルの要素のひとつとして近いところにあるのではないかと思う、ボサノヴァの巨匠 Antônio Carlos Jobim の名曲 "Samba de Uma Nota Só" (One Note Samba)。
キャプションには Ella Fitzgerald の名前があるが、特に歌でスキャットなどをしておらずシンプルな弾き語りになっている。

Bobby Hebb の超名曲 "Sunny"
パーカッション奏者も交え、自身でベースも弾いていますがとにかく歌い回しのかっこよさに痺れる。


少し話が逸れるが、彼女の歌を聴いた時に思い出した日本人のシンガーがいる。
2000年頃にギタリストの石井マサユキさんと2人組でデビューした、TICA というユニットで歌っていた武田カオリさん (プロフィール)。
2人に共通して感じるのは憂いのある声のトーン。本当に美しい。


(韓国人なら) 誰しもが知っている IU の代表曲のひとつ "좋은 날" (Good Day) のカバー。

続いて、様々なアーティストにカバーされることが多い2曲。

Sting "Englishman in New York"

Stevie Wonder "Isn't She Lovely"
ここではベースギターと自身の声の多重録音という独特のスタイルでカバーしていてとてもおもしろい。

ここで紹介した他にもジャズのスタンダードナンバーのカバーは特にたくさんやっているので気になった方は検索してみてください。

最後に、エレクトリックギターデュオで聴かせる自作曲2曲。ギターの響きも美しく、その音に絡む彼女の歌のコンディションが最高で鳥肌もの。


日本のミュージシャンでは TICA の武田カオリさんの歌を挙げさせていただいたが、他にも今は活動終了してしまった sakana というこちらも男女2人組ユニットのシンガー pocopen さんの歌を思い出したりもした。新しいアーティストでいえば、mei ehara さんの音楽にも同じムードを感じたりする。

彼女たちの音楽に共通するフィーリング、静かに淡々と佇む音の中に感じ取ることができる穏やかさ、そしてどこか憂いのある美しさとでも言おうか...そんな音楽の響きにとても惹かれる。

彼女のような声は大衆音楽の世界で大勢の人々を魅了するようなタイプではないけれど、音楽界にはずっと存在しているべき音を奏で鳴らしていてほしい。

Stella Jang に続いて、まだ多くの人々に知られていない韓国インディーミュージックシーンに潜んでいる素晴らしい才能を持ったアーティストたちとの出会いに今日も胸をときめかせ続けている。


Kim Suyoung
YouTubeチャンネル

2020.4.24


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