丁寧に比べ合わない

[1]還愚
 「還愚」という言葉を街で見かけた。どうやら仏教用語らしいけれど、「愚かに還る」とは何だろう?と引っかかってしまった。
 何やら調べてみると「自分自身の心に素直になること、良い部分も悪い部分も認めること」という言葉だそう。同時に、地位や身分などから解き放たれて、自分を見つめること、という意味もあるそうだ。
 「裸になれば社会的身分なんて関係ねぇ!!まずは人間じゃん!!!」って感じだろうけど、まさにそうで、最近そういった身分の背比べで生きる人たちに疲れていた僕に、うっかり刺さってしまったんだと思う。
 同時にありのままの自分を認めれば、自ずと先が見えてくるらしい。宗教も哲学も密接に結びついている。所詮考えの出所は人間なのだから。

[2]地位や身分
 長くバンドをやっていると、本当に沢山の人と関わる機会がある。沢山の人と関わっていても、結局関係が続く人は一握りで、特に大人になってから仲良くなる人は、お互い生きてきた価値観だってある程度決まっているものだから、本当に貴重だ。
 一方で、僕が仕事に馴染めない理由は「価値観が合わない」という一点に収斂する。自分自身に素直に生きようとすると、会社や社会で大切とされている地位や見栄や身分の考えがどうしても、どう転んだって合わない。
 身分に価値観を見出していない僕がいつまで経っても馴染めないのは当然だった。
 恐らくこの春は、バンドでは身分なんか関係のない人間関係を謳歌して、会社ではうっかり求めてもいない地位がほんの少し上がってしまったせいで、見栄の背比べに巻き込まれる板挟みがしばらく続きそうだ。
 どんな場所でも、「地位や身分なんて関係ねぇ!!!人間じゃん!!!」という姿勢を保てるか試されてる気がする。そうすればもう少し良い文章も書ける気がする。もっと良いライブもできる気がする。表現の出所は人生だから、もう少し苦労してもいいのかもしれない。

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