嘘と顔

[1]顔
 顔はよく変わる。加齢でなく経験によって変わる。自分自身ですら顔が変わり続けている。美や醜の観点ではなく、良い顔だなーと思うときもあれば、ちょっと行き詰まってるなーとか、怠惰だなーとか、嘘っぽいなー、という顔の時もある。
 週一回くらいの頻度で会っているバンドのメンバーですら、顔が変わりまくっている。ちょっとソリが合わないなーという時もあれば、子犬のように可愛い時もある。
 ただよく顔が変わると言っても、根本的な性格の部分は30歳を過ぎてからしっかりと顔に出るようになったなと思う。20代の頃は本当に無理をしていたり、人に迷惑をかけていたりしたけれど、それなりに破茶滅茶な人生を歩ませてもらって良かった。
 他人の顔もよく見るようになり、凄く惹かれる人もいればそうでもない人も居ることに気がついた。きっとそれは表情や仕草も含めて、美醜の観点を超えて惹かれる人は本当に大切にしないといけないというメッセージというか、見分けるスキルみたいなものが身についてしまったんだろうと思っている。惹かれる人はきっと、進行形で良い人生を歩んでいる人だから。

[2]嘘
 20代のある時からスパッと辞めましたが、僕は「場を切り抜ける」ために嘘をつくことがあった。それは見栄のためではなく、健やかに過ごすために「はったり」をかます意味合いで嘘をついていた。
 ブラック企業にいた時は自分を守るために嘘もついていたし、そうしないと自分を保てなかった。先日その頃の証明写真が出てきたが、本当に「嘘くさい顔」だった。信用されたがっていたのに、こんな顔じゃ信用なんて得れるわけがなかった。
 「はったり」を辞めたのは、20代後半に入ってからだった。それは大きな挫折の経験だったり、嘘をついていない人がとても魅力的に見えたり、後ろめたいことがない人生を送りたいと考えだして、自分と向き合う時間ができ始めてからだった。
 相変わらずお金は無かったけれど、嘘をつく必要がなくなったり、後ろめたいことがない人生は、本当に胸につかえるものがないというか、視界が開けるような感覚になったのを今でも覚えている。
 少し考えが変わるだけで、人間はあっという間に後ろめたい人生になってしまうし、そういう顔になってしまう。気をつけないといけない。

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