焦燥と逆算

[1]死なないと思っている
 仕事をしていると、自分は死なないと思ってしまう。当たり前のように、明日はこの書類をやらないといけないとか、納期が近いとか、そんなことばかり考えて、まるで自分は明日も生きているのが当然のように考えてしまう。
 年末年始のように一気に休みが降ってくると、そういった差し迫ったものが一時的になくなる分、途端に自分はそのうち死ぬという現実と向き合ってばかりになってしまう。
 今の健康状態から逆算して、事故に遭わない限りはとりあえず今年は生きているだろうと仮定して、では何をするかと考えて一年の計画を立てている。自分のやりたいことを実行しようと思うとどう考えても時間が足りない。しかし時間を確保しようと思うと、次はお金が足りなくなってしまう。世の中の仕組みというのは、やっぱりちょっとだけ不公平だ。年始から世の中に少し悪態をついて、街に出た。

[2]律する
 年始の繁華街を歩いていると、焦燥感に恐ろしいほど駆られてしまう。様々な人とすれ違いながら、みんな生きる意味はどこにあるんだろう、家族って何だろう、みんな不可逆な時間に後悔はないだろうか、そういった諸々の疑問が立ち現れてしまう。
 そういった不安に近い疑問に対して言い訳をするのに慣れてしまうと、屁理屈を捏ね回し、やりたいことを疲れるからといって先延ばしにして人生を過ごしてしまう人になってしまう。そうなったらもう、人生が楽しくなくなってしまう。その場しのぎを繰り返して、気がついたら言い訳と後悔以外何もできない人になってしまう。
 年始の柔らかいムードの街中を歩きに歩いて、沢山の人とすれ違い、想像しながら、ずっと、自分を律していた。とりあえず、自分は死なないと思わないようにしよう。そうしないと、だらける自分を正当化してしまうだろうから。

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