エマニュエル・トッドの家族構造

トッドは親子関係を自由主義と権威主義に分け、そして兄弟関係を平等主義と不平等主義に分けることで、家族構造を4分類し、さらにその他3分類を加えて、7つに分類している

絶対核家族
子供は親元を離れ、独立した世帯を持つが、遺産相続は親の遺言で決定される。親子関係は自由主義的で、兄弟関係は不平等主義的となる。こうした形態はアメリカやイギリスといったアングロサクソン特有のものである。近代のイノベーションは核家族社会で起こった

平等主義核家族
絶対核家族と同様に、子供は親元を離れた後、独立した世帯を持つが、遺産相続は兄弟間で平等に行われる。親子関係は自由主義的で、兄弟関係は平等主義的となる。フランス北部、パリ盆地、スペイン、イタリア南部などでみられる。トッドはフランス革命とそれを推進したパリ盆地の農民の家族制度との関連を指摘する

権威主義的家族(直系家族)
子どものうち一人(通常は男子長子)が跡取りとなり、全ての遺産を相続する。親子関係は権威主義的であり、兄弟関係は不平等主義的となる。こうした形態は日本、ドイツ、フランス南西部、スウェーデン、ノルウェー、韓国などでみられる

外婚制共同体家族
男子全員が親と同居し、家族が一つの巨大な共同体となる。資産相続は兄弟間で平等に行われ、いとこ婚を認めない共同体家族。中国、ロシア、北インド、フィンランド、ブルガリア、イタリア中部のトスカーナ地方などでみられる。トッドはこうした価値観がこれらの地域で共産主義を支えていると指摘する

内婚性共同体家族
外婚制共同体家族と同様に、男子全員が親と同居し、家族が一つの巨大な共同体となる。資産相続は兄弟間で平等に行われる共同体家族だが、いとこ婚を奨励する。アラブ地域、トルコ、イランなどでみられ、いとこ婚を許容するイスラム教教義によって展開される

非対称共同体家族
母系的内婚が優先され、父系での内婚が禁じられる。インド南部でみられる。絶対的な差異という価値観が共有され、それがカースト制の土台となっている

アノミー的家族
親子関係と兄弟関係が共に不安定なため、共同体主義と個人主義の狭間で生きる。ビルマ、タイ、カンボジア、ラオス、マレーシア、フィリピンなどの東南アジア諸地域、及びインディオでみられる


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