どこかで元気でいてくれたら

[1]写真
 家で探し物をしていると9年前の写真が出てきた。18歳から25歳まで七年間働いていた難波のお好み焼き屋が閉店する日に、従業員全員で撮った写真だった。
 最後の一年間、かなり早い段階からお好み焼き屋はテナントから撤退することが決まっていたので、閉店までの半年間はオーナーが自暴自棄になったとかならないとか、何故か系列で売上が一番あるお店なのに、バイトのまま僕が店長になっていました。
 ちょうど僕も大学院は出たもののうだうだしていて、重い腰を上げて就職活動を始めながらフリーターをしていた時期なので時間だけはありました。
 写真にはあの時一緒に働いていた人達が笑顔で写っていました。あれから9年、みんなどうしているのかな。そうそう、この写真を撮った後、深夜まで飲んでベロベロになって、数人で閉店した店に戻って朝まで寝たんだったな、とか色々思い出していた。
 けれど僕はもう、この写真に写っている人の誰一人として連絡先を知らない。なのでもう、誰にも会うことは出来ない。街で見かけたら分かるかもしれない。でも声をかけないような気がする。それでいいと思う。

[2]関係性
 今関係がある大好きな人たちも、場所や時間が変わればきっと、疎遠になる。それを善しとするかどうかは自分次第だけれど、人間はその時々によって都合よく寄り添ったり助け合ったり罵り合ったりするものだから、これからも都合よく生きていくんだと思う。
 僕が仕事を辞めれば平日会い続けている仕事関係の人はほとんど疎遠になるし、バンドを辞めればバンド関係で繋がった人たちとも疎遠になるだろう。けれど、仮にそういったコミュニティを抜けても尚、関係性が変わろうとも友達だろうなと思う人はほんの数人いる。
 そういった、周りがどう変わろうが変わらぬ関係が続くであろう人を、大切にしていきたい。時間を超えて仲の良い友達は少ないし、必ずそういう友達は幸せでいるように力を尽くしたいなと考えている。先ほどのバイト先の写真の中には、そういう関係になった人はいなかったけれど、どの人も決して悪いという訳ではない。むしろ素敵な人ばかりだった。どこかで元気で過ごしてくれたら、それで良い。

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